若手監督の登竜門となっている田辺・弁慶映画祭とTAMA NEW WAVEのふたつの映画祭でグランプリダブル受賞を含め５冠を獲得した大西諒監督『はこぶね』が９月９日より東京のポレポレ東中野で単独公開されることが決定しました。

　『はこぶね』は、30歳のときに映画経験ゼロで映画美学校フィクション・コースに入学して映画を学んだ大西諒監督の、初の長編監督作。
　さびれた小さな港町を舞台に、事故で視力を失った青年・西村芳則を主人公にした物語で、自主映画・商業映画を問わず数々の作品で幅広い役柄を演じる木村知貴さんが主演をつとめています。

　障害や介護、地方の疲弊といった厳しい現実を題材としながらも、感性を失わずに生きる西村が周囲の人々の心を震わせていく人間模様を丁寧に描いたドラマは多くの支持を集め、第16回田辺・弁慶映画祭ではグランプリと観客賞、フィルミネーション賞の３冠に加え主演の木村知貴さんがスペシャルメンションを獲得、第23回TAMA NEW WAVEではグランプリとベスト男優賞の２冠を獲得と、若手監督の登竜門として定評のある映画祭で高評価を得ました。

　田辺・弁慶映画祭受賞作の特集上映「田辺・弁慶映画祭セレクション２０２３」内で８月４日より１週間にわたりテアトル新宿で上映され連日の盛況を記録、単独公開を求める声が高まる中、ポレポレ東中野での単独公開が発表されました。

　単独公開にあたり、大西監督と主演の木村さんは次のようにコメントを発表しています。

主人公・西村芳則役：木村知貴さんコメント

生きてると色々ありますが、この映画を観てちょっとだけ気持ちが軽くなったり、それでも生きていこうと思って貰えると嬉しいです。

大西諒監督コメント

最初は自分が自分のために書いていた物語が、映画祭の受賞をきっかけに多くの人に観て頂くこととなり驚いています。本作は中途視覚障害や認知症という題材ではありますが、私が自分自身を見つめ直すために作ったようなとてもパーソナルな面を持った作品です。是非ご覧頂けると嬉しいです。

　また、単独公開にあたり、俳優・監督などから作品に寄せられたコメントを紹介するコメント予告が制作されています。>
　出演作が続々と公開される俳優の磯村勇斗さんが「世の中を窮屈にさせているのは自分の感性かもしれない。盲目の青年から僕は気付かされた。」と作品を評しているほか、主演の木村さんを絶賛する声が多く、瀬々敬久監督は「木村知貴の目が良い」、アメリカ在住で木村さん主演『マニアック・ドライバー』（２０２１年）のメガホンをとった光武蔵人（みつたけ・くらんど）監督は「木村知貴は世界一の映画俳優だと確信した」と、それぞれコメント。
　予告コメントではこのほか多くの映画関係者や著名人から寄せられたコメントが、映画本編の映像とともに紹介されています。

　主演の木村知貴さんのほか、主人公・西村と再会を遂げるかつての同級生で東京で役者をしている大畑碧役に゙高見こころさん、西村の生活の面倒を見ている伯母の中島知里役にマンガ家・映画監督としても知られる内田春菊さん、西村の祖父で認知症が進む西村滋役を主演作『寛太と、じいちゃんの世直しチャンネル』（２０２３年／芦田健介監督）も控えるベテランの外波山文明さん、さらに五十嵐美紀さん、愛田天麻さん、森海斗さんら実力派俳優が揃い“ただ、そこで生きること”の美しさを描き出していく『はこぶね』は、９月９日土曜日より東京のポレポレ東中野で上映、ほか全国順次公開されます。

『はこぶね』ストーリー

事故で視力を失った西村芳則(木村知貴)は､小さな港町で､ときに伯母(内田春菊)に面倒を見てもらいながら生活している。
かつて同じ通りの家から一緒に通学していた同級生の大畑(高見こころ)は､東京で役者をしながら､理想と現実の狭間で憂鬱なときを過ごしていた。
ある日､西村は大畑と偶然再会する。町にはゆっくりと陽が落ち､そこで暮らす人々はそれぞれの帰路に着く。
窮屈で､美しい､その町を眺める二人は､その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。