舞台あいさつをおこなった佐藤快磨(さとう・たくま)監督、山中聡さん、宇野愛海(うの・なるみ)さん、落合モトキさん、堀春菜さん、細川岳さん(左より)
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宇野愛海さんが新人理学療法士を演じた短編『歩けない僕らは』が11月23日に新宿K's cinemaで初日を迎え、宇野さんと共演の落合モトキさん、堀春菜さん、細川岳さん、山中聡さん、佐藤快磨監督が舞台あいさつをおこないました。
『歩けない僕らは』は、病気や怪我などの回復期に集中的にリハビリテーションをおこなう“回復期リハビリ病院”が舞台。新人理学療法士の宮下遥が、若くして左半身麻痺となった患者・柘植篤志を担当する中で、迷いや悩みを抱えつつも進むべき道をたしかめていく姿が描かれていきます。今年開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019で国内コンペティション短編部門で観客賞を受賞するなど高評価を得ての劇場公開となり、佐藤快磨監督の初長編でPFFアワード2014で2冠を獲得した『ガンバレとかうるせぇ』も同時上映されています。
主人公・宮下遥を演じた宇野愛海さんは、実際の回復期リハビリの現場でリハビリについて学んだ上で撮影に臨んでおり「本物の理学療法士さんに、患者さんとの距離感が大切だというお話を聞いて、普段から(距離が)近すぎてはいけないと思って」患者の柘植を演じた落合モトキさんとは、撮影現場では挨拶を交わす程度でほとんど会話をしなかったそう。
落合モトキさんは、現場で宇野さんから話しかけられなかったことについて「(嫌われていると)思ってました(笑)」と冗談も交えつつ「そこで慣れ合いがあってもこの作品としては別にプラスにならないんじゃないかと思っていたから、(会話がないのも)それはそれでプラスなんじゃないかなと」思って受け入れていたと振り返りました。
また宇野さんは、映画のポスターなどにも使われている柘植と向き合うシーン(※記事最後のスチール画像参照)は「うしろで本物の理学療法士さんと患者さんがリハビリされている中で、結構思い切ったことを言うシーンだったので」場面としては緊張感があったものの、宇野さん自身は「佐藤監督とお話しさせてもらう機会が多かったので、そんなに緊張はしなかったです」と感想を述べました。
落合さんは、この作品で半身麻痺の患者を演じたことがきっかけで、身近にいる近い状況の方に対して「その人のためになることってなんだろうって考えるようになっていますね」と、役を通して得たものを語りました。
主人公・遥の上司にあたる日野課長を演じた山中聡さんは、役を演じるときに「その人が持っている内側の面」を表現するのが仕事だと話し、撮影期間が限られている難しさはありつつも、ロケ場所となった病院で働く理学療法士の方々を「参考にさせていただきました」とコメント。
そして、完成した映画のラストが実は脚本とは異なっているという話題になると、山中さんは「落合くんがね。ゾンビになって病院をぶち壊すというラストシーンになっていて」と話して場内の笑いを誘いました。
遥の同期の理学療法士・幸子を演じた堀春菜さんと遥の彼氏・翔を演じた細川岳さんは、高校サッカー部が舞台の併映作『ガンバレとかうるせぇ』では堀さんがマネージャーの菜津役、細川さんがキャプテンの豪役で主演をつとめており、同時上映の両作に出演しているふたり。
『ガンバレとかうるせぇ』で堀さんが演じた菜津は劇中で笑顔を見せる場面がなく、堀さんは「最初のほうで私とキャプテンが家の前で会話をするシーンがあって、そのシーンが監督的には一番(菜津が)楽しいシーンだったんですけど、私がそのシーンで1回も笑わなかったので、監督が“じゃあこの映画では笑顔封印だね”っていう感じで、だんだんブスッとしたマネージャーが仕上がっていった感じです」とその理由を明かし「『ガンバレとかうるせぇ』は私もほんとに余裕がなかったので、なにも考える余裕もなく突っ走った感じで、『歩けない僕らは』は、宇野さん(が演じた遥)にどんなふうに影響を与えるべき役なのかなみたいなことを考えて取り組みました」と、それぞれの作品への取り組み方を話しました。
ふたつの作品でまったく雰囲気の異なる役を演じた細川さんは「ぼくはすぐ周りが見えなくなってしまうので『ガンバレとかうるせぇ』のキャプテンのほうが自分には近いかもしれないです」と役についてコメント。また細川さんは『歩けない僕らは』では彼氏彼女を演じるにあたり宇野さんと散歩をして会話するなどして「時間を埋める作業」をしていたそうで、宇野さんも「遥にとって彼氏である翔くんの存在って大きかったので、一緒に過ごせる時間を作っていただいて助かりました」と、細川さんの「時間を埋める作業」が演技の助けになったと話しました。
佐藤快磨監督は「『歩けない僕らは』は2年前の11月に撮影しまして、『ガンバレとかうるせぇ』に関しては6年前に撮影した作品なので、上映していただくことが当たり前ではなくて特別なことだなって思います。『ガンバレとかうるせぇ』は、これまでの間にオンラインとかの配信などのお話もいただいたんですけど、やっぱり自分としては公開というかたちで映画館でみなさんに観ていただきたかったので、『ガンバレとかうるせぇ』を最初に上映していただいたのがK's cinemaさんなんですけど(※2014年7月開催の映画祭「Movies-High14」で1回のみプレミア上映)、今日また帰ってくることができて嬉しいです」と、公開を迎えての心境を。
最後に佐藤監督は「『ガンバレとかうるせぇ』は、ほんとにぼくの初期のターニングポイントになる作品で、『歩けない僕らは』は、いまのぼくの全力を全部込めた最新作となっています。その2本を本日選んでいただいて、ほんとにありがとうございました。今日の日をみなさんと迎えることができて、ほんとに嬉しいです。佐々木すみ江さんもいらっしゃるとほんとに嬉しかったんですけれども、今日の日を喜んでくださっていると思います。楽しんでいただけたら嬉しいです」と『歩けない僕らは』で遥の担当患者・青木タエを演じ、今年2月に亡くなった佐々木すみ江さんへの想いも交えたあいさつで舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、NHK朝の連続テレビ小説で注目された板橋駿谷さんや、門田宗大さんらが共演する『歩けない僕らは』は、11月23日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開。K's cinemaでは初日以外も公開期間中に出演者と監督による舞台あいさつやトークイベントが開催されます。