舞台あいさつをおこなった難波真奈美さん、林家たこ蔵さん、木村和幹(きむら・かずき)さん、速水今日子さん、ぎぃ子さん、鎌滝えりさん、杉田雷麟(すぎた・らいる)さん、椿三期(つばき・さんご)さん、隅田靖監督、前川喜平さん、寺脇研さん(左より)
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イジメや貧困、虐待など現在の少年少女たちが直面する現実を描いた『子どもたちによろしく』が2月29日に初日を迎え、渋谷ユーロスペースで主演の鎌滝えりさん、共演の杉田雷麟さん、椿三期さんら出演者と隅田靖監督、企画の寺脇研さんと前川喜平さんが舞台あいさつをおこないました。
『子どもたちをよろしく』は、関東地方の街が舞台。風俗で働き家庭では義理の父親に暴力をふるわれている主人公・優樹菜と、優樹菜の義理の弟の中学生・稔、ギャンブル狂の父親のもとで貧困生活を送り学校でイジメの標的になっている稔の同級生・洋一たちを中心に、家庭にも学校にも居場所のない「子どもたち」の選択が描かれていきます。
映画初出演にして主演をつとめた優樹菜役の鎌滝えりさんは「子どもたちの映画になるので、私は子どもと大人の中間的な立場で演じさせていただいた役だったんです」と、親との関係に苦しみつつ義弟の稔には大人として接する役を演じての感想を述べ、撮影中もこの映画で描かれているような児童虐待などの事件の報道が相次いでいたため、現実を反映したような作品で主演をつとめることに「責任を感じながら演じさせていただいたんですけど」とコメント。
稔を演じた杉田雷麟さんは、複雑な家庭環境の中、親友だった洋一をいじめるグループに加わりつつ、ときにはかつてのような洋一との関係も覗かせるという役について「大変だったのは、ただいじめているだけじゃなくて、家に帰ったらああいう状況だと、そのふたつの切り替えというか、いじめているときでもたまに優しかったりとか、そこで別人にならないように気をつけながらやっていました」と振り返りました。
元・文部官僚で企画と統括プロデューサーをつとめた寺脇研さんは、新型コロナウイルス感染症の影響が出ている状況下での映画公開に「学校を休めとか集会しちゃいけないとか外出は控えろとか言われても、考えることだけは控えちゃいけないと思うんです。この映画を観て、いろいろなことを考えていただく、で、なにかやってみようと思っていただけるとしたらありがたいことです」とメッセージを。
さらに寺脇さんは「劇映画というのは体験したことのない、映せないものを再現するという要素もあります」「いまの子どもたちがひじょうに厳しい状態になっている子たちもいる。全員がそうなっているわけではない。そういう子たちも現実にはいるんだということを知っていただきたいというふうに思います」と劇映画で子どもの問題を採り上げた理由を語り、映画の終わり方について「みなさんがこの画面の中にいたらどうしただろうということを考えていただければ、決してアンハッピーエンドではないんじゃないかと。自分たちでハッピーエンドを作っていこうという話だと思います」と意図を明かしました。
寺脇さんとともに企画をつとめた元・文部科学省政務次官の前川喜平さんは「なにもしなかった前川です」と自己紹介しつつ「この映画を観て、日本の社会と経済と、政治を考えていただければと思っております」とあいさつ。
脚本も手がけた隅田靖監督は、この作品には「映画の力」があると信じて脚本段階から現場、仕上げ、宣伝活動までをおこなってきたと話し「実際にこうしてみなさんからそういう反響をいただいて本当にありがたく思います。みなさんの心の中にどこか響いて、ちょっとでも残っていただければ私は幸せです」と心境を語りました。
最後に隅田監督は「これからみなさんがこの映画を育てていただけるよう、いろいろ考えていただいて、周りの方に(映画について)言っていただいて、みなさんと一緒にこの映画を育てていきたいと思っていますので、よろしくお願いします」と舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、川瀬陽太さん、村上淳さん、有森也実さん、斉藤陽一郎さん、山田キヌヲさんらが出演し、ドラマ性豊かなフィクションのかたちで現在の子どもたちが生きる世界を描いた『子どもたちをよろしく』は、2月29日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開されます。