２０１９年に劇場公開され話題となった楫野裕（かじの・ゆう）監督の初長編『阿吽（あうん）』が12月12日と13日にアップリンク吉祥寺で２日間限定リバイバル上映されます。

　『阿吽』は、東京で暮らすひとりの男の日常が１本の電話をきっかけ揺らいでいく様子を通して、東日本大震災以後の不安と恐怖を表現した作品。全編がモノクロの８mmフィルムで撮影されており、デジタルのクリアな映像では得られない質感で現在を捉えた異色の作品となっています。

　『宇宙人の画家』（２０２１年／保谷聖耀監督）『ＡＢＣ・オブ・デス２／Ochlocracy」（２０１４年／大畑創監督）などの渡邊邦彦さんが主演をつとめ、ほかに堀井綾香さん、佐伯美波さん、篠原寛作さん、上埜すみれさん、宮内杏子さん、松竹史桜さんらが出演しています。

　２０１９年にドイツ・フランクフルトで開催された映画祭・第19回ニッポン・コネクション（Nippon Connection）で上映され“紛れもなく 楫野裕は今年のニッポン・コネクションで最も興味深い作品のひとつを作ることに成功した。観客に衝撃と 反発を与える真のミッドナイト・ムービーだ。”と評されるなど、国内外で大きな反響を起こした作品が、２年ぶりのリバイバル上映を迎えます。

　現在のところ未ソフト化で配信もされておらず鑑賞の機会が限られている『阿吽』の貴重なリバイバル上映は、12月12日と13日の２日間限定でアップリンク吉祥寺で開催。
　12日には初公開時にコメントを寄せたラッパーのalledさんが所属するHIP HOPグループ・BLYYによるライブを開催、13日にはやはり初公開時にコメントを寄せている映画ライターで「イタリアン・ホラーの密かな愉しみ」「厭な映画」などの編著書で知られる山崎圭司さんを迎えたトークショーを開催と、２日間ともに上映に加え特別な趣向が用意されています。

　東日本大震災以降の不安と恐怖をモチーフとした『阿吽』。東日本大震災から10年を過ぎ、コロナ禍という新たな不安と恐怖が漂う２０２１年の東京でこの作品を鑑賞することは、きっと特別な体験となるでしょう。

『阿吽』ストーリー

20XX 年。都内大手電力会社に勤める男はある晩、会社にかかってきた電話をとる。電話口からは 「ひとごろし」という声がした。幻聴か、現実か。神経衰弱に陥った男の日常が徐々に揺らぎ始める。 救いを求めて彷徨い歩く男は、やがて得体の知れない巨大な影を見る。その正体は何なのか。男の 不安が頂点に達した時、“魔”が都市を覆い始める。