舞台あいさつをおこなった峯岸みなみさん、深水元基(ふかみ・もとき)さん、後藤剛範さん、遠藤久美子さん、田村芽実(たむら・めいみ)さん、横尾初喜(よこお・はつき)監督(左より)
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後藤剛範さんが初めて映画主演をつとめた『大事なことほど小声でささやく』が10月21日に初日を迎え、シネマート新宿で後藤さんと横尾初喜監督、共演の深水元基さん、遠藤久美子さん、峯岸みなみさん、田村芽実さんが舞台あいさつをおこないました。
『大事なことほど小声でささやく』は、作家・森沢明夫さんによる同名小説が原作。スナックを営み昼間はジムで体を鍛える“マッチョなオカマ”のゴンママとスナックに集まるジム仲間が紡いでいく物語を連作形式で描いた原作から、歯科医の四海(しかい)夫妻のエピソードにクローズアップして映画化しています。
「こんなに大勢の方にいらししていただいて胸がいっぱいで、いろいろなものが溢れそうな状態です」とあいさつしたゴンママ役の後藤剛範さんは、初めての映画主演が決まったときの心境を「脇役をやっていくんだろうなとずっと思っていたので、主演というのが来たことにまずビックリして、そのあとは監督の冒険心というか、器の大きさに乗っかりたいなと思って、とても嬉しく思いました」と語り、ゴンママ役について「シンパシーを感じることも多くて、自分がやるべき役なんだろうなと」思ったという一方で、もともと筋肉を鍛えていた後藤さんでも役作りのためにさらにトレーニングが必要で「ハードルが高すぎて(笑)」と苦労も覗かせました。
横尾初喜監督は、以前にドラマで後藤さんと仕事をした際に「パンチのある方だな、筋肉すごいな」と思い、原作を読んだときに「後藤さんしかいないなって、頭の中で決めてオファーさせていただきました」と、オファーの理由を語りました。
物語の中心的存在となる歯科医・四海良一を演じた深水元基さんは、繊細で家族の問題で悩むという、深水さん自身「あまりやったことがなかった」という役を演じるにあたり「作品と自分のプライベートをちょっと重ねあわせるところもあったりして」と役へのアプローチを語り「そっちのほうが(ハードな役よりも)心を削る作業が多いんだなっていうことで、ちょっと大変だなというのはありました」と振り返りました。
良一の妻・四海由佳役の遠藤久美子さんは「深水さんの現場に入られたときの優しさだったり柔らかさみたいなものがあって」「すごく難しい役だったんですけど、そっといさせていただけたのは、深水さんが作ってくださっている空気の中に入れていただいたという感じで、すごく居心地がよかったです」と、深水さんと夫婦役を演じての印象を語りました。
ゴンママのスナックを訪れるジム仲間のひとり・井上美鈴を演じた峯岸みなみさんは“ミステリアスな美女”という役どころに「まさか自分が美人役をやる日が来たか! と思って、時代が追いついたなと感じまして、すごく嬉しかったんですけど(笑)」と笑いを交えながら、ジムのシーンやスナック店内のシーンは休憩時間もキャストがみんなで集まって話したりして心地よい空気だったと撮影中の様子を語り「後藤さんがゴンママじゃないんだという現実が寂しくなるくらい、ほんとに居心地がいいスナックでした」と、撮影時を懐かしみました。
ゴンママの営む“スナックひばり”のバーテンダー・カオリを演じた田村芽実さんはソロで映画に出演するのは初めてで、当初は「ガチガチに」緊張していたものの「初めて原作を読んだときと同じ空気感がずっと撮影の現場に流れていて、監督だったり、後藤さんだったり、みなさんの空気がとてもあたたかく流れていて、私もとても楽しく撮影に挑むことができました」と、峯岸さんと同じく現場の空気の心地よさを挙げ、横尾監督は若干照れを見せつつ「あたたかく作るというのはモットーにしております」とコメント。
また田村さんは映画の主題歌「似た者同士」の歌唱も担当。田村さんは撮影が終わってから「スナックひばりとか、スナックひばりのみんなのことが、ずっとずっと恋しかったんですけど」と話し、主題歌のレコーディングでは「歌詞だったり音楽がこの作品にリンクするところがたくさんあって、ひとりなんだけどスナックひばりのみんなと一緒に歌っているような感覚」があり「私ひとりで歌っているという感覚よりも、この映画に携わっているみなさんと一緒に主題歌も作り上げたというような気持ちになりました」と話しました。
トーク中の峯岸みなみさん、深水元基さん、後藤剛範さん、遠藤久美子さん、田村芽実さん、横尾初喜監督(左より)
『大事なことほど小声でささやく』の原作小説は映画でスポットを当てている四海夫妻のエピソード以外にも、登場人物ひとりひとりをフィーチャした話が揃っており、続編の可能性を訊かれた横尾監督は「絶対次は撮りたいですね」と意欲を見せました。
そして最後に後藤さんは「ちょっと真面目なことを言うと、この話はぼくら俳優も含めて、登場人物も前に進もうとする話だとぼくは思っていて、その中で生じる孤独感だったり不安だったりにどう向き合うか、という話だと思ってぼくらは作っていたと思います。なので、観終わったみなさまにもそっと寄り添える映画で、みなさまにそう思っていただけると嬉しいです」と話すと「みなさま、これからも楽しみに……」とタイトルにちなんで「小声でささやく」ように話し「聞こえないと意味ないじゃん(笑)」と自らツッコミを入れると、これから映画をご覧になる観客のみなさまに「束の間ですけど楽しんでいってください」と伝えて舞台あいさつを締めくくりました。
幅広く支持を集めるハートフルな原作を、人間の感情を優しく描く監督が映画化した『大事なことほど小声でささやく』は、舞台あいさつ登壇者のほか、期待の新鋭・遠藤健慎さん、横尾初喜監督作品常連のアキラ100%こと大橋彰さん、名バイプレイヤーの田中要次さんらが出演。10月21日金曜日より、シネマート新宿、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開されます。