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舩橋淳監督「人間の想像力って時代も国境も越える」 『ポルトの恋人たち~時の記憶』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった中野裕太さん、柄本佑さん、舩橋淳監督(左より)
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 日本・ポルトガル合作によるふたつの時代を舞台にしたラブミステリー『ポルトの恋人たち~時の記憶』が11月10日に初日を迎え、シネマート新宿で主演の柄本佑さんと共演の中野裕太さん、舩橋淳監督が舞台あいさつをおこないました。

 『ポルトの恋人たち~時の記憶』は、18世紀・リスボン大震災後のポルトガルと、21世紀・東京オリンピック後の日本というふたつの国と時代で、それぞれの時代に生きる3人の男女が繰り広げる愛憎を描いた作品。撮影はポルトガルと日本でおこなわれ、柄本佑さん、アナ・モレイラさん、中野裕太さんの3人が、ふたつの時代の登場人物を一人二役で演じています。

 18世紀ポルトガルの日本人奴隷・宗次と21世紀日本のエリート会社員・加瀬柊次の二役を演じた柄本佑さんは、映画のタイトルにもなっているポルトガルの街・ポルト出身の故マノエル・ド・オリヴェイラ監督の大ファンで、新婚旅行も18日間ポルトガルに行ったというほどのポルトガル好きとのこと。「今回、こういうお仕事をいただいて、内容どうこうというより“ポルトガルに行けるらしい”“行きます!”みたいな。って言ってホン(脚本)を読んだら、わりとヘビーな話だったという(笑)」と笑いつつ「スタッフの方に、そのマノエル・ド・オリヴェイラ組をやられた方がいらっしゃったりして、とても幸せな現場を体験させていただきました」と、愛する地での撮影を振り返りました。

 また、柄本さんは21世紀のパートでは英語のセリフにも初挑戦しており、それについて質問されると「新しいことに挑戦するというか、そういうのはやっぱり新しいときは新鮮で楽しいですけどね。それよりなによりポルトガル語ですよ! こちらの方(中野裕太さん)、ポルトガル語まったく喋れないところからポルトガル語日常生活で喋れるくらいまで、撮影のときすごかったんです。これはみんなに言っていきたい」と、共演の中野裕太さんがポルトガル語を習得して撮影に臨んでいたことをつよくアピール。
 18世紀では日本人奴隷の四郎、21世紀では日系ブラジル人の幸四郎を演じた中野さんは、わずか1ヶ月半ほどでポルトガル語を習得したことを明かし「知恵熱みたいな、頭を使い過ぎると頭って痛くなるんだなって(笑)」って、ハードな勉強をしたことをうかがわせました。

 さらに、舩橋淳監督の「(中野さんがポルトガルで)モテたんですよ。アジア人でイケメンで、ポルトガル語喋るし、もうほっとかなかったですね」という発言を受けて司会者が「(現地での人気で)リードされましたね」と柄本さんに話を振ると、柄本さんは「だって俺がもう(中野さんに)惚れちゃってますから」と答え、中野さんも「わりとラブラブでしたよね(笑)。初対面からすごいチューニングというか息があって」と、仲の良さを感じさせました。

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宗次・加瀬柊次役の柄本佑さん

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四郎・幸四郎役の中野裕太さん

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メガホンをとった舩橋淳監督

 日本人は柄本さん、中野さんと舩橋監督、古屋幸一撮影監督、アシスタントプロデューサーだけだったというポルトガルでの撮影は現場の流儀もポルトガル流のため、昼食も「昼間のど真ん中にね、たっぷり2時間くらい、アペタイザー(前菜)から、メインから、スープがあって、サラダがあって、ワインを飲みながら、最後デザートが」(舩橋監督談)という、日本の現場とはまったく違ったものだったそう。その分、日中に撮影できる時間が短くなるという難しさはあったそうですが、柄本さんは「ポルトガルの方々はそうやって映画撮影行為をしていきながら、お昼ご飯になったらみんなで集まっていろいろ喋りながらまた午後もがんばろうぜって、そこも映画作りに入っているんですよね。その時間もちゃんと大事にしなきゃいけないという」とポルトガル流の現場を体験しての感想を述べ、一度、食事より撮影のスケジュールを優先しようとして「(ポルトガル側スタッフに)すっごい怒られていました(笑)」(中野さん談)という舩橋監督も「ポルトガルと日本の国境を越えるというか、いろいろな文化が混じりあって映画になっていくというのはとてもいい経験だなと、いま時間が経って思いますけどね」と、話しました。

 舩橋監督はまた、ふたつの時代が舞台というこの作品の趣向について「もともと、ふたつの映画を1本に観るという体験をやってみたかったんですよね。現代、日本映画を観ているときに実は1930年代のハリウッドのあれに似てるとか、中国映画を観ているときに60年代のイタリア映画のロッセリーニに似てるとか、人って映画を観ているときに全然違う時代の映画を思い浮かべたりするってよくあると思うんですけど、それってとても映画的な体験だなってつねづね思っていたんです。そういう考えの動きというか頭の動きを1本の映画でやってみたいというのが根底にあったんです。それを2本立てということで、18世紀のポルトガルと21世紀の日本でリンクさせてみた。そこでさまざまな違いがある中で、時代は違えども変わらないものも見えてくるというようなのって、人間の想像力って時代も国境も越えてつなぎあうことができるというのは、とても豊かな、面白いなあと思っていて、そういうのをやってみたかったというのはあるんですが、一人二役をさせられる役者の身になったら大変だろうなとは思います」と、意図を語るとともに、一人二役をこなした柄本さん、中野さんら俳優陣を労いました。

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撮影を振り返る中野裕太さん、柄本佑さん、舩橋淳監督

 柄本さんは「日本とポルトガルの合作ということで、こんなにポルトガルの風景を見られる機会もそうそうなかったと思います。きっと新鮮で楽しんでいただけたんじゃないかなというふうに思いますし、こういうタイプの映画もなかなか珍しいと思いますし、楽しんでいただけたら幸いかなと思っております。とにかく最初のお客さまですので、楽しいと思われた方は、家族とか、親友とか、そんな親友じゃない友達とか、あと歩きながら『ポルトの恋人たち』なんか言ってみるのもアリかなと。“なんだ『ポルトの恋人たち』は?”と検索して“あ、ポルトガルが映っているのか。気になる、観にいってやろう”とか、そういう方がいらっしゃるかもしれませんから(笑)、ぜひともみなさんでこの映画を広めていっていただけたらなというふうに思っております。ほんとにありがとうございました」と舞台あいさつを締めくくりました。

 日本でも注目を集めた『熱波』(2012年・葡,独,伯,仏/ミゲル・ゴメス監督)などで知られるアナ・モレイラさんがヒロインのマリアナとマリナを演じ、初の日本人監督による日本とポルトガル合作作品となる『ポルトの恋人たち~時の記憶』は、11月10日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか絶賛公開中です(配給:パラダイス・カフェ フィルムズ/©2017『ポルトの恋人たち』製作委員会)。

作品スチール

ポルトの恋人たち~時の記憶

  • 監督:舩橋淳
  • 出演:柄本佑 アナ・モレイラ アントニオ・ドゥランエス 中野裕太 ほか

11月10日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国公開

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