映画祭などで上映され黒沢清監督、諏訪敦彦監督、鶴田法男監督ら多くの映画人より絶賛を浴びてきた中川奈月監督『彼女はひとり』待望の単独劇場公開が決定。10月23日より新宿K's cinemaほか全国公開されます。
『彼女はひとり』は、立教大学大学院映像身体学研究科に在籍していた中川奈月監督の同研究科修了制作として制作され、中川監督が東京藝術大学大学院映像研究科に進学後に完成させた初長編作品。
自殺を図りつつも生還した高校生・澄子が幼馴染の男子生徒を脅迫していく中で明らかになっていく事実を描く、ひとりの女性の孤独な復讐劇となっています。
2020年に公開された『本気のしるし』(深田晃司監督)で主人公の同僚を演じて注目を集めた福永朱梨(ふくなが・あかり)さんが主人公の澄子を演じているほか、金井浩人さん、美知枝さん、三坂知絵子さん、堀春菜さん、山中アラタさんらが出演。
撮影は黒沢清監督作品などで知られるベテランカメラマンの芦澤明子さんが担当しており、大学院修了制作でありながら日本映画界の第一線で活躍するスタッフと俳優陣が参加した作品となっています。
2018年に完成して以降、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018(国際コンペティション部門SKIPシティアワード受賞)、第13回田辺・弁慶映画祭(俳優賞受賞)ほか映画祭などで上映され高評価を得てきた注目作が、昨年11月に特集上映「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」の1作品として劇場上映されたのに続き、待望の単独劇場公開を迎えます。
10月の公開に向けて解禁されたポスターヴィジュアルは、澄子のアップをメインに劇中の場面が組み合わされ、東京藝術大学大学院映像研究科での中川監督の恩師である黒沢清監督のコメントが掲載されています。
公開決定にあたり、主演の福永朱梨さんと中川奈月監督がコメントを発表しています。
主人公・澄子役:福永朱梨さんコメント
「彼女はひとり」の撮影から6年近く経ちますが、こうしてまたスクリーンで上映する機会をいただけて本当に嬉しいです。
映画館で映画を観ることは特別な体験で、かけがえのないものだとコロナ禍の中改めて実感しています。
大好きなこの作品を、スクリーンで観られるこの機会にぜひ観ていただけたら嬉しいです。
この物語が沢山の人に届きますように。
中川奈月監督コメント
映画を監督するという事がどういうものか分からないまま撮らせて頂いたこの作品が、本当に多くの方に支えられて単独公開を迎えられる事が出来て感無量です。撮影から数年が経って色んな方に出会い、この作品の強さについて私が沢山教わりました。あの頃の私にしか作れなかったものと、それに乗ってくれたスタッフ、キャストとの出会いに感謝しています。
ついに多くの方に見て頂けるという事が本当に楽しみでなりません。ぜひ、見に来てください。劇場でお待ちしております。
また『彼女はひとり』には、中川監督が師事した黒澤清監督と諏訪敦彦監督、映画『本気のしるし』で主演をつとめ福永さんと共演している俳優の森崎ウィンさん、気鋭の監督の作品への出演が続く女優・根矢涼香(ねや・りょうか)さん、日本のみならず世界のホラークリエイターに影響を与え“Jホラーの父”と呼ばれる鶴田法男監督ら映画関係者や著名人からの絶賛コメントが寄せられています。(以下のコメントは「田辺・弁慶映画祭セレクション2020」での上映時にも紹介されています)
黒沢清さん(映画監督)
恋に悩む高校生たちの物語だと思って見ていたら、青春という言葉からはるか隔たった、あまりにもダークで狂気的な世界観に震撼していた。これは凄い。少なくとも日本映画で、このレベルに達した学園ドラマを私は他に知らない。
諏訪敦彦さん(映画監督)
破壊することでしか触れることができない世界を生きる、その絶対的な孤独こそが世界=映画を再生させるはずだという覚悟が全編に漲っている。そして「彼女はひとり」ですべてを敵に回し、否定することで世界を抱きしめるという離れ業を堂々とやってのけるのだ。驚嘆した。
森崎ウィンさん(俳優)
こんなにドキドキした1時間、味わった事がない。ストーリー運び、俳優が吐く言葉、凄く好きです。脚本が欲しい。女優、福永朱梨さん、素敵過ぎました。本人には恥ずかしくて直接言えないのですが、そう強く思えた作品に出会えました。
根矢涼香さん(女優)
福永朱梨さん演じる澄⼦の、時折訴えかける眼の奥の寂しさに⼼が消え⼊りそうになる。
皆が皆、好き勝⼿に吐き出して、散らかして、
残されたものは顧みずに踏みつけて歩いていく。
誰もこの声など聞こえていない、⾒ていない。
どこにもいない。幽霊はどちらかわからない。
引っ掻き回された世界で⽬を回さずに歩くために、
世界をかき回し直す彼⼥の視界は、明るくなるどころか依然混沌として、
周囲を巻き込みながら淀んだ川の底へと、ゆっくり沈んでゆく
鶴田法男さん(映画監督・作家)
死の淵から帰還した少⼥が、ある町のおぞましい⼈間関係を暴いて崩壊させていく。
イーストウッドの『ペイルライダー』と横溝正史の世界が出会ったようなおぞましい物語なのに、若い⼥性監督が作った爽快なまでのギャップに度肝を抜かれる必⾒作!
まつむらしんごさん(映画監督)
ひとりの少⼥の復讐劇にみえる。 彼⼥の動機が徐々に明かされる綿密な脚本。 ⾏き場のない孤独と苛⽴ちを⼀瞬で伝える俳優の眼差し。 ヘビーな世界観に⼀筋の光を差し込む繊細な演出。 あえて⼀⾔でまとめるなら…傑作。
椎名うみさん(漫画家)
可哀想で純粋で暴⼒的な嵐でした。悲しかったです。
それはわたしがいつも物語の中に求めてる感動です。みんな可哀想でした。
みんな助けて欲しがっていて、助けたがっていて、助けを求められても助けられないことを許して欲しがっていて、
それは愛がなければ⽣まれない地獄でした。
2018年には東京藝術大学大学院の実習作品として制作された『投影』がイランで開催された第36回ファジル映画祭(Fajr international film festival)短編部門にノミネートされ、近年は日本各地で特集上映が開催されるなど期待を集める若手監督である中川奈月監督。60分という時間の中にその才能が凝縮された初長編作は必見です。