日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>『M/村西とおる狂熱の日々』東京プレミア&トークで村西とおる監督「自信がございます」

『M/村西とおる狂熱の日々』東京プレミア&トークで村西とおる監督「自信がございます」

記事メイン写真

トークに出演した渡辺万美(わたなべ・ばんび)さん、西村賢太さん、片嶋一貴監督、村西とおる監督、原子あずめさん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します

 “AVの帝王”と呼ばれた村西とおる監督の撮影現場の記録を中心としたドキュメンタリー『M/村西とおる狂熱の日々』(2019年春公開)の東京プレミア上映が10月12日になかのZERO小ホールで開催され、上映後に村西監督、芥川賞作家の西村賢太さん、片嶋一貴監督がトークをおこないました。

 『M/村西とおる狂熱の日々』は、村西とおる監督の1996年の作品「北の国から 愛の旅路」撮影現場のメイキング映像を中心に、新たに撮影されたインタビューシーンや各界著名人のコメントを加えて『アジアの純真』などの片嶋一貴監督が構成したドキュメンタリー。当時アダルトビデオ界で一世を風靡しつつも事業の失敗により莫大な借金を抱えた村西監督が北海道で2週間にわたりおこなった撮影の様子が描かれていきます。

 プレミア上映終了後に舞台に登場した村西監督は大きな拍手を浴びながら「お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません。昭和最後のエロ事師・村西とおるでございます」とあいさつ。現場でのさまざまなトラブルが記録されている『M/村西とおる狂熱の日々』について「ひとりインパール作戦、そんな感じでございます」と冗談も交えつつも「このように高き壇上から生意気なことを申し上げるような作品ではございません。しかし、AVの裏側といったものをご紹介した映像がいままでまったくないんですね。まさに我が国といいましょうか世界で初めてご紹介たりえたわけでございます。そういう意味におきましては、みなさまがたぶん心の中で願われてであろう“かつて人類が相まみえたないような映像を観てみたい”という、生意気なことを申し上げるようでございますけれども、そういったものをみなさまにご案内できたのできたのではないかというふうな自信がございます」と作品の意義に自信を見せました。

記事写真

渡辺万美さん(左)と原子あずめさん(右)をアシスタントにトークを繰り広げる村西とおる監督
※画像をクリックすると大きく表示します

 そして村西監督が「私も畏れ多くてですね、この方とお話する機会がめったにないと思っていたんです」という伝説的AV監督の代々木忠監督がお祝いの花束を持って登場。代々木監督は「ほんとに今日、彼の映画を観てね、関り合いを持たなくてよかったなと(笑)」と話して客席の笑いを誘いました。

記事写真

代々木忠監督から花束を受け取る村西とおる監督
※画像をクリックすると大きく表示します

 グラビアなどで活躍する渡辺万美さんと原子あずめさんをアシスタントに繰り広げられたトークは『M/村西とおる狂熱の日々』の片嶋一貴監督も参加して続き、村西監督は、約60時間分におよぶという映像素材を109分の映画へとまとめ上げた片嶋監督に「私も感動しました。この監督の作業がなければこの作品はできませんでした。ほんとに監督ありがとう」と感謝。
 片嶋監督は「去年の夏に長時間にわたる素材をずうっと見ていて、こんな人がいるのかって面白くて面白くて、編集してこの面白さがダメになったらおしまいだなっていうようなことを(笑)」と編集作業を振り返り、素材を見る中で「ラストシーンはこれだ!」と思ったという実際にラストに使われているシーンを「すごく好きです」と話しました。
 さらに片嶋監督は数ヶ月におよんだという編集作業も「それが喜びになっているということでもあるし、至福の時間でしたね」「(村西監督が)森の中のターザンみたい、もう自由な、なにがあっても自分の信念を曲げないみたいな。今後の人生がちょっと変わるんじゃないかっていうくらいに面白かったです」と語るとともに「あれを現場で撮った清水大敬さんがすごいですよ」と、当時のメイキング撮影を担当した俳優・監督の清水大敬さんの功績を讃えました。

 また村西監督は、今後『M/村西とおる狂熱の日々』が海外も含めさまざまな映画祭に出品されることを明かし「世界に向けて発信していきたい」「大変な反響をいただけるんじゃないかと、いまから期待をしております」と意気込みを語りました。

記事写真

作品についてトークする片嶋一貴監督と村西とおる監督
※画像をクリックすると大きく表示します

 トークショーの後半はメインゲストとして芥川賞作家の西村賢太さんを迎えて進行し、西村さんは「(『M/村西とおる狂熱の日々』に)出ていたときの監督といまのぼくと、そんなに歳が変わらないはずなんです。(当時の村西監督が)48くらい、ぼくがいま51なんですけど、全然そのエネルギーはないですね。意気地のない話なんですけども、もういま、そこからそこまで歩いてきただけでも息が切れているくらいですからね(笑)。ほんとに体力的にダメなんじゃないかと。でも、よく考えたら昔の人間は50で死にますしね、だから村西監督みたいな人はやっぱり異常といいますか、エネルギーの塊といいますか、ほんと見習いたいと思います」と作品の感想をコメント。
 村西監督は西村さんに映画で印象に残った場面を尋ね、西村さんが映画序盤で降板させられ帰京させられる出演者のひとりの女性を挙げ「あの方はいいキャラクターですね(笑)。案の定、帰されていましたね」と答えると、村西監督はその出演者の宿泊先のホテルでの”したたかな”裏話を披露しました。

記事写真

トーク中の西村賢太さんと村西とおる監督
※画像をクリックすると大きく表示します

 その後もトークは「AV女優は5拍子、6拍子よくなくてはいけない」という村西監督の持論や、村西監督は積極的に活用する一方で西村さんは「無駄な気がして、時間と労力の(笑)」という理由から一切やっていないSNSの使い方についてなど、観客からの質問にも答えながら幅広く展開しました。

記事写真

トーク中の西村賢太さんと渡辺万美さん
※画像をクリックすると大きく表示します

記事写真

トーク中の村西とおる監督と原子あずめさん
※画像をクリックすると大きく表示します

 トークショーの終盤に客席から「これからの若者に向けて力強いメッセージを」という要望が出されると、村西監督は「若者の方というのはいつの時代でもね、我々のような年配者はね“いまの若者はね”なんて言っているんです、ずうっと。でもね、若い人たちは若い人たちのね、夢と希望を失わないでがんばっていただいて、ちょっと挫けそうになったときには私のことを思い出してください。私はね、前科7犯ですよ。アメリカでもって370年の求刑をされたこともあるんですよ」「下にはもっと下がいる。そのずーーーーっと下にぼくはいるよと。“あんなところにいる男がいるな”と思うとやる気、元気が湧くでしょ? 私のことを思い出せばね、若者へのメッセージになるような気がいたします」と、自身の体験に基づいてエネルギッシュに回答。

 そして約1時間にわたって繰り広げられたトークは「寂しいですね、寂しすぎます。この高き壇上から御礼申し上げます」という村西監督のあいさつで締めくくられました。

 狂気ともいうべき1996年の撮影風景とインタビュー、コメントから“AVの帝王・村西とおる”の人間像を浮かび上がらせていく『M/村西とおる狂熱の日々』は、2019年春、全国順次公開されます。

スポンサーリンク