ゲイの老絵本作家と男性相手に自らを売る若者の物語を田村泰二郎さんと水石亜飛夢さんんのダブル主演で描く東海林毅監督『老ナルキソス』が5月20日に公開されることが決定し、メインヴィジュアルが解禁されました。
トランスジェンダー女性を主人公にした短編『片袖の魚』(2021年)が国内外で話題となった東海林毅監督は、コミック・ゲーム原作映画の監督やVFXアーティストとして商業作品に携わりつつ、自主制作で作家性の強い作品を発表してきました。
自身がバイセクシャル当事者である東海林監督は作品を通してLGBTQ+と社会の関わりに焦点を当てることが多く、2017年発表の短編『老ナルキソス』は、日本最大級のLGBTQ+映画祭である第27回レインボー・リール東京でグランプリを受賞するなど国内外のLGBTQ+映画祭で10冠を獲得。その短編が東海林監督自らの手により長編映画化を果たします。
長編『老ナルキソス』は、まだ「ゲイ」という言葉すら一般的でない時代から日陰者として生きてきたナルシストの老絵本作家と、すでに性的マイノリティの存在が可視化された時代に生まれ育った男性相手に自分を売る若者が主人公。世代も考え方も異なるふたりの関係の中で、同性愛者たちの過去と未来の「家族」の物語が綴られていきます。
マーティン・スコセッシ監督『沈黙-サイレンス-』(2016年・米)やアレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』(2005年・露,伊,仏,瑞)と海外作品にも出演する名バイプレイヤーの田村泰二郎さんが、短編版『老ナルキソス』に続いて主人公である老絵本作家の山崎を演じて長編映画初主演。
男性相手に自分を売る若者・レオを演じるのは『国民の選択』(2021年/宮本正樹監督)『黄龍の村』(2021年/阪元裕吾監督)に主演するなど幅広いジャンルで出演作が続く水石亜飛夢(みずいし・あとむ)さん。
世代の異なるふたりの俳優がダブル主演をつとめるほか、レオのパートナー役をテレビドラマや舞台で活躍する寺山武志さん、山崎の青年時代を『HANNORA』(2022年/明石和之監督)主演などの田中理来(たなか・りく)さんと若手俳優が出演。
さらに、タレントとして知られる日出郎さん、独特の存在感を見せるモロ師岡さん、劇団・猫のホテルを主宰し監督・脚本家としても活躍する千葉雅子さん、日本映画界に欠かせない津田寛治さんらが脇を固め、ベテランの村井國夫さんが山崎のかつての恋人を演じます。
また、音楽は『舟を編む』(2013年/石井裕也監督)で第37回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞したほか数多くの映画音楽を手がける渡邊崇さん、撮影は短編版『老ナルキソス』や『片袖の魚』などこれまでも東海林監督作品の多くに参加し大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ヴィジュアルディレクターもつとめた神田創さんと、精鋭スタッフが参加しています。
解禁されたメインヴィジュアルは、山崎と彼を後ろから抱きかかえるレオのふたりが水面に映る、水面に映る自分に恋をしたギリシャ神話のナルキソスを連想させる構図となっています。
東海林毅監督のオリジナル作品では初の長編作品であり、パートナーシップ制度は「ある」が同性婚は「ない」という状況の中で「家族」のあり方を問いかける『老ナルキソス』は、5月20日土曜日より新宿K's cinemaほか全国順次公開されます。
『老ナルキソス』ストーリー
ゲイでナルシストの老絵本作家山崎は、自らの衰えゆく容姿に耐えられず、作家としてもスランプに陥っている。ある日ウリセンボーイのレオと出会い、その若さと美しさに打ちのめされる。しかし、山崎の代表作を心の糧にして育ったというレオ――自分以外の存在に、生涯で初めて恋心を抱く。レオもまた山崎に見知らぬ父親の面影を重ね合わせ、すれ違いを抱えたまま、二人の旅が始まる…。