舞台あいさつをおこなった増井孝充さん、相田淑見さん、根矢涼香(ねや・りょうか)さん、大野大輔監督、真柳美苗さん、渡辺だいぞうさん(左より)。相田さん、真柳さん、渡辺さんは劇場で販売中の『ウルフなシッシー』Tシャツで登壇
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破局寸前カップルの“痴話喧嘩”を赤裸々かつシニカルに描いたコメディ『ウルフなシッシー』が9月15日に新宿K's cinemaで初日を迎え、主演の根矢涼香さんら出演者と主演もつとめた大野大輔監督が舞台あいさつをおこないました。
『ウルフなシッシー』は、小劇団の女優でフリーターのアヤコと新米AV監督の辰夫のカップルが、あるきっかけから酔いも手伝いお互いへの不満をひたすらにぶつけあっていくというストーリー。2017年に開催された日本映画の新たな才能を発見するコンペティション映画祭・第18回TAMA NEW WAVEでグランプリ・ベスト男優賞・ベスト女優賞の三冠を獲得し、満を持しての一般公開を迎えました。
監督・脚本に加え辰夫役で主演もつとめた大野大輔監督は「こうして劇場公開の機会をいただけまして、ひじょうにありがたく、ひとえに出演してくださったみなさんと、協力してくださった方々のおかげであると、大変感謝しております」とあいさつ。ほぼ満席ながら数席の空席が出た状況に「嫌な予感はしていたんですけど」と若干弱気な様子を見せつつも「徐々に徐々に、この作品を好きな人には広めていけたらいいんじゃないか」と、劇場公開初日を迎えた心境を語りました。
アヤコ役で主演をつとめた根矢涼香さんは「この映画って、たぶん口コミで広がるような映画なので、よかったらちょっとでも呟いていただけたら」とコメント。
また根矢さんは、劇中でアヤコと辰夫が部屋の中でお酒を飲みながら口論するシーンは「36時間くらいでほとんどぶっ続けで」撮影されており、さらにリアルな感じを出すために実際に撮影中にお酒を飲んでいたことを告白。根矢さんが「私も監督もけっこう記憶がないので、無事にセリフが言えていてよかったなって思っています」と話すと、部屋のシーンには出演していないアヤコの友人・ミキ役の真柳美苗さんも、スタッフから「“ヤバい! 監督がほんとに酔っ払っててヤバい!”ってメールが来て(笑)」と裏話を披露。お酒に強いという根矢さんは「あんまり(酔いでは)変わっていなかったけど、眠さで記憶が」とそのシーンの撮影を振り返り、大野監督は「ぼくは完全に記憶が飛んでいて、(撮影した)素材を見返していて、よくわからないアングルで撮っているなと」と話して客席の笑いを誘いました。
辰夫の友人のVシネ監督・木口を演じた中村だいぞうさんは、大野監督の演出を「“ぼくの芝居のトーンに合わせてください”という、その一言」の「オラオラ系の演出」だと評し「もう身を任せて撮影してました」と感想を。その中村さんの言葉に大野監督自身は「そんなでしたっけ? ぼくが芝居ができないので、そのあれに合わせてもらえたらなという感じだったので……」とやや弁解気味に説明し、中村さんの演技を「すごくよかったと思います」と一言。
オーディションに参加する女優・坂下を演じた相田淑見さんは、TAMA NEW WAVEが開催される少し前に大野監督と会う機会があったそうで「“もうすぐTAMAですね。もしかたしたら賞穫れるんじゃないですか?”みたいな振りをしたときに、大野さんが“穫れるわけないっしょ、ハハハ”みたいな感じで、そのあとに三冠のニュースが出たので、自分的にはそれがすごくカッコよかったです。大野さんすげえってなりました」と大野監督のちょっと意外なエピソードを紹介。
映画序盤に登場するバーの常連客・寺本を演じた増井孝充さんは「バーのシーンで3人さん(根矢さん、大野監督、真柳さん)のお芝居を見させてもらいまして、ぼくも緊張しまして、タバコを緊張しながら吸っていたのを思い出しました」と、ストーリーの発端となるバーのシーンについて述べました。
舞台あいさつでは映画をご覧になったばかりの観客の方々からの質問タイムも設けられ、タイトル『ウルフなシッシー』の意味を質問された大野監督は「ウルフというのは狼という弱肉強食の強い存在と、対義語でシッシー(sissy)というのはアメリカのスラングで“腰抜け”とか“弱虫”とかそういう意味合いの単語で、対義語をくっつけてタイトルにしたという感じです。ふたり(アヤコと辰夫)がどういう存在なのかというのをタイトルに意味合いとして込めたということでもあります」と説明。
また、次に撮りたい作品は? という質問に大野監督は「自分の予算内で撮れるものと予算はよくわからないけど撮りたいもの」のふたつを進めていると明かし、前者として「前に作った奴が青春の挫折みたいなテーマだった作品で、これ(『ウルフなシッシー』)が青春が停滞しているという状態の作品で、なので、もう1本、三部作というとあれですけど“青春の終わり”みたいなものを1本撮ったほうがよいのかなと」、後者として「ぼくの好きなジャンルの(作品)と言いますか“狼女とブルーフィルム”をテーマにした話を考えてはいます」と、ふたつのアイディアを紹介しました。
客席からの質問に答える大野大輔監督と、根矢涼香さん、真柳美苗さん、渡辺だいぞうさん、相田淑見さん、増井孝充さん(右より)
舞台あいさつは、なぜかすぐに切り上げようとする大野監督をほかの登壇者や宣伝スタッフが制止するかたちでなんとか進行し、最後は「K's cinemaさんということで『カメ止め!』(K's cinemaで公開され大ヒットした『カメラを止めるな!』)を意識しているんですけど、やっぱり口コミの効果がすごく大きかったと思うので、面白かったなって呟いたり書いたりしてくれると嬉しいです」(真柳美苗さん)、「私は大野さんの映画のいちファンでもあると自分で思っていますので、また大野さんが新作を撮れるように応援していきたいと思っていますので、みなさまも一緒に応援していただけると嬉しいです」(相田淑見さん)、「始まったばかりですが、続けて盛りあげたいなと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします」(根矢涼香さん)と、応援を呼び掛けるメッセージで締めくくられました。
松本穂香さん主演のネット配信ドラマ「アストラル・アブノーマル鈴木さん」の監督としても注目される大野大輔監督が「ダメな男女」のやりとりをユーモアを交えつつリアルに描いた『ウルフなシッシー』は、9月15日(土)より28日(金)まで新宿K's cinemaにて2週間上映。
上映期間中には、根矢涼香さんが主人公ふたりをイラスト化してデザインした「アヤコと辰夫のやさぐれステッカー」が映画をご覧の方にプレゼントされます。15日より21日までの1週目はアヤコバージョン、22日より28日までの2週目は辰夫バージョンと絵柄は週替りで、先着順・予定枚数に達し次第配布終了となっています。