8ミリ映画作りに奮闘する高校生たちの姿を小中和哉監督が上村侑さんを主演に描く青春グラフィティ『Single8』(3月18日公開)の本予告が解禁。また公開を記念して小中監督や同時代の監督たちの8ミリ作品を上映する「8mm映画復活祭」が3月2日より4日までユーロスペースで開催されることが発表されました。
『Single8』は、初劇場公開作『星空のむこうの国』(1986年)以降、数々の作品を送り出すSF・ファンタジーの名手であり、テレビシリーズ「ウルトラマンダイナ」「ウルトラマンネクサス」やリアル志向ウルトラマンの先駆的映画『ULTRAMAN』(2004年)など「平成ウルトラマンシリーズ」を支えてきた小中和哉監督が、自らの高校時代をもとに描く自伝的作品。
世界を熱狂させたSF映画『スター・ウォーズ』が日本で公開された1978年を舞台に、文化祭での上映を目指して8ミリカメラでの特撮映画作りに挑む高校生たちの奮闘が描かれていきます。
『Single8』メインスチール。左より、福澤希空さん演じる喜男、上村侑さん演じる主人公・広志、桑山隆太さん演じる佐々木、髙石あかりさん演じる夏美
主人公の映画好きの高校生・広志を演じるのは『許された子どもたち』(2020年/内藤瑛亮監督)主演をはじめ話題作出演が続く上村侑さん、広志の映画作りを手伝う友人の喜男役にはダンス&ボーカルグループ・WATWING(ワトウィン)のメンバー・福澤希空(ふくざわ・のあ)さん、映画作りに加わる同級生・佐々木役には同じくWATWINGの桑山隆太さん、広志がひそかに想いを寄せる同級生で広志たちの映画でヒロインをつとめる夏美役には『ベイビーわるきゅーれ』(2021年/阪元裕吾監督)主演で話題となり同作続編も含め出演作が続々公開される髙石あかりさんと、撮影時には全員10代の若手キャストが1970年代の高校生役に挑んでいます。
「じゃあ、行こうか。本番、ヨーイ!」のセリフで幕を開ける予告編は、映画作りに試行錯誤する広志たちの奮闘に、広志たちが作る劇中映画の場面も盛り込まれ「映画を作る」ことの魅力が詰まったものとなっています。
そして、3月18日の『Single8』公開に先駆け、『Single8』の舞台となった時代の近辺に制作された8ミリ映画の傑作を上映するイベント「8mm映画復活祭」が3月2日より4日までの3日間、ユーロスペースで開催されます。
1970年代、8ミリカメラの普及により、映画作りに憧れる多くの若者たちがこぞって8ミリでの自主映画を制作に乗り出し、小中監督のようにプロの監督などとして映画界で活躍するようになった才能も少なくありません。
今回の「8mm映画復活祭」では、自主映画シーンが盛り上がった黄金期である1980年前後の8ミリ映画の傑作を、劇場に8mm映写機を持ち込んで上映し、さらに監督たちによるトークもおこなわれるという、豪華な内容となっています。
「8mm映画復活祭」は1日ごとにテーマを定め異なった作品が上映されます。
3月2日木曜日は「8ミリ特撮&アニメ」。現在も特撮ヒーローや怪獣への愛情あふれる作品を送り出し続ける河崎実監督が8ミリ時代最後に作り上げたSFヒーロー映画『エスパレイザー』(1982年)と、小中和哉監督が幼いころに遊んだくまのぬいぐるみをモチーフに制作したスペースオペラ『地球に落ちて来たくま』(1982年)、『Single8』に登場する「進藤」のモデルである進藤丈夫監督がシネ・カリグラフという技法で制作した短編アニメ『MARK』(1982年)の3作品が上映されます。
『エスパレイザー』『地球に落ちて来たくま』は、どちらも8ミリでは不可能と思われたような高度な特撮シーンを実現し、8ミリ映画の限界を超えた特撮映画として当時話題となった作品。『MARK』はフィルムに鉄筆で直に絵を描くシネ・カリグラフという技法の達人である進藤監督による8ミリでのシネ・カリグラフの到達点とも言える作品で、当時の8ミリ映画での技術面を追求した3作品の一挙上映となります。
トークには、河崎実監督と進藤丈夫監督、小中和哉監督が勢揃い。
3月3日金曜日は「葉っぱ2枚の上映会 AGAIN!」。現在、脚本家として活躍し小中監督と組んだ作品も多い小林弘利さんと、少女の青春期を描き続け『Single8』にも参加している今関あきよし監督は、かつて「MOVIE MATE 100%」という映画グループを結成、同グループでは「葉っぱ2枚を持ってくれば入場無料」というユニークな上映会を開催していました。その上映会に集った仲間たちが再集結するのがこの日の上映。
ぴあフィルムフェスティバル '79に入選した今関監督の『ORANGING '79』(1979年)、同じくぴあフィルムフェスティバル '79入選作の手塚眞監督『UNK』(1979年)、ぴあフィルムフェスティバル '81入選作で高校在学中の小中和哉監督が出演者として参加している手塚眞監督『HIGH-SCHOOL-TERROR』(1979年)、小中監督が高校在学中に監督し「1979年日本を記録する8ミリフェスティバル」で高校生部門大賞を受賞した『TURN POINT 10:40』(1979年)の4作品の充実のラインナップ。さらにシークレット作品の上映も用意されています。
トークには、今関あきよし監督、手塚眞監督、小中和哉監督と上映作品の監督に3人に加え、同時代に自主映画シーンで活躍した犬童一心監督、MOVIE MATE 100%結成メンバーの小林弘利さん、上映作『ORANGING '79』で主演をつとめた映画評論家の三留まゆみさんが出演します。
この日上映される『TURN POINT 10:40』は『Single8』劇中で広志たちが制作する映画『タイムリバース』のもととなった作品で、この機会にオリジナルを鑑賞してから『Single8』を観るのも面白いでしょう。
また、手塚眞監督『HIGH-SCHOOL-TERROR』では演技する小中監督が見られるのも注目点。同作の紹介写真に写る“白目男”を演じているのが高校時代の小中監督です。
3月4日土曜日は「成蹊高校で生まれた映画たち」。小中監督が在籍した成蹊高校映画研究部には、小中監督の一学年上にのちにヴィジュアリストとして活躍する手塚眞監督、小中監督の二学年下にはのちにテレビ局プロデューサーとして「ケータイ刑事」シリーズや「怪談新耳袋」シリーズなどを手がける丹羽多聞アンドリウさんが在籍するなど、多くの才能が集まっていました。
3日間の最後を飾るこの日は、小中監督を含め同学年の3人が1980年に作った3作品が上映されます。
日本映像フェスティバル高校生部門グランプリと東京都知事賞を受賞し自主映画の名作と称される寺田裕之監督『終』(しゅう)、のちに「利重剛」の名前で俳優・映画監督として活躍する笹平剛監督のぴあフィルムフェスティバル '81受賞作『教訓Ⅰ』、富士8ミリコンテストグランプリを受賞した小中監督の『いつでも夢を』。
トークには、利重剛監督、寺田裕之監督、小中和哉監督の成蹊高校映研の同学年3人が揃います。
これだけの8ミリ映画の名作群が一度に、8ミリ映写機で劇場のスクリーンに上映される機会は、おそらく今後二度とないであろう貴重な上映イベント。
また、1979年から1982年までに制作された、いわば「その後の広志たち」や「広志の仲間や先輩たち」の作った作品群を鑑賞することで『Single8』劇中の時代をよりディープに感じられる機会ともなることでしょう。
早くも“映画作り映画”の新たな傑作との評価も高まる『Single8』は3月18日土曜日よりユーロスペースほか全国順次公開。
往年の8ミリ映画の名作が奇跡の集結を果たす「8mm映画復活祭」は3月2日木曜日から4日土曜日まで同じくユーロスペースで開催されます。
映画作りへの情熱を描いた『Single8』、その情熱の結晶である作品が揃った「8mm映画復活祭」、どちらも注目です。