津田寛治さん、短編映画で若手俳優と「疾走」 『RUN -3films-』初日舞台あいさつ
前列左より、松林慎司さん、木ノ本嶺浩さん、篠田諒さん、黒岩司さん。後列左より、土屋哲彦監督、津田寛治さん、須賀貴匡さん、佐野大樹さん、笠原紳司さん、龍坐(りゅう・すわる)さん、畑井雄介監督
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各地の映画祭で好評を得てきた3本の短編を集めたオムニバス『RUN! -3films-』が11月2日に池袋シネマ・ロサで初日を迎え、篠田諒さん、木ノ本嶺浩さん、松林慎司さん、黒岩司さん、津田寛治さんら出演者と土屋哲彦監督、畑井雄介監督が舞台あいさつをおこないました。
『RUN! -3films-』は、今後の活躍が期待される若手俳優を主演に迎えて2014年から2016年にかけて制作された3本の短編を集めたオムニバス映画。深夜のコンビニでの店員と強盗の出会いが予想外の方向に進む篠田諒さんと木ノ本嶺浩さん主演・土屋哲彦監督の『追憶ダンス』、不思議な力を持った親子と死体処理を生業とするヤクザの“共存”を描く松林慎司さん主演・畑井雄介監督のSFドラマ『VANISH』、30歳を過ぎても夢を諦めない売れない俳優が現実と幻想の狭間をさまよう黒岩司さん主演・土屋哲彦監督の『ACTOR』という、いずれも各地の映画祭で受賞するなど話題となった3作品で構成されています。
レイトショーの上映にもかかわらず満席でのスタートとなり、各作品の主演をつとめた俳優陣は「映画は観ていただいて完成するものなので、今日、完成できてほんとに嬉しいです、ありがとうございます」(篠田諒さん)、「初日満席で迎えられてほんとに幸せでございます」(木ノ本嶺浩さん)、「この日を待ちわびていまして、こんなにいっぱいのお客さんに観ていただけてほんとに幸せでございます」(松林慎司さん)、「この日を迎えるにあたって、プロデューサー、監督、キャストも含め、チラシを撒いたりして地道に宣伝活動をおこなってまいりました。本日はほんとにありがとうございます」「黒岩司さん)と、それぞれあいさつ。
2作品のメガホンをとった土屋哲彦監督は「みんなで純粋に面白いものを作ろうということがきっかけで始めた作品が、時間をかけてこうして公開までこぎつけて、これだけたくさんの人に来てもらえて、ほんとに感激しています」と初日を迎えての心境を語りました。
短編3作品それぞれで主演をつとめた松林慎司さん、木ノ本嶺浩さん、篠田諒さん、黒岩司さん(左より)
3本の短編すべてに出演している津田寛治さんは、現場の様子を「映画のタイトル通り、走り抜ける感じはありましたね。限られた期間と限られた状況の中でやらせていただいて」と、タイトルの『RUN!』に絡めてコメント。
津田さんはさらに、この作品が「これからの若い俳優を世に出すために主役で映画を撮ろう」という趣旨でスタートしたと説明すると「とにかく、主役のこれからの俳優たちのケツをみんなで叩きながら“お前、歩いてる場合じゃないだろ、走れ!”みたいなところがありまして、それで『RUN!』というタイトルなんですが、ぼくの中では“走る”という意味もあるし“乱れる”(乱=らん)という意味もあってね。“自分の恥ずかしい部分も全部さらけ出せよ、隠してる場合じゃないだろ、全部出せ!”という“乱れまくってほしい”っていう気持ちもあるし、嵐の“らん”でもあって“乱れさせて嵐を呼ぶ”っていう」と、タイトルに込められた想いを語りました。
すると木ノ本嶺浩さんから「(お客さんが)観る前でアレなんですけど、津田さんがだいぶ乱れてます」、篠田諒さんも「『津田寛治のRUN!』って名前で」と、津田さんの現場での様子をうかがわせる発言が飛び出し、津田さん自身も「現場に行ったら乱れちゃう感じですね」と答えて客席の笑いを誘いました。
そんな篠田諒さんと木ノ本嶺浩さんは、主演作『追憶ダンス』で演じた役が「底辺の役」だったため、篠田さんは「そういうのがにじみ出てほしいと思ったので、言葉って力があると思うので、毎日、鏡を見て自分に罵声を浴びせるというのをひたすら続けていました。心も荒みきりましたね」、木ノ本さんは「ぼくは家に引きこもっていました。その前に衣裳を準備してもらっていたので、衣裳を着てずっと家で体育座りをするという」と、役に入り込むためのユニークな努力を紹介しました。
『追憶ダンス』でコンビニ店員・鈴木を演じた篠田諒さん
『追憶ダンス』で強盗の佐藤を演じた木ノ本嶺浩さん
『VANISH』で主人公の男を演じた松林慎司さん
3作中唯一のSF『VANISH』主演の松林慎司さんは、不思議な力を持つ正体不明の男という役を演じるにあたり、どういうものを参考にすればいいかを畑井監督に尋ね「『第9地区』(2009年/ニール・ブロンカンプ監督)という映画をとにかく観てくださいということで、それを観てなんとなくヒントを得て、あとは畑井さんに身を投じたという感じです」と振り返りました。
畑井監督は、今回の短編『VANISH』は構想している長編映画のパイロットフィルムとして作ったと話し「パイロットフィルム18分なんですけど、(ストーリーの)前後がそんなに描いていないというか、途中の間を描いてもらうにあたって、おふたり(=松林さんと津田さん)に過去と未来を想像してもらって演技してもらったのが完璧に演技してもらったので、ぼくとしては嬉しかったと思いました」と、ふたりの主要キャラクターを演じた松林さんと津田さんの演技を賞賛しました。
2作のメガホンをとった土屋哲彦監督と『VANISH』の畑井雄介監督、津田寛治さん、松林慎司さん(左より)。舞台あいさつでは『VANISH』チームが作品の設定を確認しあう一幕も
売れない俳優が主人公の『ACTOR』主演の黒岩司さんは「当時(2014年)のぼくのドキュメンタリーに近いものになっていますので(笑)」と作品を紹介。
土屋監督は、舞台の仕事でまとまったギャラを手にした黒岩さんが、そのギャラで自分主演の映画を作ってほしいと言い出したことが『ACTOR』制作のきっかけだったと明かし、金額的にそのギャラで映画を作るのは無理だったものの「なにかやろうかと、いろいろな人の力を借りて」半年間にわたるワークショップをおこない、そこで先輩俳優に囲まれて奮闘する黒岩さんの姿を見て『ACTOR』のストーリーを作ったと作品の成り立ちを説明しました。
警官・ヤクザなど3作品で多彩な役を演じた津田寛治さん
『ACTOR』で主人公の売れない俳優・山田を演じた黒岩司さん
『ACTOR』で山田のバイト先の店長を演じた須賀貴匡さん
『ACTOR』CMディレクター役の佐野大樹さん
『ACTOR』でカメラマンを演じた笠原紳司さん
『ACTOR』で映画監督を演じた龍坐さん
ワークショップを経ての映画作りについて、劇中で映画監督を演じた龍坐さんは「現場行ってよーいドンでやるような感じじゃなくて、みんなでいろんなことをとにかくやって始まった映画だったので、面白かったですね、ただ単に出しあいじゃなくて、もう少しインプロ(即興)の要素っていうか」と感想を。
そしてカメラマンを演じた笠原紳司さんが「自分が若いときに最初に怒られた方をイメージしましたね、印象に残るんで」と役作りについて話すと、津田さんが「東映だよね」、木ノ本さんが「だいたい誰だかわかりますよね(笑)」とそれぞれ一言。
CMディレクターを演じた佐野大樹さんは、津田さんに「リアルだし、最高だよね」と絶賛され「ハードル上げないでください(笑)。等身大でやらせていただきました」と照れ笑い。
黒岩さんが演じる主人公を嘲笑いキツい言葉をかけるバイト先の店長を演じた須賀貴匡さんは、演じた役を自ら「クズ人間ですね」と評すると「あまり(他人に)怒ったこともないので、難しかったです」と話しましたが、津田さんはさり気なく「俺、昔怒られたよ君に」。
須賀さん演じる店長につらく当たられる演技の多い黒岩さんは「ほんとに胸を貸していただいた感じで、津田さんとのシーンもそういった部分がたくさんあるので、楽しみにしていただきたいと思います」と、作品への期待を高めました。
『VANISH』のメガホンをとった畑井雄介監督
『追憶ダンス』『ACTOR』の土屋哲彦監督
劇中同様の軽妙なやりとりを見せた木ノ本嶺浩さんと篠田諒さん
舞台あいさつは、土屋監督、畑井監督、津田さんのメッセージで締めくくられました。
「もともと商業映画として始めたものではなくて、ほんとにたくさんの人に助けられて作品ができて、さっき篠田も言いましたけども、観ていただいて完成だと思いますので、今日は一生忘れることのできない日だと思います。ほんとにありがとうございます」(土屋哲彦監督)
「ぼくは20歳から映画の世界に入って、いま38歳で18年くらいやってたんですけど、途中で諦めようとか思っていた時期もありつつも、いまこうやってみなさんに観ていただけることが嬉しいです。先ほども言いましたけど、これは長編映画を目指して作っていますので、今後、長編ができるようにがんばりたいと思います。そして、この作品でみなさんの胸になにかを残せたらいいなと思っております。今日はありがとうございます」(畑井雄介監督)
「作ってるときは、わけもわからず疾走しながら作っていましたけれども、こうやって公開を迎えるにあたって、お客さんに観ていただくということのありがたみというんですかね、それをいまひしひしと感じております。いろんなお客さんに観ていただきたいんですけど、特に映像制作を目指している方であったり、俳優さんの卵であったりする方に観ていただいて“なんだ、これだったら俺でも作れるよ”とか“こんな芝居だったら俺のほうがいい芝居できるよ”でもいいし、なんか感化されて、その人たちがまた新しい素晴らしい日本映画を作っていただくのも嬉しいし、この映画を観て“ああ、俺もなんか映画作りみたいなのに参加してみたいな”とか思っていただくのも嬉しいなと思っております。そんな感じの映画だとぼくの中ではとらえております。いろんなとらえ方がありますのであまり言ってもアレですけれども、ほんとに今日はこんなに大勢の方に来ていただいて、みなさんありがとうございます」(津田寛治さん)
『ACTOR』出演の須賀貴匡さん、佐野大樹さん、笠原紳司さん、龍坐さん(左より)
まったく異なったテイストの3本で主演の4人をはじめ出演俳優陣の魅力が存分に発揮されたオムニバス『RYN! -3films-』は、池袋シネマ・ロサにて11月2日(土)より8日(金)までレイトショーほか全国順次公開。池袋シネマ・ロサでは、公開期間中、連日キャストや監督によるトークショーがおこなわれます。
RUN! -3films-
2019年11月2日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開