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独自のガイドラインでいち早く“映画撮影”再開 松本動監督『パレット』メイキング&超特報公開

 緊急事態宣言解除後、いち早く“映画撮影”を再開させた松本動(まつもと・ゆるぐ)監督の短篇『パレット』の撮影現場メイキング映像が作品の超特報とともに公開されました。

【『パレット』超特報】

 『パレット』は、松本動監督と12人の俳優のコラボレーションにより制作進行中の長篇映画『2020年 東京。12人の役者たち』の劇中で展開される短篇劇映画。

 以前の記事でも紹介している『2020年 東京。12人の役者たち』は、松本監督と俳優たちがワークショップを通じて映画を制作するプロジェクト・シネアストプラスで予定されていた作品が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で撮影中止となったことを受け「いまだからこそ伝えるべきテーマを、いまだからこそできる手法で」と企画されたもので、12人の俳優が自ら撮影した映像を松本監督がネットを介して受け取り編集をするリモート制作により自粛期間中に制作が進行、現在完成に向かっています。

 ドキュメンタリー要素のあるフィクション「ドキュフィクション」である『2020年 東京。12人の役者たち』の制作を進める過程で、松本監督自身が俳優たちが役を演じているところが見たいと想いはじめたこと、そして緊急事態宣言解除後にいち早く“映画撮影”を再開させることが映画界を活気づけるのではないかとの考えから、急遽『パレット』の制作が決定。内容はパンデミックを題材としたフィクションで、企画に賛同する俳優とスタッフの参加を得て撮影されました。

記事写真

『パレット』より。舞台となるのはウイルス対策の施された施設

パレット

  • 製作・脚本・監督・編集:松本動
  • 撮影:池田直矢
  • ラインプロデューサー:榊田茂樹
  • 出演:本山勇賢 秋田ようこ 秋山大地 井之浦亮介 和田悠佑 小⻄有也 清水杏樹 迎祐花 みやたに 田村陸 杉谷玲奈 田中栄吾
  • 制作協力:CiNEAST/ビッグアーチ

2020年/FullHD/モノクロ/シネマスコープ/ステレオ/20分(予定)

『パレット』あらすじ

2020年にパンデミックとなったCOVID-19は、あたかも終息したかの様に思えた。
しかし、遺伝子変異によって増殖力を増し、ワクチンや治療薬の耐性ウイルスへと変貌したその恐ろしい強毒性ウイルスは、東京23区を中心に感染が一気に拡大し、政府は東京のロックダウンを実施。新型ウイルスの終息を迎えるまでは、誰一人例外無く東京の出入りは禁止となり、通信各社の情報提供によって、人々は常に政府の監視下に置かれ、外出も禁止となり、違反をすれば罰金か禁固刑が科せられる事となった。
新型ウイルスは花粉なみの飛散をすると噂が広まり、口や鼻、目の粘膜組織からの感染を恐れ、人々は外出時だけでなく、室内に居る時も防毒マスクの装着を強いられた。
そんな状況下。物語の舞台となる施設は、再び新型ウイルスが蔓延する日が必ずやって来ると危惧した環境活動家の谷口敏行が、東京郊外の山間部で閉校となった元大学の校舎を買い取り、強毒性のウイルス対策を施すための工事を始めた矢先に、新型ウイルスの感染が拡がり、施設の一部しか陰圧化出来ておらず、防毒マスクを外して生活出来る空間は限られていたが、谷口の活動に賛同する仲間や、行き場を失った者たちを秘密裏に受け入れ、匿って生活をしていた。
そんな施設でひっそりと暮らし始めた者たちの、切なくも儚い一夜の物語。
記事写真

『パレット』より。人々が室内でも防毒マスクを付けなくてはならない状況下の物語

 緊急事態宣言解除後とはいえ感染の可能性が去ったわけではない中での撮影にあたり、緊急事態宣言解除前から十分な検討を重ね、国内外の感染防止ガイドラインを参考にした独自のガイドラインを日本国内の映画・映像関係団体がガイドラインを公開する以前の5月16日に策定。ひとつの作品に特化したゆえに細かな点まで網羅した十項にわたるガイドラインに沿った撮影がおこなわれました。

 松本監督は『パレット』制作にあたってのコメントと、感染防止に配慮した撮影の課題を以下のように発表しています。
 また、公開されたメイキング映像では、松本監督自身がガイドラインに沿った撮影現場での感染対策の様子を解説しています。

松本動監督コメント

記事写真 東京都の緊急事態宣言が解除になってから、もうじき一ヶ月を迎えますが、ニュースでは連日、各業種が感染防止対策を施しつつ、再開へ向けて動き始めた事を伝えていますが、映画館の営業再開やテレビドラマの撮影再開などは時々目にしますが、『映画撮影』の再開については、一向に聞こえて来ませんし、目にもしません。
一部の映画人がオンラインで映像制作を行い、ネット配信して活路を見出そうとしていましたが、映画制作に踏み出したという映画人が現われない事に、少し違和感を感じていました。

果たして日本の映画人たちは、いつになったら映画制作を再開出来るのだろうか? なぜ、映画撮影も再開へ向け動き始めたという前向きな情報を発信しないのだろうか? と、自粛生活をしながら悶々としていましたが、そういう自分も『映画制作』はしていても、本来の『映画撮影』はしていないという事に、はたと気づき、ならば自分が本来の映画撮影を再開しようではないかと、緊急事態宣言解除の目処が見えて来た頃に、12人の役者たちに短篇映画制作の意向を伝えたところ、賛同を得る事が出来たので、いち早く映画撮影を再開する事が出来ました。
まだ感染の可能性があるにも関わらず、プロジェクトへの参加を決断してくれたスタッフや役者の皆さんには、心より感謝をしております。 撮影の手応えは、とても良いものがありましたので、完成をぜひ楽しみにお待ち下さい。
記事写真

『パレット』メイキング画像。撮影前には検温がおこなわれる

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『パレット』メイキング画像。現場ではマスクやフェイスシールドが用いられる

感染防止対策の撮影を経ての課題

◇どうしても今までの撮影が体に染みついているので、撮影に夢中になると、つい感染防止対策を忘れてしまいがちになった。
今回は撮影現場での感染防止対策を監視し注意を促す専属の人員を確保しなかったが、やはり『衛生部』という新しい部署を設け、感染防止対策に特化した専属スタッフを付ける事の重要性を強く感じたと共に、その役割を担うのは、撮影現場の経験者ではない方がよいとも感じた。なぜなら経験者だと現場の進行をどうしても考えてしまい、感染防止対策に関して甘い見解をしてしまいがちになるので、進行状況など気にせず厳しい指摘が出来る部外者的スタッフが望ましい。

◇密を防止する観点から、人数を最小限にする為にスタッフを減らした結果、スタッフ一人が担う役割が増えてしまい、各自の仕事に手一杯となり、感染防止対策に気を使う余裕が無くなってしまう。
そこから見えて来たものは、安易に人数を減らすという考えよりも、スタッフの人数はある程度ゆとりを持って構成し、部署や役割によっては難しいかもしれないが、二班体制にするなどの交代制にして、撮影現場に居る時間を短くするなどの対策を講じた方が、感染防止対策に対する意識が持続出来る気がした。

◇皆が感染防止対策を忘れない様にする為にも、休憩後の撮影再開毎に、検温と共に短めの確認打合せの時間を設けると、皆の意識も継続して行けると感じた。
【『パレット』メイキング&超特報】

 誰も経験したことのない状況の中で、オンラインでの可能性にも目を向けつつ、いま可能な“映画制作”のあり方を模索し続ける『2020年 東京。12人の役者たち』と作品内短篇『パレット』の試みは、それ自体が2020年の重要な記録となるに違いありません。
 国内外の映画祭で多くの賞を受賞する松本監督と12人の俳優が挑む『2020年 東京。12人の役者たち』は、劇場での公開に向け、現在編集作業が続けられています。

作品ポスター

2020年 東京。12人の役者たち

  • 製作・監督・編集:松本動
  • 出演:秋田ようこ 秋山大地 井之浦亮介 小⻄有也 杉谷玲奈 清水杏樹 田中栄吾 田村陸 みやたに 迎祐花 本山勇賢 和田悠佑
  • 制作協力:CiNEAST

『2020年 東京。12人の役者たち』特報映像

2020年/120分(予定)

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