PFFアワード受賞作『頭痛が痛い』(守田悠人監督)が6月3日に公開されるのを前に、特報と場面写真、ダブル主演の阿部百衣子さんとせとらえとさんのコメントが解禁されました。
PFF受賞作『頭痛が痛い』W主演の阿部百衣子さんせとらえとさんコメントと場面写真・特報解禁
PFFアワード2020で審査員特別賞を受賞した『頭痛が痛い』は、第28回新人シナリオコンクール入選経験を持つ1997年生まれの新鋭・守田悠人監督の初監督作。
いつも他人のために救急セットを持ち歩き明るく振る舞う一方で遺書を見知らぬ家のポストに投函する女子高校生「島内いく」と、いくと同じ高校の生徒で自傷行為や恋愛感情のない男性との肉体関係を繰り返しライブ配信をおこなう不登校の「佐藤鳴海」のふたりを主人公にしたシスターフッドロードムービーで、心に空白を抱えるふたりが互いに支え合う存在になっていく姿が作家・梶井基次郎「檸檬」の引用を盛り込みつつ描かれていきます。
「島内いく」を演じるのは『頭痛が痛い』が映画デビューとなる阿部百衣子(あべ・もえこ)さん。「佐藤鳴海」を演じるのは、フリーランスのモデル・俳優のせとらえとさん。
解禁されたふたりのコメントでは、阿部さんは「演じたいくは、一言で言うと、過去の自分にものすごく近い子だな、と思いました」と、せとらえとさんは「鳴海は昔の自分と被るところもあり、その頃の事を思い出しながら演じた箇所もありました。」と、それぞれ演じた役への共感を述べるとともに、作品への想いや公開を迎える心境を語っています。
島内いく役:阿部百衣子さんコメント
演じたいくは、一言で言うと、過去の自分にものすごく近い子だな、と思いました。
自分はそんなことしたいと思っていないのに、分かりやすく誰かに優しくしたり、人に感謝をされることをする。それがいくにとっての自傷行為で、それを発散するための方法が遺書を投函すること。誰の記憶にも残らずすっと水蒸気みたいにいなくなりたいのに、むざむざと爪痕を残そうとしてしまう、本人も気づいていない「矛盾と葛藤」みたいなものを表現できれば、と思いながら演じていました。
完成した映画を見た時は、不思議な感覚でした。島内いくという架空の人物でもあり、過去の自分を見ているようでした。最後にはどこかで救われていて欲しい、と願いながら見ました。
PFFでこの映画が評価を受けられたということは、まだ世界に救いが残っているということだと思います。「死にたい」はタブーな感情で、表に出すことはなかなかできないかもしれないけれど、決して悪いことではない。誰だって抱いていい感情で、その感情を抱きながらも生きている人がいる。世の中は断絶をし続けているし、人と人は簡単には思いを共有できません。それでも、どこかには「生きていて欲しい」と願う人がいる。綺麗じゃなくても泥臭くてもいいから生きていていい。
人と人との溝が深くなってしまった今だからこそ、見て欲しい映画です。
佐藤鳴海役:せとらえとさんコメント
鳴海は、一見やさぐれているようだけど、不器用で繊細で傷付きやすく、自分自身の中に色々な葛藤を常に抱えている女の子だと思いました。鳴海は昔の自分と被るところもあり、その頃の事を思い出しながら演じた箇所もありました。
あと、あまり感情を表情に出せないぎこちなさみたいなのを意識しました。
完成した映画を見て、その時の心情だったり、見る度に感想や想いが変わる映画だなと思いました。みんな幸せになって欲しいと思いました。
PFFで審査員特別賞を受賞した際は、良い意味で驚きはしなかったと言いますか、自分の中で特別で大切な映画が評価されて嬉しかったです。ただ少しグランプリを獲れなかった悔しさもありました。
「しんどいな」「死にたいな」と思うことに罪悪感を持ってしまったり自分を責めてしまう人って多いと思うんです。この鬱々としたご時世だからこそ、とかは言いたくないけれど。そういう人たちに観て欲しいし、死にたいなんて思ったことない人にも、「こういう人たちもいるんだ」って知って欲しい。あとは自分を大切にして欲しい。とにかく劇場に足を運んでいただきたいです。
また、同時に解禁された場面写真は、いくと鳴海の関係を感じさせるふたりのカットのほか、鐘ヶ江佳太さんが演じるジャーナリスト・浅井直樹や、杉山宗賢さんが演じる工藤将也の姿が写るカットも。
特報は、いくが読む梶井基次郎「檸檬」の一節で幕を開け、レモン色の封筒に収めた遺書を投函するいくや、自分をさらけ出すようなライブ配信をする鳴海の姿、ふたりの心象を渉猟するような風景などが映し出されていきます。
阿部百衣子さん、せとらえとさんらのほか、直樹の恋人・宮下麻衣役に山本華世子さん、鳴海の父親’・隆之役に大友久志さん、鳴海の母親・恵子役にナツメさんらが出演し、生きにくさを感じる10代に真摯に向き合う『頭痛が痛い』は、6月3日金曜日より東京のアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開されます。
『頭痛が痛い』ストーリー
東京五輪に向けた新国立競技場の建設が進む 2018 年の東京。不登校気味の高校生・鳴海(せとらえと)は ライブ配信を行うことにより、行き場の無さを埋めようとする。鳴海の同級生・いく(阿部百衣子)はいつ も明るく振る舞う反面、形容しがたい憂鬱な気持ちを吐き出せずにいた。ある日いくは、梶井基次郎の『檸檬』のように、自分の遺書を赤の他人の家に投函することで憂鬱を晴らそうとする。その遺書を読んだ鳴海と、フリージャーナリストの直樹(鐘ヶ江佳太)は、いくが発するSOSを感じ…