トークセッションをおこなったみやべほのさん、荒木飛羽(あらき・とわ)さん、ドリアン・ロロブリジーダさん、落合賢監督督(左より)
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内気な男子高校生とドラァグクイーンの交流を描いたショートフィルム『ストレンジ』の完成披露試写会が5月25日に東京・渋谷のユーロライブで開催され、ダブル主演の荒木飛羽さんとドリアン・ロロブリジーダさん、共演のみやべほのさん、落合賢監督がトークセッションをおこないました。
『ストレンジ』は、第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に選出されるなど高い評価を得たつるきゆきこさんによる同名短編コミックの映画化。勉強漬けの日々を送る内気な男子高校生・オデコちゃんが、ドラァグクイーンのクマさんと偶然に出会い交流していく中で、ふたりが得ていくものを描くストーリーで、2005年生まれの注目の若手俳優・荒木飛羽さんがオデコちゃんを、ドラァグクイーンとして幅広く活動するドリアン・ロロブリジーダさんがクマさんを、それぞれ演じています。
この日の完成披露試写会では、初披露となる映画本編に加えメイキング映像も上映。上映後にキャストと監督が登壇してのトークセッションとなりました。
今回の撮影は「自分の意見をすごく言えたなと思いました」と荒木さん。クマさんとの初対面の場面でオデコちゃんが原作にないリアクションをしているのは荒木さんと落合監督が話し合って決めたそうで、荒木さんは「動きとか、表情とかを(監督と)相談すること多かったかなと」と振り返りました。
ドリアンさんも、クマさんとオデコちゃんの再会シーンで素顔のクマさんがネイルを見せて自分だと気づかせるアイディアを出して採用されるなど、監督と対話しながら撮影していたとのこと。ドリアンさんは「言い回しだったりテンションみたいなものは、わりと自由演技でやらせていただいた感じです」と話し、撮影現場の雰囲気を感じさせました。
『ストレンジ』では、 LGBTQ+inclusive directorのミヤタ廉さんが参加してLGBTQ+関連の描写を監修する取り組みがなされています。
オデコちゃんの母親・由美子を演じたみやべほのさんは、LGBTQ+への理解がなく無自覚に差別的な表現を使ってしまう役のため「このセリフを自分が言うのかという葛藤」があったそうですが、ミヤタさんの存在が「心強くて、相談できてありがたかったです」と、現場の配慮に助けられたと話しました。
また、この日は荒木さんがピンク、ドリアンさんが青、みやべさんが緑の衣裳で登場しましたが、落合監督は「ぼくの作品はキャラクターで色があったりするんです」と、オデコちゃんはカーディガンやマフラーをピンクであったり、由美子のいるリビングルームが緑であったり、クマさんも衣裳などが青だったりと、映画の中でもそれぞれの色が意識して使われていることを紹介。落合監督は3人の演技について「3人の、ピンク、青、緑のケミストリーがうまく重なって、奇妙な色合いを出していたような気もします」と、タイトルの「ストレンジ=奇妙」を織り込みながらコメントしました。
トークでは登壇者それぞれに作品に込めた想いが質問されました。
部屋がぬいぐるみでいっぱいなほど可愛いものが好きで、家族から「女の子っぽ過ぎない?」と言われることもあるという荒木さんは、いままでそれを特に意識していなかったのが『ストレンジ』をきっかけに「別にいいじゃん」と思うようになったそう。「自分がいままで意識していなかったことと、いままで考えていたけどもう一回向き直そうと思ったりしたことが、観ていただいた方に伝わって、観ていただいた方々の心が動けばいいなと思いました」。
もともと原作コミックを読んでいて「すごく好きな作品だったので、そちらの映像化に参加させていただけるということ自体が、すごく嬉しかったんです』というドリアンさんは「実際にドラァグクイーンをやっている人間だからこそ、なにかしら描けたり表現できるものがあるんじゃないかなと思って参加させていただいたというところもありまして、本場仕込みのドラァグクイーンでした」。
SNSでさまざまなセクシャリティの友人が増えたときに『ストレンジ』と出会い「私がやりたいという気持ちが」強かったというみやべさんは「私は女性という立場でつらいことがあったり、でも自分が多数派のときもあったり、マイノリティでありマジョリティであると普段思っているので、その自分だからこそできる演技があればいいなと思って参加しました。ひとりでも多くの方に届けばいいなと思っています」。
落合監督は現在、大学院の准教授として教育にも携わっており、大学院で学んでいた真田静波プロデューサーと作ったのが『ストレンジ』だと説明し、教授業をしていると話すのに気恥ずかしさもあったのが「この作品も教授業をやるということから出会えた作品ですし、教授業も好きなんだと胸を張って言えるんだということが、ぼくの中でこの作品を作ってほんとによかったと思っていることです」と話すと「つるき先生の原作と、みなさんとの出会いに感謝しています」と感謝の言葉で締めくくりました。
トーク中の荒木飛羽さん、ドリアン・ロロブリジーダさん、みやべほのさん、落合賢監督督
撮影時のエピソードからそれぞれのプライベートに迫る話まで、さまざまな話題が飛び出したトークセッションは、ドリアンさんが「あと4時間やる?(笑)」と言うほど盛り上がりを見せましたが残念ながら予定の時間に。
“新世代ポップマエストロ”と呼ばれるシンガーソングライターのCharm(チャーム)さんによるにソロユニット・THE CHARM PARKが主題歌を担当するという新情報の告知もおこなわれ、完成披露試写会は幕を閉じました。
『ストレンジ』は、アジア最大級の国際短編映画祭「SHORTS SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2023」のジャパン部門に選出され6月25日日曜日に表参道スペースオーで上映され翌26日月曜日より7月10日月曜日までオンライン配信されるのをはじめ、海国内外の映画祭へ出品。最新情報が公式サイトやTwitter、Instagramで発信されています。