ジャパン・カッツ大林賞の初受賞作となった『コントラ』(2021年春公開)のアンシュル・チョウハン監督が受賞コメントを発表。第一弾ポスターヴィジュアルも解禁されました。
※ポスターヴィジュアルは記事最後に掲載
偉大な監督の名を冠した大林賞に輝く『コントラ』アンシュル・チョウハン監督が受賞コメント発表
『コントラ』は、インド出身で日本で映画制作をおこなうアンシュル・チョウハン監督が、初長編『東京不穏詩』(2020年1月公開)に続いて送る長編第2作。
祖父が遺した第二次大戦中の日記を見つけた高校生と、彼女の住む町に現れた後ろ向きに歩くホームレスの男性の不思議な交流によって紡がれる物語をモノクロの映像で綴るファンタジー映画。11月に公開を控えた『タイトル、拒絶』(山田佳奈監督)などに出演する女優・円井わんさんが主人公の高校生・ソラを演じています。
エストニアで開催された第23回タリンブラックナイト映画祭(Black Nights Film Festival)でグランプリと最優秀音楽賞を受賞するなどすでに海外の映画祭で高い評価を得ており、今年7月に開催された北米最大の日本映画祭であるジャパン・カッツ(JAPAN CUTS)ではネクストジェネレーション部門に出品され、新たに創設された大林賞の初の受賞作品となりました。
今年4月に惜しくもこの世を去られた大林宣彦監督の業績を讃え、その名を冠して創設された賞の受賞にあたり、アンシュル・チョウハン監督は次のようにコメントしています。
アンシュル・チョウハン監督コメント
「JAPAN CUTSのNext Generation部門に『コントラ』がノミネートされたというニュースを聞いただけさえ、嬉しい気持ちであふれていたのですが、大林賞を受賞したと分かった時は、言葉に出来ないほどの喜びがありました。コントラチームの全員もこの朗報にとても喜んでいました。『コントラ』は私にとって個人的な感情を強く含んでいる作品で、この映画は当時の自分の感情を満たすために作ったものでした。なので、制作中は、まさかここまでの評価や映画祭で結果を出せるとは思ってもいませんでした。それが、こうして沢山の方に訴えかけられる映画になったこと、そして「この映画を作ってくれてありがとう」というメッセージを沢山いただけたことは、映画制作者にとってこれ以上ない喜びです。大林監督が、実験的な映画作りや第二次世界大戦に関わる内容を映画で多く触れていてこともあり、私自身、この初代大林賞をいただくということを本当に光栄に思い、同時に今後の活力にも繋がっています。コントラチームを代表して、JAPAN CUTS、JAPAN Society NY、そして審査員である安藤桃子氏、高松美由紀氏、そしてJulian Ross氏には感謝の気持ちでいっぱいです。
【英語】
I was already very happy and excited when I heard the news of Kontora being picked up by Japan Cuts 2020 for the next generation line up. So the news of winning the Obayashi Prize was cherry on the top. My whole team is very happy with the award and how news is building around Kontora. When I made the film I never imagined that Kontora will have this kind of critical success and festival run. Kontora is a very personal film for me and I made it just to satisfy my feeling at that certain time. I am very happy that people are relating with the film and we are getting many messages saying “Thank you for making the film”. I think for a filmmaker nothing is more rewarding than this. As Obayashi San himself is the pioneer of experimental cinema and he touched stories and subjects from WW2 in many of his film, I feel truly honoured and inspired to receive inaugural Obayashi Prize. On the behalf of Kontra’s whole team I want to thank Japan Cuts, Japan Society NY and Jury members, Momoko Ando, Miyuki Takamatsu and Julian Ross San.
また、大林賞審査員の映画監督・安藤桃子さんと映像研究者のジュリアン・ロスさん、フリーストーン・プロダクションズ代表の高松美由紀さんは、以下のように共同コメントを出しています。
大林賞審査員共同コメント
映画業界が危機的な変化に直面している今、ネクストジェネレーション・コンペティション部門は我々、審査員に日本映画界の未来を見据えるという意欲をかき立てました。受賞作品は、過去の重さと、それに一人ではなく、一緒に取り組む人たちの責任を探求しています。過去に根ざした作品でありながら、登場人物の少女が成長する過程の多感な状況をきめ細かく描かれていることと、少女がいかにして道導となったかに心を打たれました。この作品の監督は、映画という枠の中で彼独自の世界を創り上げるべく、日本を見ることができる双眼鏡を持ち続けることができる監督だと信じています。猛スピードで変化し、進化する。奇しくも最も大和魂を感じる一本、そしてこれからの未来に最も期待を覚えさせたのは後ろ向きに走る男を主人公にした映画だった。2020年日本映画祭ジャパン・カッツの第1回大林賞はアンシュル・チョウハン監督の『コントラ』に贈ります。
【英語】
In this year when the film industry faces irreversible change, the Next Generation competition challenged us as a jury to look to the future. The film we chose explores the weight of the past and our responsibility to engage with it not alone, but together. For a film rooted in the past, we were struck by its sensitive portrayal of a teenage girl, and how she became our guide. We believe in this director’s ability to look Japan straight in the eyes, all while using his own special binoculars. The ‘next generation’ is something that never stops evolving. Curiously, it was the film that features a man running backwards that got us most excited for the future to come. The 2020 Obayashi Prize of Japan Cuts goes to Kontora by Anshul Chauhan.
受賞により注目の高まる『コントラ』は、MAP+Cinemagoの配給により、2021年春、新宿K's cinemaほか全国順次公開されます。
『コントラ』ストーリー
第二次世界大戦時に記された祖父の日記を辿って、ソラは不可思議な宝の探索を始める。その頃、無言で後ろ向きに歩くホームレス男が、彼女の住む街へと迷い込む。もしかしたら彼は、ソラと彼女の父親との凍結された関係を溶かす触媒となり得るのかもしれない。