トランスジェンダー当事者がトランスジェンダー女性を演じる『片袖の魚(仮)』の制作が発表されました。詩人・文月悠光(ふづき・ゆみ)さんの詩が原案で東海林毅監督がメガホンをとり、イシヅカユウさんが主演をつとめます。
トランスジェンダー女性が主人公の東海林毅監督新作『片袖の魚(仮)』にイシヅカユウさん主演
『片袖の魚(仮)』は、自分に自信が持てない社会人トランスジェンダー女性がプライドを得るまでを描く短編作品。
2008年に16歳で現代詩手帖賞を受賞、高校在学中に刊行した第一詩集で史上最年少の18歳で中原中也賞を受賞し、現在も幅広く活躍する詩人・文月悠光さんの詩集「わたしたちの猫」(2016年・ナナロク社)所収の詩「片袖の魚」が原案で、文月さんの詩を原案とした映画が制作されるのはこれが初めて。
メガホンをとる東海林毅監督は『喧嘩番長 劇場版』シリーズや『はぐれアイドル地獄変』(2020年)などゲームやコミック原作のエンターテイメント作品を手がるほか、自主制作で『老ナルキソス』(2017年)『ホモソーシャル・ダンス』(2019年)など作家性のつよい作品を発表して国内外で高く評価され、2019年には短編作品を集めた特集上映「偏愛ヴィジュアリスト」が開催されるなど映像作家として注目を集めています。今回の『片袖の魚(仮)』では『老ナルキソス』などと同様、脚本も担当しています。
『片袖の魚(仮)』制作にあたっては、主人公のトランス女性役とやはりトランス女性であるその友人役のふたりを、日本では初となるトランスジェンダー当事者という応募条件のもとに公募。
オーディションを経て、ファッションモデルとして活躍し映像作品にも出演、自らの体験や意見を語るなどさまざまな媒体での活動も増えているイシヅカユウさんが主人公のひかり役に選ばれました。
イシヅカユウさんと原案の文月さんは、映画制作にあたり次のようにコメントを発表しています。
主演:イシヅカユウさんコメント
新しいことに挑戦するのはいつも不安ですが、お芝居の渦中に身を投じ、自分の中にあるものと自分の中に無いものを重ねて一つの像を作る途方もない作業を楽しんでいます。
ご期待下さい。
原案:文月悠光さんコメント
とても大切な映画です。文月も監督も主演のイシヅカユウさんも、本作に携わる多くの方にとって『片袖の魚』は大きな「挑戦」になります。それが何より嬉しいです。今はまだ稚魚のような心持ちですが、公開までどうか温かく見守って頂けたら幸いです。
(写真撮影:石垣星児)
そして、性別適合手術を受けたトランス女性で女優・タレントとして幅広く活動する広畑りかさんが主人公の友人・千秋役で出演。
そのほかにアイドルグループ・仮面女子のメンバーで事故により車椅子生活となりつつ芸能活動を続けている猪狩ともかさんが主人公の同僚役で出演、東海林監督『老ナルキソス』主演の田村泰二郎さんも出演します。
スタッフには、商業作品・自主作品双方で東海林監督の作品に参加する撮影の神田創さんらが参加。
作品は2020年内に完成し、2021年に劇場公開を予定。
各方面で注目を集める才能が集まった『片袖の魚(仮)』がどんな作品となっているか、公開が待たれます。
片袖の魚(仮)
- 監督・脚本:東海林毅
- 出演:イシヅカユウ 広畑りか 猪狩ともか 田村泰二郎 ほか
- 撮影:神田創
- 照明:丸山和志
- 録音:佐々井宏太
- 美術:羽賀香織
- 衣装:鎌田歩(DEXI)
- ヘアメイク:東村忠明
- 助監督:小池匠
- 制作:清水純/牛丸亮
- 音楽:Jimanica
- ビジュアルデザイン:東かほり
- 宣伝:contrail
- 製作・配給:みのむしフィルム
- 2020年/カラー/DCP/30分(予定)