初監督作にしてPFFアワード2020で審査員特別賞を受賞した守田悠人監督『頭痛が痛い』が6月3日よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開されることが決定し、ポスターヴィジュアルと守田監督のコメントが解禁されました。
『頭痛が痛い』は、東京オリンピック開催に向け新国立競技場の建設工事が進む2018年の東京が舞台。明るく振る舞う一方で自分の遺書を見ず知らずの他人の家に投函する女子高校生「いく」と、「いく」の同級生でライブ配信で自分の心の内を吐き出す不登校の「鳴海」、ふたりの少女があるきっかけからお互いの心の傷を支え合う存在になっていく姿が、作家・梶井基次郎の代表作「檸檬」の引用を盛り込みながら描かれていきます。
監督は、大学在学中に執筆した脚本『幸福なLINE』が第28回新人シナリオコンクール(2019年開催)で佳作1位に入選した守田悠人監督。初監督作となる本作『頭痛が痛い』で新人監督の登竜門であるぴあフルムフェスティバルのPFFアワード2020で審査員特別賞を受賞し、審査員である画家の平松麻さんに「映画を観ている間じゅう、監督の在り処を探していました。守田監督はいつもいくと鳴海の横にいるように私には見えました。ひとのいたみを分かったつもりでやり過ごしてしまう危うさに守田監督は向き合っていたのだと思います。」(「PFFアワード2020」審査講評より抜粋)と評されています。
守田監督は、公開決定にあたり次のようにコメントを発表しています。
守田悠人監督コメント
本作は2018年に製作したもので、オリンピックを控えた東京が舞台となっています。
本作には「檸檬」(著・梶井基次郎)の引用が幾つか出てくるのですが「檸檬」の中には、憂鬱に対しての画期的なアプローチが内包されており、それは初版から約100年経った今でも色褪せていません。
憂鬱というものも一向に色褪せる気配がなく、折り合いをつけながら生きていくしかありません。しかし反面、折り合いをつけてたまるかとも思います。
コロナウイルス、ロシア政府によるウクライナ侵攻などによって、2018年に想像していた未来が大幅にキャンセルされていく中、東京五輪がいつの間にか素通りし、今を迎えています。たった4年の間に日常や映画という媒体の立ち位置が大きく書き換えられたように感じますが、劇場や、劇場に足を運んでくださる皆様の存在によって本作の居場所が生まれることを、心より嬉しく思います。
「いく」役を本作が映画初出演となる阿部百衣子(あべ・もえこ)さん、「鳴海」役をフリーランスのモデル・俳優として活動するせとらえとさんと、ともに映画初主演となるふたりがダブル主演。
また、「いく」の遺書に突き動かされるジャーナリスト・浅井直樹役で『JOINT』(2020年/小島央大監督)などの鐘ヶ江佳太さんが出演するほか、山本華世子さん、杉山宗賢さん、大友久志さん、ナツメさんらが共演しています。
公開決定と同時に解禁されたポスターヴィジュアルは、タロットカードの背面を思わせるデザインで、ふたりの主人公の顔や作品のタイトルとキャスト4人の名前が紋様のように配置された、強い印象を残すものになっています。
「死にたい」という苦しみを共有するふたりの主人公・いくと鳴海。生きづらさを抱える十代に真摯に向き合っていく『頭痛が痛い』は、6月3日金曜日よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開されます。
『頭痛が痛い』ストーリー
東京五輪に向けた新国立競技場の建設が進む 2018 年の東京。不登校気味の高校生・鳴海(せとらえと)は ライブ配信を行うことにより、行き場の無さを埋めようとする。鳴海の同級生・いく(阿部百衣子)はいつ も明るく振る舞う反面、形容しがたい憂鬱な気持ちを吐き出せずにいた。ある日いくは、梶井基次郎の『檸檬』のように、自分の遺書を赤の他人の家に投函することで憂鬱を晴らそうとする。その遺書を読んだ鳴海と、フリージャーナリストの直樹(鐘ヶ江佳太)は、いくが発するSOSを感じ…