舞台あいさつをおこなった監督と出演者。前列左より、聡太郎(そうたろう)さん、川村ゆきえさん、青柳尊哉さん。後列左より、五藤利弘監督、鈴木トシアキさん、椋田涼(むくた・りょう)さん、内藤忠司さん
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世間の注目を集める女性議員と彼女を取材するドキュメンタリーディレクターを主人公にした『美しすぎる議員』が3月16日に下北沢トリウッドで初日を迎え、ダブル主演の川村ゆきえさんと青柳尊哉さん、五藤利弘監督らが舞台あいさつをおこないました。
『美しすぎる議員』は、人気タレントから政治の道へ転身し“美しすぎる議員”と評判の市会議員・田中愛と、田中愛の裏の顔を暴こうと密着取材を続けるドキュメンタリーディレクター・村上一朗の姿を通して、なにが“真実”なのかを問いかける作品。
主人公の田中愛を演じた川村ゆきえさんは、立ち見も出た満員の客席を前に「1年半ほど前に撮りまして、ようやくこうして初日を迎えることができました。嬉しいです」とあいさつ。
劇中で川村さん演じる田中議員が議会で質問するシーンは、ロケ地の議会の協力を得て実際の議場で本物の議員もエキストラとして参加して撮影されており、川村さんはそのシーンについて「ほんとに緊張しましたね。みんなの視線が鋭くて怖くなっちゃったんですけど、けっこう(田中愛の質問が)強い感じの発言という感じで、気にしない素振りでがんばりました」と振り返りました。
もうひとりの主人公・ディレクターの村上一朗を演じた青柳尊哉さんは、客席との距離が近いトリウッドでの舞台あいさつに「トリウッドという場所を知っていたので、大変なことになるなと思っていましたけど、すごい光景ですね(笑)」と笑顔。
『美しすぎる議員』は実際にテレビドキュメントなども手がける五藤監督が自ら企画した作品で、劇中の描写には監督の経験が反映されているのではと思わせる部分も。青柳さんは、村上が田中愛をはじめ取材相手を怒らせる役柄であることについて「五藤さんが普段から辛辣なものを世間から浴びている状況を肌で感じる瞬間が」と話し、取材相手が嫌がる質問をするのは、演技であっても「メンタル的にはけっこう来ますよね」と感想を述べました。
村上とともに取材をするカメラマンを演じた聡太郎さんも「ぼくも“カメラを止めろ!”みたいなことを言われて」と、劇中で取材相手に怒鳴られるシーンがあることに触れ、青柳さんは「でも“カメラを止めるな!”って」と、昨年の話題作を思わせる発言を返して笑いを誘いました。
五藤利弘監督は「劇中でカメラマンが撮っている映像がたまに出るんですけど、ほんとに聡太郎さんと青柳さんに撮ってもらったのをいくつか使わせてもらったりしています」と明かし「どこがおふたりが撮った映像なのか1回じゃわからないと思うので、必ず探し当ててください」とアピールしました。
村上の上司にあたるプロデューサーを演じた鈴木トシアキさんは、五藤監督がプロデューサー像にこだわりを持っていたため「現場でけっこう話し合って、そこはけっこう大変でしたね」と話し「かなりムカつく役なので“こいつムカつく”って思ってくれたら嬉しいです」とコメント。
田中愛に相談する女性の父親を演じた椋田涼さんは、普段は悪役が多い中で初めての父親役で、しかも悩みを抱えた女性の父親という設定に「かなり自分の中でハードルが」高いと感じていたそうで「初めてのチャレンジでよかったなと自分では思っていて、若干あたたかい目でぼくのお父さん役を観ていただければと思っていますので」と役について語りました。
市議会議長を演じた内藤忠司さんは、今回の役では「なにもしない、ただいるだけ」を心がけていたと話し、青柳さんが「あの感じが嫌だったよね。心が動かない」と内藤さんの役の感想を述べると、川村さんや聡太郎さんも「ああいう人いるねって」と同意。青柳さんはさらに「俺たちがやったら余計なことしかしないから」、聡太郎さんも「なんでもやっちゃう。やたら書類めくると思う」と内藤さんの「なにもしない」演技を絶賛し、川村さんも「私以外みんな空気みたいな感じだから」と、あえて周囲の俳優陣がキャラクターが立たない演技をしていることを語り、青柳さんは「俺、あのシーンすごく好き」と演じる立場から印象を語りました。
舞台あいさつは、登壇者それぞれのコメントで締めくくられました。
「田中愛の密着ということで、(田中愛は)タレントをやっていて議員になったということで、かなり“いい顔”をいっぱいするんですけど、どこが本当で“この人なに考えてるんだろう?”って観る方も思いながら終わっていくと思うので、少しでも私の心境がみなさんに感じ取っていただけたら嬉しいなと思います。そしていっぱい広めてください」(川村ゆきえさん)
「『美しすぎる議員』というタイトルの台本をもらって“どうしたらいいかな?”ってすごく思ってやっていたんですけど、やっぱり隠している部分とかを人は見たいんだなってすごい思うし、真実がどこにあるとか、綺麗事みたいなことってすごい叩きがいがあって、田中愛議員って叩きがいがあるんですけど、でも世の中ってそんなことにしか溢れていないような気がするんですよね。そういうことをぼく自身、村上を通してつきつけられたなと思いますし、いまだに映画を上映するとかものを放映するということに対して難しいことが多いから、なにかそういうことを考える1個目になったらいいのかなって少し思ったりします。いろんな意見があっていいと思いますし、これを観て否定的な意見が出てくるのが正しいことだと思うので、ぜひいろんな意見を聞かせていただければなと思っていますので、じゃんじゃん拡散してください。公式のツイッターがいいも悪いも全部、ものすごい勢いでリツイートしに行きますので(笑)」(青柳尊哉さん)
「はい、ほぼほぼ青柳さんと同意見でございます(笑)。先ほど監督もおっしゃっていましたけど、ぼくたちが撮った映像が実際に使われていますので、ぜひどのカットがぼくたちが撮ったやつなのかを何度か観ていただいて当てていただけたらなと思います。ちなみにぼくは何回観てもわかってません。(監督に)ちょっとブレてるのがぼくですよね?」(聡太郎さん)
「なにかのテレビなんかで見たんですけど、アンケートで信用できない職業の1位が政治家で、2位がマスコミらしいんです。そのふたつがこの中に描かれているんですよね。そういう意味で言うとすごく冒険的というか挑戦的な作品だなというのをけっこう思っていました。なんとなくご時世もそっちのほうに寄ったかなって、ちょうどいいタイミングでの上映かなと私は思っています。ぜひ楽しんでいってください」(鈴木トシアキさん)
「ご時世もたしかにこのそういう時期に寄っているのかなというところと、あとはこのメインの3人がすごくチームワークもよくがんばっていたなあというふうに私なんかは見ていたのと、みんな一丸となってがんばったので、そのへんであたたかい目で観ていただいて、拡散していただければと思います」(椋田涼さん)
「パンフレットにも書いたんですけど、わりと結末は観客のみなさんに委ねるかたちになっていますので、これを観てですね、ちょっと考えることをしていただければと思います。パンフレット好評発売中です」(内藤忠司さん)
「始まる前にこんなに盛りあがっていただいて申し訳ないんですけど、盛りあがる映画ではないので(笑)。ぜひツイッターで盛りあげてください。ほんとに、いまはぼくらがフィクションを作るより政治がいろんな意味で面白いんじゃないかなって。“このなんとかー”とか、ぼくらが作りあげるキャラクターより濃いキャラクターがいっぱい出てきているので、ぼくら負けちゃいけないなと思って作りました。そんなところを観ていだければと思います」(五藤利弘監督)
ドキュメンタリーのような映像も交えつつ、映像が伝えるものの意味を描いていく『美しすぎる議員』は、3月16日(土)より下北沢トリウッドにて2週間限定上映(火曜日休映)のほか、全国順次公開予定。トリウッドでは初日以外も上映期間中に監督・キャストによるトークイベントが予定されています。