舞台あいさつをおこなった監督とキャスト。前列左より、伊藤裕一さん、玉城裕規さん、松田凌さん、皆本麻帆さん、高柳明音さん、山口大地さん。後列左より、双松桃子(ふたまつ・ももこ)さん、辻本耕志さん、川本成(かわもと・なる)さん、中村誠治郎さん、小槙まこさん、西田大輔監督。キャストは全員劇中の衣裳で登場
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人気舞台の演出で知られる西田大輔監督の映画初監督作『ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY'S ROOM』の完成披露上映会が10月22日にシネ・リーブル池袋で開催され、松田凌さん、皆本麻帆さん、玉城裕規さんら出演者と西田監督が舞台あいさつをおこないました。
舞台版「煉獄に笑う」「戦国BASARA」シリーズなど、数々の人気作の舞台演出を手がけてきた西田大輔監督が原作・脚本・監督をつとめた『ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY'S ROOM』は「その魚の本当の名前を知れば大切な過去を振り返ることができる」といわれる魚“オンリーシルバーフィッシュ”をめぐり、互いの名前も知らない十数人の男女が洋館の一室でゲームを繰り広げていくというミステリー。今年1月に上演された西田監督の作・演出による舞台「ONLY SILVER FISH」と連動した作品で、舞台版の出演者がそのまま映画にも出演しています。
西田大輔監督は「ようやっとこの日が来たなという想いがあります、映画だけじゃなく人生においてもですね」とあいさつ。「俳優と新たな挑戦をして、もうひとつの上のスケールでなにかをやっていきたいという想いがあって、これはその始まりの扉であるような気持ちでいます」と映画監督デビュー作の披露を迎えた心境を語り「笑えるだけの作品や泣けるだけの作品が世の中にはあふれているので、そこでみんなの顔色をうかがってもしょうがないなと思ったので、カッ飛んだ作品を作ってみました。1回で(映画の内容が)わかった人はいないんじゃないかなと思うような映画なんですけど、どうぞ睨みつけて観てもらえたらなと思います」と、監督自身が「挑戦的な作品」という作品の内容について語りました。
また西田監督は、舞台版との関連について「これ(映画『ONLY SILVER FISH』)は舞台ではできないであろうし、作品と物語の完全なるジャンルの違いみたいなものをやってみたかったというのはありますね」と話し、出演者について「あえて全然(舞台と)違う役をやってもらおうと思って、全員に共通することは舞台版とこの映画の役は真逆であるということは考えてやっています」とコメントしました。
物語の中心となる「黒ネクタイの男」を演じた松田凌さんは「正直申しますと、ここまで“緊張”の二文字がなかったのですけど、いまものすごく緊張してきました(笑)。なぜか自分でもわからないくらい胸騒ぎがあるように思います。ただ、新しい扉が今日という日から、そしてこの作品から生まれると思いますので、ぜひ刮目して観ていただければなと思います」と、やや緊張を覗かせながらあいさつ。
そして「黒ネクタイの男」を演じる上で「ぼくは一番は我慢ということをしたかなと」と話し「各々の会話であったり目には見えない空気感のようなものが大事」な作品の中で演技をするにあたって「“ほんとはこの人はどう思っているんだろう?”というものを、顔からでもセリフからでも感じ取られないように、できるだけ自分のすべてを抑えて演じさせていただいたかなというふうに思います」と振り返るとともに「その我慢という文字が最後にはどうなっていくのかというところにも注目していただけたら嬉しいですね」と、映画の内容に期待を持たせました。
ヒロインのユキを演じた皆本麻帆さんは「すごくドキドキして、この作品がどういうふうにお客様に受け入れてもらえるのかというのがすごい緊張しているんですけど、楽しんでもらえたらいいなと思います」と上映を前にした心境を語り「撮影現場で、空気というか、おかしな愉快な人がたくさんいらっしゃる中で、一生懸命それを感じよう、受け取ろう、キャッチしよう、見逃すまいと、ずっとこういう感じで、ユキとして、意識していました」と、個性的なキャラクターばかりの作品内での演技についてコメント。
「白ネクタイの男」を演じた玉城裕規さんは、演じる上で心がけたことを質問されると「ないですね。撮影期間もタイトであっという間ですし、あまり深く考えずにこのメンバーの中で新鮮にいようかなくらいでしたね」と飄々と答えましたが、役がありのままかと訊かれると「素ではないですけどね(笑)。これから観るお客様、素ではないですからね。ちゃんとお仕事しておりますので、そういう目を持ってあたたかく観ていただけたらってほんとに思います。つまりは、楽しんで観ていただけたらなと心から思います」と客席に呼び掛けました。
さらに玉城さんは舞台と映画との違いについて質問されると「引くくらい違うので、別作品なので、舞台を観られたというお客様は、舞台のことはまったく無視で、ありのままにこの『ONLY SILVER FISH』の映画をそのまま観てください」と話し、自身のコメントの「ありのまま」を受けて「素ではないですからね(笑)」と付け加えました。
「チョーカーの女」を演じた高柳明音さんは、この作品では撮影前にリハーサルの期間があったため、そのときから「ただただ首にチョーカーを付けるということを意識しました。チョーカーの女なので。とりあえず意識したらチョーカーに手を置いてみる練習をしたりはしましたね」と役作りについて語るとともに、この日も着用していた劇中の衣裳が薄手のため、撮影中は「メチャクチャ寒くて、現場が。空調効かないし、暖房も足元の小さいのがいくつか置いてあるみたいな感じだったんですけど、人が横を通るたびにメチャクチャ寒くて、人ってほんとに風を切って歩いているんだなって思いましたね、寒すぎて(笑)」と苦労話を披露。
アイドルグループ・SKE48のメンバーとしても活躍している高柳さんは、過去に戻れるとしたら? という映画の内容にちなんだ質問がされると「本音を言ってしまえば戻ってやり直すのは面倒くさいなって思うんですけど、アイドルになるくらいに戻って、もうちょっとアイドルの姿を徹底して、いまごろ総選挙で1位になっていたらと思います(笑)。残念ながらなれなかったので1位には」とAKBグループ総選挙に絡めユーモアを交えて答えつつ「戻れないので、これからなにかで一番を獲れるようにがんばりたいと思います」と前向きな姿勢を見せました。
「赤ボールペンの男」を演じた伊藤裕一さんは「ぶっ飛んだ作品を作りたいと(監督が)おっしゃっていたので、普段と違ってあんまりロジックで物事を考えずにお芝居を作りましたね。極限状態にある人たちって心拍数も違えば喋るスピードも違ってくるだろうし、そういうものを隠そうとカッコつけているんだけどカッコつかないというのがぼくの役の魅力なのかなと思って、ものすごくカッコつけて演じています。なので、それをカッコいいと思って見られなかったら正解なので“カッコよくないな”って思わないでください。それが正解です」と役への取り組みについて説明し「ぼく西田さんと舞台(の「ONLY SILVER FISH」)で初めてだったんですけど、すごく明かり、照明効果にこだわりを持っていらっしゃる方だなと思っていまして、その明かりだったり色だったりというこだわりはこの映画の中にも随所に出てくるので、それを見逃さずにご覧いただければと思います」と、映画の注目点を挙げました。
「トランペットの男」役の山口大地さんは「狂気じみているというか変わっている人たちが集まっているんですけど、その中でもけっこう飛び抜けて狂気を放っている」役を演じるにあたり「ホン読みのときにとりあえずやるだけやってみようと思って思いっきりやったら、予想通り西田さんに“ちょっと抑えてくれ”って言われまして(笑)、そこから引き算しなきゃいけないなと思って、なるべくナチュラルに狂気を放たなければいけないんですけど、狂気を放とうとすると、もうそれは嘘になってしまうので、なるべくそれを隠しながら隠し切れない、そういう人物であれたらなと思って」役作りをしたとコメント。
山口さんは以前より西田監督演出の舞台に何作も出演しており「(舞台の)演出家としての西田さんしか見ていなかったので、すごい(映画の現場が)違和感があるんじゃないかなとぼくらは思ったんですけど、現場にいる感じが“監督じゃん”って思って個人的にはすごく感動しましたし、プライベートでも(西田監督が)“映画を撮るんだ俺は”って言っていたので、やっと夢が叶ったんだなと。今日という日にみなさんにご覧いただけて、ぼくは感動してますほんとに」と、西田監督の監督デビューに際しての想いを述べました。
「バレッタの女」を演じた小槙まこさんは「あえてみんなの表情だったりとか感情だったりとかを見るようにしていて、あと台本も初見の感情をすごい大事にしていました」と演じる上で意識した点を挙げ、高柳さんも話したように寒い中での撮影だったため「毛布にくるまってみんなで仲良くやっていました(笑)」と、撮影中の思い出を語りました。
「ドーナツを食べる女」役の双松桃子さんは「ドーナツを食べる女の子ってかわいいイメージあるじゃないですか、(役の髪型が)ツインテールだし。でも全然かわいくない役を演じました。ぜひ観てください」と独特な設定の役について語り、役名通りずっとドーナツを食べている役のため撮影中は「ずっと胃もたれを起こしていました(笑)」とこの役ならではの裏話も。
「ハンドグリップの男」役の辻本耕志さんは「ちょっとエッジの効いたキャラクターだったので、やり過ぎてもみなさんのお芝居の邪魔になるし、どうしようかなといろいろ考えて、よくよく考えたら“これ自分と似ているところあるな”と思って、自分の中の気持ち悪い自分を出した感じです(笑)」と役について語り、舞台版を観ている方に向け「舞台と映画は全然違うものでストーリーも違いますし、やっているキャラクターも全然違うので、みなさんの”こんな芝居やるんだ”っていうような振り幅を見ていただければ役者冥利に尽きるんじゃないでしょうか、みなさん!」と映画の楽しみ方をアピールしました。
「銀コインの男」役の中村誠治郎さんは「西田さんが“狂った作品作りたい”って言ってたから、台本を見たらほんとに狂ってたんで、(監督に)質問をしたんですよ。そしたら“知らん”って言われて“なにも考えずにやれ”って言われて、ほんとになにも考えずに、舞台版と全然違うキャラクターなので、自我を捨てて普段の自分とは違うようにおとなしく、さっき凌(=松田さん)が言っていたように、我慢というような感じではやりました」と撮影を振り返ってコメント。
中村さんも西田監督の舞台には何作も出演しており、その西田監督の映画監督デビューについて「嬉しかったですね。ずっと西田さんも(映画をやりたいと)言っていたので、それに出れるというのも嬉しいですし」と語るとともに「やっぱりこの人狂ってるなと思ったのは、どんどん(映画の現場に)慣れていくスピードが尋常じゃないというか、撮影1日目より2日目のほうがアイディアが出たりとか、だからすごい人だなって、改めて今度の映画をやって思いました」と、よく知る間柄ならではの視点で西田監督を評しました。
「懐中電灯の男」役の川本成さんは「映画って1回やったものは一生残るじゃないですか。だからその1回にすべてを賭けるみたいな」感覚とはちょっと違った「ちょっと楽しんでみたいなという感覚を保持しようと思いながらやりましたね」と「いい意味での適当感」を持っていたと作品への取り組み方を説明。そして高柳さんと同様の過去に戻れるとしたら? という質問には、2歳になる娘さんの靴を買いに行ったときに14センチの靴か15センチの靴かで迷い「15センチ買ったんですよ。でも履かせたらちょっと大きくて、だからあの日に戻って14センチを買いたい。つい1週間くらい前です」という微笑ましいエピソードで答えました。
11人の出演者と監督それぞれの作品への想いが語られた舞台あいさつは、松田さんの「聞いていただいたとおり、おかしな人たちで映画を作りました(笑)。平成という時代は終わってしまいますが、おそらく平成きっての謎なんじゃないかと。正直言って難しいです、この作品。みなさまのそれぞれの答えがあると思いますし、さっき“振り返りたい過去がある”という話をされていましたけど、映画は何度も観られるので、そういった意味では振り返ることもできるという。西田大輔監督が初監督をしたこの作品がですね、どうか世の中にとっても最大の謎であれるよう、みなさんに届けばいいなと思っています。ぜひとも、どんなシーンも見逃さずに観てください。よろしくお願いします」というメッセージで締めくくられました。
撮影に『淵に立つ』など深田晃司監督作品を手掛けるカメラマンの根岸憲一さんを迎え、舞台劇的に幕を開けつつ映像でしか表現不可能な展開を見せる『ONLY SILVER FISH -WATER TANK OF MARY'S ROOM』は、この日の舞台あいさつに登壇した出演者のほか「バッグハンガーの女」役で菊地美香さんが出演。11月24日(土)よりシネ・リーブル池袋にて公開のほか、全国順次公開されます。