舞台あいさつをおこなった山中さわおさん(the pillows)、岡山天音さん、オクイシュージ監督(左より)
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ロックバンド・the pillowsの結成30周年を記念して製作された『王様になれ』を上映中のシネマート新宿で、主演の岡山天音さんとオクイシュージ監督、the pillowsのボーカルで映画の原案もつとめた山中さわおさんが公開記念舞台あいさつをおこないました。
『王様になれ』は、今年の9月16日に結成30周年を迎えるthe pillowsのアニバーサリーイヤープロジェクト「Thank you, my highlight」の一環として製作された作品で、山中さわおさんの原案を俳優や舞台演出家として活躍するオクイシュージ監督が脚本も担当して映画化。ラーメン屋で働きながらカメラマンを目指す青年・神津祐介が、劇団員の女性・藤沢ユカリとの出会いをきっかけにthe pillowsの音楽に惹かれていき、失敗や挫折を経験しつつもカメラマンとして活躍していく姿が、the pillowsの楽曲に乗せて描かれていきます。
熱狂的なファンの多いthe pillowsの映画とあって、上映終了後に岡山天音さん、オクイシュージ監督、山中さわおさんが舞台に登場すると客席からはライブ会場さながらの歓声が起こり、主人公の祐介を演じた岡山さんは「どんなテンションであいさつすればいいのか、ちょっといま戸惑っているんですけど(笑)」と笑いながら「3月に撮影していまして、半年ほど今日まで経ったんですが、オクイ監督のもと、みんなでピロウズファンの方にちゃんと届く作品にするべく、とにかく日々撮影に臨みました。こうやってようやくみなさんに観ていただけて嬉しく思います」とあいさつ。
そして司会者に勧められて岡山さんは「映画、面白かったですか?」と客席に質問。大きな歓声や「最高!」の声、拍手に岡山さんは「普段、こういうのを主演の方がやっているのを横で見ているばかりなので、ちょっと緊張しましたけど、やれてよかったです」と笑顔で語りました。
山中さんも、客席の盛り上がりに「そういう感じ?」と笑顔を見せ「ほんとに実現したんだなっていう。2017年の冬にアニバーサリーなにしようかなということで、いろいろ考えて、映画を作ってみたいということでオクイ監督に相談に行って、ほんとに実現して、上映が始まって、そしてこんなに集まってるじゃないか! 嬉しいです、ありがとうございます」とコメント。
祐介が働くラーメン店の大将役で出演もしているオクイ監督は「ほんとに上映って始まるんですね(笑)、撮っているとき、編集しているとき、作っているので楽しいし、なんかこのまま上映しなくてもいいんじゃないかなっていうくらいの気持ちになっちゃったんですけど、こうやってみなさんに観ていただいて、さっきさわおくんが言いましたけど、2017年にさわおくんとふたりで三軒茶屋の居酒屋で話して始まった企画で、ほんとにこういう日を迎えられて感無量です」と心境を語りました。
舞台あいさつ冒頭であいさつする山中さわおさんと、岡山天音さん、オクイシュージ監督(左より)
映画の原案・音楽に加えて本人役で出演もした山中さんは「ほとんどのことが自分で現実に何百回も言ったことある」ようなセリフだったため「お芝居をしたというような感じではなかったです。キャストのみなさんも監督も、みんなやりやすいように助けてもらって誘導していただいたので」と話す一方で、主人公・祐介を厳しい口調で怒るシーンについては「怒ったところは違いますよ(笑)」と、現実の山中さんとは違うと強調。オクイ監督も、実際にはそんなに怒らないという山中さんに「ドーンと行ってくれと」要望したと話しましたが、オクイ監督は「そしたら俺が想像したより上から来たんだよね。本物すげえなあ(笑)」と付け加え、場内の笑いを誘いました。
その場面で怒られた側の岡山さんも「(そのシーンのことは)あんまり覚えてないですね、怖すぎて(笑)」と監督に話を合わせつつ、山中さんについて「メチャメチャ優しい方ですね。初めて会ったのが赤坂のライブに行かせていただいたときで初対面だったんですけど、しょっぱなから優しい方なんだなというのが目から伝わってくる感じでした」と印象を語りました。
また、映画にはthe pillowsと親交のある多くのミュージシャンが本人役で出演しており、山中さんは「わりとみんな二つ返事で“やります”みたいな感じで」山中さん直接の出演依頼を引き受けてくれたと話し、ライブのシーンに出演しているGLAYのTERUさんについて「けっこう丁寧に長い文章で(メールを)送ったら、けっこうすごいスピードで“やったー、銀幕デビュー!”みたいな軽い返事が来て、GLAYのオファーってこんなふうに決まるんだってビックリした」と裏話も披露。
オクイ監督は、そのTERUさんが出演するライブのシーンはカメラ位置を変えて何度も撮影する都合上、録音した音に合わせてもらう予定だったのが「TERUさんは何回も本気で歌ってくれたんですよね。それは感動しました」と現場でのエピソードを紹介しました。
本人役のミュージシャンの中でもストレイテナーの日向秀和さんとナカヤマシンペイさんはセリフのある演技をしており、山中さんは「あのシーンは原案(の段階)でぼくが考えていて、そのときにすでに本人の了承を得ずにこれは絶対にストレイテナーのひなっち(=日向さん)がいいと」考えていたと話し「ちょっとチャーミングさが出るキャラクター」がよかったと日向さんをイメージした理由を説明。
岡山さんはミュージシャンとの共演について「なんかズルいなと思いましたね、あれだけ本職(の音楽)でバシバシやっている方がお芝居もできるのかって。あと、やっぱりミニター越しに見ているとミュージシャンの方たちはみなさん華があって」と感想を述べました。
山中さんは、主演の岡山さんの印象を司会者に質問されると「ぼくが言うのもあれなんですけど、お芝居がうまい方だなと思っていましたし」と答えるとともに「たぶん、25年くらい前の俺にすごく似ていると思うんだけど、(客席に向かって)みんなもそう思うよね? それもあって愛着がある。要するに、祐介も若いときの自分のようなキャラクターなので、それがしっくり来ると思って」と話し、岡山さんは「ほんと恐縮です。ファンのみなさんの前で言っていただけると、ほんとに恐縮しますね」と感謝。
劇中では祐介がthe pillowsのライブ会場でステージの写真を撮影するシーンもあり、実際のthe pillowsのライブ会場でライブ後に観客の方にも参加してもらって撮影したそのシーンについて岡山さんは「そういう熱気の中で実際に撮影する機会ってなかなかないので、ものすごくパワーをもらいましたね。ピロウズさんがステージにいて、客席側にリアルなバスターズ(the pillowsのファン)のみなさんがいて、その間でぼくは撮るので、そこに挟まれながらすごい高揚しましたね」と振り返りました。
劇中で使われるthe pillowsの楽曲は、山中さんの原案でラストに流れる曲などが数曲挙げられていたほかは脚本を書くオクイ監督に選曲が任されていたそうで、オクイ監督が「どれを選ぶというのが苦渋の決断というか、使う曲によって展開も変わってくるような構成のお話なので、ひじょうにそこは困難を極めました」と苦労をうかがせると、山中さんはオクイ監督が山中さん自身も存在を思い出せなかったような「93年とかにファンクラブに無料配布した曲のカップリング曲」まで探したことを紹介し「それくらい(the pillowsの曲を)全部聴こうとしたんだなって」と、オクイ監督のthe pillowsへの思い入れと作品づくりへの姿勢を感じさせました。
山中さわおさんはフォトセッションの際に劇場で販売しているTシャツをポーズを決めてPR
曲だけでなく、the pillowsや山中さんのインタビューなどにも可能な限り目を通して映画の参考にしたというオクイ監督は、山中さんのインタビューの中の「キャッチボールをする相手が興味のない方だといくら投げても受け止めてくれない。でも地に足がついてないとむやみに投げてしまう。そして勝手に傷ついてしまう」という言葉を紹介し「この映画は誰に向けて作ればいいんだろうかというのをずっと考えているときに、すごくその言葉が残っていて、その言葉を大事にしながら作ったんですけど、今日、ご覧になってくれたみなさんの中で、なにかが響いた方は、きっとその方に向けてこの映画を作ったんだとぼくは思っております。なので、その受け取ったボールを、誰か身近にいる受け取ってくれる方に投げてもらって、少しずつでもこの映画が広がっていくと思っています」とメッセージを送りました。
岡山さんは「撮影が終わってからもピロウズさんの曲を聴いているんですけど、やっぱりとってもカッコいいバンドだなというのを感じていて、個人的にはぼくも単独では長編映画初主演で、そういう初主演というぼくの人生にとっても一度しかない機会が、このピロウズさんの記念すべき作品であったことをほんとに嬉しく思います。30周年アニバーサリー映画という節目に作られた作品で、これからみなさんの節目とかそういうときに観返したくなる映画になっていたら嬉しいなと思います。ほんとに今日はみなさんに観ていただけて嬉しく思います」と、公開を迎えての想いをコメント。
最後に山中さんは「ここは自分ちょっとの強みなのかなって思うのが、神経質なところもあるんだけど、すごく鈍感力もあって、映画を作りたいとか、たぶんちょっと鈍感力があったから怖いもの知らずで“できるはずだ”と思って決断をして、オクイさんに全部丸投げすればなんとかなるなって思っていたんだけど(笑)、まあロックバンド、そういうところが大事で、高校生ぐらいのときから“俺は絶対に才能がある”と思って、でもいまそのころの音楽聞いたら、ひどい曲のひどい歌唱力で、全然才能なんか感じられない。でも、勘違い力とか鈍感力がちょうどよくあって、それで今回も、いま思ったら無謀なことだったというか、こんなにちゃんとした映画になるとはぼくも最初は思ってなかったし、そこはほんとにオクイ監督をはじめ、天音くんをはじめ、キャストとスタッフの方々に助けていただいてというか、その人たちの力が99%でできたなという感じでした。なんか、そのちょっと鈍感力を持って、アニバーサリーライブ、横浜アリーナでやるので、そこに立ちたいと思っています。よろしくお願いします」と、映画が完成しての想いと来月開催のライブへの意気込みを語り、舞台あいさつを締めくくりました。
主演の岡山天音さんのほか、ヒロイン役に後東ようこさん、祐介の師匠になるカメラマン役に岡田義徳さんらが共演、多数のゲストミュージシャンも登場する『王様になれ』は、9月13日(金)よりシネマート新宿にて公開中ほか全国順次公開。シネマート新宿ではthe pillows結成30周年当日の16日に、山中さわおさん、真鍋吉明さん、佐藤シンイチロウさんのthe pillowsメンバー全員によるトークイベント、18日には岡山天音さん、岡田義徳さん、オクイシュージ監督によるトークイベントも開催されます。