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湯浅弘章監督初長編は「粗削り」がシンクロ 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった押見修造さん、南沙良(みなみ・さら)さん、蒔田彩珠(まきた・あじゅ)さん、萩原利久(はぎわら・りく)さん、湯浅弘章監督(左より)。南さん、蒔田さん、萩原さんは劇中の制服で登壇
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 2002年生まれのふたりの女優・南沙良さんと蒔田彩珠さんがダブル主演をつとめる青春映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』が7月14日に新宿武蔵野館で初日を迎え、南さんと蒔田さん、共演の萩原利久さん、原作者の押見修造さん、湯浅弘章監督が舞台あいさつをおこないました。

 押見修造さんの同名コミックを映画化した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、言葉がうまく話せない高校1年生・大島志乃と、志乃の友達になった音楽好きなのに音痴な同級生・岡崎加代を中心とした物語。偶然に聴いた志乃の歌声に魅了された加代のアイディアで文化祭でライブをやるため練習を重ねていくふたりの姿と、あるきっかけから変化していくふたりの関係が描かれていきます。

 舞台あいさつは初回の上映後におこなわれ、志乃を演じた南沙良さんは映画を鑑賞したばかりの観客のみなさんに「どうでしたか?」と質問し、大きな拍手に「ありがとうございます」と笑顔を見せると「いよいよ公開なんだと思って、いますごくドキドキというか緊張しているんですけど、とっても嬉しい気持ちでいっぱいです」とあいさつ。
 加代を演じた蒔田彩珠さんは「初めて主演をさせていただいた作品が、こうして無事に公開されてとても嬉しく思っています。早くみなさんに、多くの方に観てもらええたらいいなと思っています」と初日を迎えた心境を語りました。

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大島志乃を演じた南沙良さん

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岡崎加代を演じた蒔田彩珠さん

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菊地強を演じた萩原利久さん

 南さんは、吃音を持つ志乃を演じるにあたり「実際に吃音の方にお話をうかがったりして、吃音がどういうものなのかという理解を深めるところから始めたりしました」「実際にお話をうかがって感じたことが(演じる上で)影響しているというか、大きいかなと思っています」と役について語り、蒔田さんは志乃と加代の関係を表現するため「志乃の言葉とか気持ちとかを最後まで待つようにしました。志乃は、いままで自分の伝えたいことを遮られたり笑われたりしてきて、加代も自分が音痴だということを笑われてきて、笑われることがどれだけつらいかというのを知っているので、人一倍、志乃の気持ちを汲んで関わっていこうと思っていました」とコメント。

 志乃と加代の同級生・菊地強を演じた萩原利久さんは「一番最初が一番肝心というか、あそこが菊地のマックステンションじゃないですけど、どれだけ上げられるかみたいなところが自分の中であったので」と、菊地を演じる上で意識していた点を挙げ、クラスメイトなど菊地の周りの人々を演じたキャストの反応もあって「高いところと低いところの差が、周りの方々のおかげで作れたのかなと思いますね」と振り返りました。

 自らの経験を投影して原作を執筆したという押見修造さんは「ぼく自身が中学生くらいから、志乃と同じような感じでいろいろ煩わされていまして、その感じを志乃のキャラクターに入れ込んでいるんですけど、ぼくもこのマンガを描くまで、なるべく人にも相談しなかったですし、誰にも言わないで“自分の恥ずかしいもの”としてしまっていたので、マンガでなにを描くかというときに、そういうものこそ描きたいなとぼくは常日頃思っているので“恥ずかしいもの”のひとつとして大事にしまってあった吃音というのをテーマに描いてみたという感じです」と原作に込めた思いを語り、映画について「みなさんほんとに生々しいというか、ドキュメンタリーを見ているみたいな感じがするというか、みなさんほんとに生きているのをこちらが覗き見ているような感じがしてそれがひじょうに感動的でした」と感想を。そして「原作者として映画に点数を付けるとすると?」と質問されると「100点以外に言いようが」と評しました。

 これが長編初監督となる湯浅弘章監督は、押見さんも『ドキュメンタリーを見ているみたい」と表現した作品の描き方を「役が14歳、15歳という(設定の)役で、リアル14歳(※昨年春の撮影時)を選んだ時点でその姿がリアリティを持つと思っていますし、現場でもお芝居に悩んでいる姿がそのまま役に反映されていたりとか、そういうのもあると思います」と語り、映画終盤のクライマックスシーンについて「撮影の最終日に持ってきたんですけど、役としての最後のクライマックスという盛り上がり方もあれば、撮影でいろいろ大変だったのを思い出していろいろこみ上げるものもあるだろうし、そういうふうに感情の持っていき方を調整してあげたという、こちらからはそれだけで、あとは3人がいい芝居をするから、それだけですね」と、若き俳優陣へ賛辞を送りました。

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原作者の押見修造さん

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初長編となる湯浅弘章監督

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笑顔で撮影を振りかえる志乃と加代=“しのかよ”役の南さん(左)と蒔田さん

 舞台あいさつは、5人それぞれのメッセージで締めくくられました。

 「私も自分の中にすごくたくさんコンプレックスだったり嫌な部分があって、いままでそれをどうやって排除しようとか、どうやってそれを普通に戻すかとか、そういうことをずっと考えていたんですけど、この作品に出会えて、その自分の嫌な部分と自分がどうやって向き合ってあげて、どうやって帰る場所を見つけてあげてとか、そういうことのほうがずっと大切なんだなということに気づけたというか、気づくきっかけをくれた作品なので、そういう想いがみなさんに少しでも伝わればいいなと思っています。観てくださった方は、思った感想とか、いろいろなことをたくさんの方に伝えていただければなとひそかに思っております」(南沙良さん)

「この映画は、高校生だからこそ些細なことで傷ついたり、嬉しい気持ちになったり、いま学生の人だったらこの映画を観て、いままさにそうだなって共感できるし、大人の方だったら、自分たちもこういう思いをしたな、嫌な思いをしたり嬉しかったりあったなと、懐かしく思える作品だと思うので、より多くの方がこの作品に出会えたらいいなと思っています」(蒔田彩珠さん)

「いま彩珠ちゃんも言ったんですけど、高校1年生という、中学3年生とも高校2年生とも違う、ほんとにそこの1年にしかないエネルギーみたいなものを常々ぼくたちは現場で出しあっていて、試写を観たときに、そのエネルギーというのがスクリーンからもちゃんと出ているんじゃないかなと思えたので、もしみなさんにそのエネルギーみたいなものが伝わっていたらいいなと思っています。初日を迎えてぼくが個人的に楽しみにしていることは、やっとみなさんの感想が聞けるというのがほんとに楽しみなので、感想なんかをいろいろな人に言ってみたり、つぶやいてみてもらえたりすると嬉しいです」(萩原利久さん)

「自分のことが嫌いだって1回でも思ったことのある人は、必ずこの映画の中にどこかしらに自分の後ろ姿というか自分自身を発見できるんじゃないかなと思います。観たあとに自分の中にしまっていたものを言葉にできたりとか、表に出したりとか、きっかけにもなりうる映画かなと思うので、ぜひぼくも感想など見たり聞いたりしたいなと、楽しみにしています」(押見修造さん)

「今回、ぼくが初めての長編になるんですけど、今後2作目、3作目、撮っていきたいと思っているんですけども、この処女作を超えることはできないんじゃないかなって、見出しっぽいことを言ってみたりして(笑)。なんですけど、ぼくの粗削りな部分だったり、(キャスト)3人の粗削りで剥き出しですごくいい部分が、この作品のモチーフといい感じにシンクロしているなと思って、やっぱり処女作だからこそのものだと思うんですよね。だから、そういう瞬間を観ていただきたいというのもありますし、ひとりでも多くの方に観ていただきたいなと、この作品をどんどん広めていきたいなと思っております。今日はお越しいただきありがとうございました」(湯浅弘章監督)

 『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞など高い評価を受けた脚本家・足立紳さんが脚本を手がけ、多彩な活動を見せるミュージシャン・まゆきあゆむさんが音楽を担当、蒼波純さん、奥貫薫さん、山田キヌヲさん、渡辺哲さんらが共演する『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、7月14日(土)より新宿武蔵野館にて好評上映中ほか、全国順次公開されます。

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