舞台あいさつをおこなった三溝浩二さん、森本のぶさん、おのさなえさん、梅田誠弘さん、松浦慎一郎さん、遠藤祐美さん、瀧マキさん、下垣まみさん、春本雄二郎監督(左より)
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フランス・ヴズール国際アジア映画祭で三冠を獲得するなど国内外の映画祭で高い評価を受けている人間ドラマ『かぞくへ』が2月24日に渋谷ユーロスペースで初日を迎え、主演の松浦慎一郎さんはじめ出演者と春本雄二郎監督が舞台あいさつをおこないました。
フリーの演出部として活躍してきた春本雄二郎監督の初監督作となる『かぞくへ』は、施設で育ち肉親のいないボクシングトレーナーの青年・旭(あさひ)が主人公。同じ施設出身の親友・洋人を詐欺事件に巻き込んでしまったことによる旭の苦悩や、事件をきっかけに変化していく旭と婚約者・佳織との関係などが、骨太なタッチで描かれていきます。
『かぞくへ』のストーリーは、旭を演じた松浦慎一郎さんの実体験がもとになっており、松浦さんは「東京に出てきて、騙されたり、借金を背負ったり、いろいろありましたが、それが映画になってこうやって多くの人々に観ていただけるのであれば“よかったな“とそこ(舞台あいさつの待機場所)で思っていました」と、立ち見もでる満席での公開初日を迎えた心境を語りました。
旭の親友・洋人役の梅田誠弘さんは「ぼくはこの作品を脚本で読んだときから映画館で上映されたらいいなとずっと思っていました。それがこんな素晴らしいかたちで実現したことをとてもうれしく思います」と、旭の婚約者・佳織を演じた遠藤祐美さんは「私は春本監督とはけっこう長い付き合いなんですが、一緒に作った作品がこのようにたくさんの方に観ていただけるようになるとは思っていませんでした、出会ったころは。なので、ほんとによかったなと思っています」と、それぞれあいさつ。
春本監督は「この作品は、ぼくと松浦さんから“名刺代わりになる作品が作れれば”と思ってなにもないところから始まって、いまこれだけのお客さんが観に来てくださって、しかも北海道だったり、神戸だったり、名古屋だったりとか、全国のいろいろなところから駆けつけてくださって、応援していただいてこの日を迎えられたことを本当に感謝しております。このタイトルどおり、大きな“かぞく”をみなさんとともに作ることができたらなと思っております。映画館で一緒に、この登場人物たちと同じ気持ちを共有して帰っていただければと思います」と、感謝とともにメッセージを伝えました。
春本監督のコメントにもあったように『かぞくへ』は春本監督と松浦さんの出会いがきっかけで生まれた作品。舞台あいさつでのトークでは、松浦さんも春本監督もミヒャエル・ハネケ監督が好きという共通点があり、「ぼくの周りにハネケ監督の話をできる方がいなくて」という松浦さんが、以前より春本監督と知り合いで『かぞくへ』に出演もしている女優のおのさなえさんの紹介でSNSで春本監督と連絡を取り「3時間くらい、新宿の喫茶店で映画の話を、この顔の男同士が(笑)」(春本監督)、「シュークリーム食べながら(笑)」(松浦さん)という出会いのエピソードも明かされました。
また、旭と洋人を騙す男・喜多を演じた森本のぶさんは、映画を観たあとで実際に森本さんに会うことになった方が「ぼく、騙されませんか?」と心配していたという話を紹介し「騙したりしませんので、詐欺師“役”としてご覧いただければと思います(笑)」と、似合っていたらしい役についてコメント。
佳織の母親を演じた瀧マキさんは、自身の役について「不器用な愛し方しかできない母なんですけど、というか(登場人物)全員、不器用なんですけども、そんな人間たちに共感していただけたら嬉しく思います」と述べました。
春本監督は「普通の商業映画と違いまして、多くのお客さまに届けるためにどう広めていけばいいのかというのを、みんなで考えて苦心してここまで来たので、映画を観ていただいてみなさんの心に響いたときは、ぜひご自身の言葉でこの映画の感想を述べていただければありがたいかなと思います。願わくばこの映画を全国のいろいろな映画館で、地方で公開を待ち望んでいるみなさんにお届けできればいいなと思っております」と応援を呼びかけるとともに「この映画は、タイトルどおり、直系家族制度が崩壊したいまの日本の中で“家族”という漢字がふさわしくない新たな転換点に立っているとぼくは思っていて、この映画を観終わったあとに、ご自身の“かぞく観”というのをいま一度、大切な人と考えていただけるようになればと思っております」と、作品に込めた想いを述べて舞台あいさつを締めくくりました。
東京で生きる若者の姿から“かぞく”の在り方を問う『かぞくへ』は、2月24日(土)より渋谷ユーロスペースにて上映、ほか全国順次ロードショーされます。