女性記者と女性映画ライターのみが審査員をつとめる“女性による女性のための映画賞”として新たに設立された「女性記者&ライター映画賞」の第一回受賞作品・受賞者が決定し、作品賞には『ケイコ 目を澄ませて』、監督賞には早川千絵監督が選ばれました。
「女性記者&ライター映画賞」は「コロナ禍で冷え切った映画業界を盛り上げたい」「映画業界のジェンダーギャップをなくしたい」という目的を掲げて活動するグループ・映キャン!が新たに設立した賞。
映画の制作現場のみならず映画ライターや映画賞の世界でもジェンダーギャップが依然解消されない現状がある中で、その状況に一石を投じるべく、映画ライター・コラムニストの渥美志保さんと映画パーソナリティの伊藤さとりさんが発起人となり、審査員全員が女性の「女性記者&女性ライターが選ぶ映画賞」が設立されました。
授賞の基準は「女性をエンパワーメントする作品」とされ、前年4月から当年3月までに公開された作品を対象に、作品賞、監督賞、女優賞、男優賞、新人賞、外国語映画賞を選出。外国語映画賞を除く5賞は邦画が対象となっており、監督賞は女性監督のみが対象となっています。
受賞作品・受賞者の発表は、3月25日土曜日21時より、YouTubeの生配信でおこなわれています。
作品賞に選ばれたのは、耳の聞こえない女性プロボクサーを主人公にした岸井ゆきのさん主演の『ケイコ 目を澄ませて』(2022年/三宅唱監督)。
監督賞には、75歳以上が自らの生死を選択できる架空の制度を通して「生きる」というテーマを描いた『PLAN75』(2022年)の早川千絵監督。
主演女優賞には『PLAN75』の倍賞千恵子さん。
主演男優賞には、カルト団体に所属するふたりの男とひとりの女の孤島での生活を描いた『ビリーバーズ』(2022年/城定秀夫監督)の磯村勇斗さん。
新人賞には、在留資格を失った在日クルド人少女を主人公にした『マイスモールランド』(2022年/川和田恵真監督)で主演をつとめた嵐莉菜さん。
また、外国語映画賞には『セイント・フランシス』(2019年・米/アレックス・トンプソン監督)が選ばれました。
受賞にあたり、早川千絵監督は以下のようにコメントを発表しています。
監督賞:早川千絵監督(『PLAN75』)受賞コメント
この度は第一回「女性記者&女性ライター映画賞」の監督賞に選んでいただき ありがとうございます。昨年は国内外、行く先々で様々な方から「女性の監督が活躍してくれて嬉しい」「女性監督に頑張ってもらいたい」という声をかけていただき、映画業界のジェンダーギャップに問題意識を持っている人が多くいることを肌で感じました。また、自分が実際に監督として映画業界に足を踏み入れたことで、これまで意識してこなかった業界の男女の数の差、意思決定の場に圧倒的に女性が少ないことを目の当たりにしました。日本の主要な技術スタッフの映画賞に、女性が従事することの多い衣装やヘアメイクのカテゴリーがないことについても、初めて疑問を持つようになりました。「女性による、女性のための日本の映画賞」が作られたことはとても喜ばしく、映画業界のジェンダーギャップをなくしていくための意識改革につながることを祈っています。私も監督の立場からできることは何か、考えることを怠らず、諦めず、これからも映画を作り続けたいと思います。
第一回「女性記者&ライター映画賞」作品賞『ケイコ 目を澄ませて』より。岸井ゆきのさん演じる主人公・小河ケイコ
「女性記者&ライター映画賞」を設立した映キャン!は、同賞の発起人でもある伊藤さとりさん、渥美志保さんと、映画記者の平辻哲也さん、朝日新聞の石飛徳樹さんの映画業界有志4人により2020年に活動を開始したグループ。「コロナ禍で冷え切った映画業界を盛り上げたい」「映画業界のジェンダーギャップをなくしたい」という目的のもと、月に1度YouTube配信「映キャン!Live」をおこない、年に1度「映キャン!賞」を発表してきました。
「女性記者&ライター映画賞」は映キャン!の活動の第二章と位置づけられるもので、同賞の今後や映キャン!のこれからの活動にも期待が持たれます。