俳優の井之脇海監督、高円寺を拠点とする監督ユニット「コーエンジ・ブラザーズ」、女優としても活躍する小川紗良監督の監督作3作が『愛と、酒場と、音楽と』として9月29日よりユーロスペースほか順次公開されます。
『愛と、酒場と、音楽と』は、井之脇海監督『言葉のいらない愛』、コーエンジ・ブラザーズ『BOURBON TALK』、小川紗良監督『BEATOPIA』という3本の短編で構成されたアンソロジー。
黒沢清監督『トウキョウソナタ』(2008年)で第82回キネマ旬報ベストテン新人男優賞を受賞するなど、10代前半より高い評価を受け、近年はドラマ「ひよっこ」(2017年)などで知られる若手俳優・井之脇海監督による『言葉のいらない愛』(2015年)は、井之脇監督が日本大学芸術学部1年生のときに制作した初監督作品。井之脇監督が監督・脚本・編集に加え出演もしており、山奥で暮らす男と男が出会った少年の物語がセリフなしで綴られていきます。
同作品は第68回カンヌ国際映画祭のマルシェ(フィルムマーケット)に正式招待されており、日本国内では今回の上映が初劇場公開となります。
『言葉のいらない愛』井之脇海監督コメント
「言葉のいらない愛」を監督した井之脇海です。
今回、公開の話が上がった時、公開することをとても悩みました。なぜなら、今作は私の初監督作品であり、劇場公開の水準を満たしている自信が持てなかったからです。
今作は、私が大学一年の冬に撮った自主映画です。クルーも全員、日本大学芸術学部映画学科の同期で撮りました。その結果、とても荒削りで、青さが全面に出た作品になったと思います。
しかし、久しぶりに劇場公開へ向け見直してみると、その青さや、荒削りな部分が、今では撮れない、"あの時だからこそ撮れた作品"なのだと気付きました。「映画が好きだ!」という想いが溢れていて、映画愛が爆発していました。
しっかりとした規模の映画に比べ、予算や技術など様々な点で劣っていますが、その映画愛だけはどんな作品にも全く負けてなく、これは多く方に観ていただくべき作品であると感じました。なので今回、劇場公開することを決意致しました。
これから先、私はずっと映画に関わっていきます。きっと私自身、今作を何度も見直し、その都度、映画への愛を再確認することになるでしょう。それだけ本当に大切で思い入れのある作品です。
自分の映画が昔から見てきたスクリーンでかかる、考えただけでワクワクします。こんな幸せなことはありません。どうか、この映画が多くの人に届くことを願っています。
『BOURBON TALK』は、ミヤコ蝶々一座在籍経験を持ち『言葉のいらない愛』に出演もしている俳優・沖正人さんと、音楽系を中心に映像ディレクターとして活躍する映像作家・海老澤憲一さんによる監督ユニット「コーエンジ・ブラザーズ」による作品。
その名のとおり高円寺を中心とした杉並区を拠点に活動するコーエンジ・ブラザーズの初監督作となる同作は「ある特別な夜」に1軒のバーに集まった男たちが繰り広げるドタバタ・コメディで、俳優・コメディアンの雑賀克郎(さいが・よしお)さんが主演をつとめています。
2016年函館イルミナシオン映画祭で招待上映されたほか、2018年春開催のロンドン・ワールドワイド・コメディショート・フィルム・フェスティバルではHonorable mentionを授与されるなど、国内外の映画祭で評価を受けています。
『BOURBON TALK』沖正人監督(コーエンジ・ブラザーズ)コメント
今までの僕は、人生の中で大概の事は常に笑いに変換して生きてきました
思い返せば、幼い頃からその資質は有った様な気がしますが、それを意図的に変換する様になったのは、地元の広島の高校を出て直ぐに飛び込んだ、ミヤコ蝶々一座での数年間の大阪生活が有ったからだと思います。
ミヤコ蝶々先生の教えである「普段から面白い事以外は喋るな」
まだ二十歳にもなってなかった僕に、この言葉はあまりにも衝撃的でした
そして、それから今まで、蝶々先生の、このとてつもない教えをずっと心に持って生きてきたつもりです。この映画には、ミヤコ蝶々先生の教えを忠実に守って生きてきた、僕の笑いの全てのエッセンスが含まれています。
正直、僕には映画監督の才能は有りません。
今こうして、共同監督として創作活動が出来ているのは、僕の笑いを一番理解してくれている海老澤憲一が、僕の脚本と演出を映像として最高の形で具現化してくれているからです。なので、僕は自分の事を映画監督だとは思っておりません、監督は海老さんで、しいて言うなら僕は、ただの笑わせ屋です。
この28分の作品が、観た人の心の中で、実際の時間より長く感じるのか、それとも短く感じるのか、笑わせ屋の僕としては其処だけが勝負です。
あい、から始まり、わをんで終わる、日本語の言葉の力を信じて台本を書き上げ、それを元に最強のスタッフと最高のキャストで集まり、皆で思いっきり力を合わせて完成した映画『Bourbon Talk』それでは皆様、準備は良いですか?
どうぞ最後まで、ニヤニヤしながらご覧ください。
『BOURBON TALK』海老澤憲一監督(コーエンジ・ブラザーズ)コメント
今回が初めての短編「映画」の挑戦となりました。46ページの台本が届いた時に「何とか1日で撮影できるよなあ…」というぐらい知識が無かったのです(当初、技術スタッフは心配していました)。シーンを長撮影できたのも沖さんの言葉の力です。役者のみんなは事前に集まって舞台のようにリハーサルをし、長い台詞を完璧に自分のものにしてくれました。この笑いを、真面目に、格好良く撮り、そこに違和感を持たせるということに注力しました。みんなの力でひとつの素敵な作品ができ、大きな一歩を踏み出しました。編集をしながらひとりでクスクス笑っていた様に、みなさんも笑って頂けたら嬉しいです。
多くの話題作を送り出してきた音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB2017」で上映された『BEATOPIA』は、女優として『イノセント15』(2016年/甲斐博和監督)、『聖なるもの』(2017年/岩切一空監督)、『ウィッチ・フウィッチ』(2018年/酒井麻衣監督)など主演作が続き、監督としても注目を集めている小川紗良監督の監督第2作となる作品。
鹿児島県阿久根市を舞台に、進路に悩む高校3年生の少年と、東京からドキュメンタリーの撮影にやってきた大学生のひと夏の交流が描かれていきます。東京から来た大学生・凛を小川監督が演じるほか、高校3年生の悠を瀬々敬久監督『最低。』(2017年)などに出演する佐久間悠さん、同じく高校3年生の海をラッパーの黒さき海斗さんが演じており、黒さきさんは主題歌も担当しています。
これまで『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017』で上映されたほか、松本CINEMAセレクトアワードに選ばれており、各地での好評を得ての劇場公開となります。
いずれも海外、国内で評判となっている新進・若手監督の3作品をひとつにパッケージングした『愛と、酒場と、音楽と』。すでに注目を集め今後の活躍も期待される才能のきらめきを、この機会にぜひ感じてみてください。