舞台あいさつをおこなった岩瀬亮さん、秋月三佳さん、兎丸愛美(うさまる・まなみ)さん、BOMI(ボーミ)さん、遠藤新菜さん、西原孝至監督(左より)
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ドキュメンタリーと劇映画の組み合わせで人それぞれの“生き方”を描く『シスターフッド』(3月1日公開)の完成披露上映会が2月7日にアップリンク渋谷で開催され、ヌードモデルの兎丸愛美さん、シンガーソングライターのBOMIさんら出演者と西原孝至香監督が舞台あいさつをおこないました。
『シスターフッド』は「自分がいいなと思う方に素直にカメラを向けて、いま東京で生きている女性たちの想いだったりを切り取れるような、ポートレートのようなドキュメンタリー映画が作りたいな」という想いで約4年前に取材を開始した西原孝至監督が、2018年に「#MeToo運動」で女性たちが声を上げる風潮に賛同し「自分らしく生きるということはどういうことなんだろうということを考えるような映画に作りたいなと思って」ドキュメンタリー出演者や俳優が演じる劇映画部分を追加撮影し、ドキュメンタリー映像と混在させて1本の映画へと完成させた作品。
西原監督がSNSで知り「どうしてそういう活動をされているのか」興味を持ち連絡を取って取材を始めたという兎丸愛美さんは「ドキュメンタリー部分では、(監督が)ひとりでうちに来たり、友達の家に来たり、ひとりでカメラを片手に撮影していただけたので、そのおかげで自然体の自分でいられたのかもしれないですね。最初から構えることがなく、初めて会ったときから心は開いていたのかもしれないです」と西原監督による取材についてコメント。
兎丸さんは劇映画部分にも本人役で出演しており「本人役を演じることになって、私もどんな気持ちで挑んだらいいのかわからなかったんですけど、それを監督に伝えたら“そのままでいいよ”とおっしゃってくださったので、あんまり演じている気持ちにはならなかったですね。でも作品を観てみると兎丸愛美を演じている自分もいて、ちょっと不思議な感覚になりました」と、自分自身を“演じた”印象を語りました。
ライブを観た西原監督が「表現する喜びみたいなのを感じている表情をされていて、すごくいいなと思って」一番最初にコンタクトを取ったというBOMIさんは、ベッドの上でカップラーメンをすするなど、まさに日常のBOMIさんが映し出されていることについて「あんまり見せちゃいけない部分を見せている気がして(笑)。もうちょっとカッコよく映ればよかったなって」と話して会場の笑いを誘いました。
BOMIさんはドキュメンタリー部分のみの出演で、完成した映画について「お芝居のパートの役者のみなさんも、たぶんちょっとリアリティ寄りにお芝居をされてたりすると思うので、すごく不思議な感覚です」と感想を述べました。
劇映画部分で大学生の美帆を演じた遠藤新菜さんとモデルのユカを演じた秋月三佳さんは、西原監督の2014年の劇映画『Starting Over』にダブル主演して以来の西原監督との縁。
遠藤さんは、ドキュメンタリーと劇映画が混在する作品であっても「“西原さんの撮り方だな”って特に変わりなくて、私はドキュメンタリー(への出演)じゃないからっていうのもあるかもしれないんですけど、全然違うというよりかは“あ、懐かしい”ってホッとする感じでした」と、西原監督の現場は馴染みやすかった様子。
西原監督が「普段ぼくがテレビのドキュメンタリーのディレクターをしているので、作られたお芝居というよりかは、もちろん遠藤さんなら美帆という役を演じてもらってはいるんですけども、まず遠藤さんに興味があってお願いしているというところがあるので、遠藤さんが映画の中で遠藤さんらしくいていただけるような空間を作るのが仕事だと思っているので“こうしてください”というよりは、ぼくがいいなと思っている遠藤さんの感じが出るように見守っていたような気がします」と撮影時のスタンスを語ると、遠藤さんも「先回りして心地よい環境を作ってくださるところがあります」と監督の印象を語りました。
秋月さんは、以前の『Starting Over』も「ドキュメンタリーなのか劇映画なのかみたいな」現場だったため、今回も「“ああ、西原さんの撮影にいるな”という感じだったんですけど」と語るとともに、秋月さんが演じたユカが“表現する仕事”を続けている兎丸さんやBOMIさんやとは別の生き方を選ぶ設定の役のため「現実的なメッセージがあるなと思っていて、お客さんも共感してもらえたらいいなというか、カメラの位置とかも客観的に撮ってもらっているなというのがあって、ムズムズしながらもやっていました」と振り返りました。
遠藤さんや秋月さんら俳優陣がナチュラルな演技をしていることについて西原監督は「“ドキュメンタリーと劇映画”というふうに、いまぼくもずっと言っていたんですけど、ぼく自身はそこにそこまで違いを感じているわけではなくて、劇映画を撮ったとしても、たとえば遠藤さんが演じているにしてもそれは遠藤さんのドキュメンタリーというふうにも言えるわけですし、ドキュメンタリーとして一般の方を撮らせてもらっているにしても一般の方がもしかして自分自身を演じているかもしれない。それは兎丸さんの(自分自身を演じるという)話にもつながると思うんですけど、そういった狭間みたいなところに表現の可能性みたいなものを感じているので、こういったかたちで映画を作りました」と意図を語りました。
岩瀬亮さんが演じた池田は、西原監督自身を思わせるようなドキュメンタリーの映画監督という設定。西原監督は、ドキュメンタリーと劇映画を混在させるにあたり監督自身も「それが成立するかな」という疑問があったため「作品を貫く存在としてひとりの登場人物を考えたときに、自分をすべて投影しているわけではないんですけど、映画監督役を登場させることが作品として素直になるんじゃないかと」考えて役を作ったと説明し、岩瀬さんが出演している日韓合作映画『ひと夏のファンタジア』(2014年/チャン・ゴンジェ監督)を西原監督が好きなことが出演を依頼する理由だったと明かし「参加していただけて嬉しく思っています」と、岩瀬さんに感謝の意を示しました。
岩瀬さんは、実際の監督である西原監督がいる状況でドキュメンタリーの監督・池田を演じるという構造は「考えだすと難しいこともあったり」と話しつつ「たぶん大事なのは、監督が脚本として書いてくださったので、そこをちゃんと集中してこの戯曲に向きあえば、西原監督の思っていることとかも自ずと出せるんじゃないかなみたいなことを考えて、あんまり構造的なことは気にせずにやりました」と複雑な設定の中での演技についてコメント。また、リアリティを出すため西原監督を研究したかを尋ねられると「そういうことも特になく、必要だったら監督がおっしゃってくださるんじゃないかなと思って、そこは(監督を)信頼して。ただ、(池田が)インタビューを撮るシーンとかがあって、ぼくはそういうことをしたことはなかったので、実際にインタビューを撮るときに監督はどういうことを心がけているのかとか、そういうことはお聞きしましたね」と振り返りました。
トーク中の岩瀬亮さん、秋月三佳さん、兎丸愛美(うさまる・まなみ)さん、BOMI(ボーミ)さん、遠藤新菜さん、西原孝至監督(左より)
舞台あいさつは、登壇者ひとりずつのメッセージで締めくくられました。
「いろいろ話をしましたけど、ほんとに、ただ浴びるように観ていただいて、感じていただければなと思います」(岩瀬亮さん)
「おふたり(兎丸さんとBOMIさん)、ドキュメンタリー部分がすごく素敵で、夢があって、憧れちゃうような姿がたくさん映っていて、私はすごく好きです。ごゆっくり最後までお楽しみください」(秋月三佳さん)
「たぶん、観終わっていろいろな感想があると思うんですけど。自分の幸せとかを少しだけでも考えていただけたら。そういうきっかけになる映画だと思うので、ぜひごゆっくりご覧ください」(兎丸愛美さん)
「私がこの映画を観て感じたのは、いろんな意味でモヤモヤした感情だったんですけど、みなさまなにかしらたぶん感じる感情があると思うんです。感想を終わったあとに話すことで成立するような映画な気がしていて、もしよかったら、なにかで感想を教えていただけたら嬉しいなと思います」(BOMIさん)
「私が自分の役を演じているときに考えていたことが、自分にとっての正解を見つけられればそれでいいんだってことを一番意識していて、人にとっては大したことじゃないかもしれないことが自分にとってはすごく大きい一歩だったりするじゃないですか、そういったことを出ている全員が、ほんとにすごく魅力的な方々が出ているので、(その中の)誰かひとりでもいいから“こうなりたい”とか“これって素敵だな”とか、そういうふうに思えたらすごくいいなと思います」(遠藤新菜さん)
「ほんとに、大好きなみなさんの魅力的な表情だったり言葉を載せたいと思って撮影をしておりました。自分自身の幸せについて、ぼくも考えながら撮影していたので、どうぞ観ていただく方にもご自分の幸せについて考えながら観ていただけたらなと思います。3月1日金曜日から公開されますので、SNSなどなど、発信していただけると嬉しいです」(西原孝至監督)
モノクロームの映像に映し出される生きづらさを抱える女性たちの姿を通して、性別や立場によらない多様な行き方を示す『シスターフッド』は、舞台あいさつ登壇者のほか、戸塚純貴さん、SUMIREさん、栗林藍希(くりばやし・あいの)さんらが出演。3月1日(金)よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開されます。