太田真博監督が自らの逮捕経験から着想した劇場長編デビュー作となる『エス』が2024年1月19日よりアップリンク吉祥寺で公開されることが発表され、ポスターヴィジュアルと場面写真、特報映像、映画監督や脚本家など映画関係者からの応援コメントが解禁されました。
逮捕された映画監督を巡る再会と断絶のストーリー 太田真博監督『エス』2024年1月公開
『エス』は、逮捕された若手映画監督・染田真一の演劇仲間たちが嘆願書を書くために集まり、“エス”こと染田についての話を交わしていくストーリー。
太田真博監督は2006年から映画制作を開始し、監督作が各地の映画祭で受賞するなど新進気鋭の映画監督として期待された矢先の2011年、不正アクセス禁止法違反などの容疑で逮捕。その後『園田という種目』(2015年)など自らの経験から着想した作品を送り出し、初の劇場公開長編作として本作『エス』を生み出しました。
太田監督と演劇映画ユニット「松田真子」を結成して活動し『園田という種目』で主演している松下倖子さん、ENBUゼミナールシネマプロジェクト作品『河童の女』(2020年/辻野正樹監督)主演の青野竜平さんら、インディーズ作品を中心に活躍する俳優陣に加え、長いキャリアを持つ河相我聞さんが出演しています。
解禁された特報は、逮捕された染田について友人たちが交わす会話が軽快な音楽に乗って映し出され、30秒の短さながら作品の雰囲気を感じさせる映像となっています。
また、『ゴールデンスランバー』(2009年)などで知られる映画監督の中村義洋さん、映画『長いお別れ』(2019年/中野量太監督)やテレビアニメを手がける脚本家の大野敏哉さん、『凶悪』(2013年/白石和彌監督)『君は放課後インソムニア』(2023年/池田千尋監督)などの脚本家・高橋泉さん、『空(カラ)の味』(2016年)の映画監督・塚田万理奈さんらが応援コメントを寄せています。
映画監督:中村義洋さんコメント
もういい加減こういうのじゃない映画を撮ったんだろうと思って、でもそれがべらぼうに面白かったら、こいつ全然反省してねーなとか思っちゃうのかな、とか思いながら観たら、やっぱりこういうのか!と、その瞬間から私は、登場人物の一人になった。
1つの出来事を何年も見つめ続けた奴にしか描けないと思う。登場人物は紛れもなくそこに居て、作劇を忘れる。嘘がない。誠実だ。・・・でもそれも、本当に? と疑わしさを漂わすあたりがまた 「ちょっと気持ち悪い」エスの作品である。
脚本家:大野敏哉さんコメント
太田真博は人間を好きすぎる。
彼の映画はいつも問いかけてくる。あなたにとって人間とはなんなのか。あなたは人間と何を話し、何を分かち合おうとしているのか。
この「エス」もそうだ。彼の作品独特の、ふざけ合う会話が問いかけてくる。あなたは誰の友達で、誰の他人なのか。考えているうちに映画は終わる。
あんなに難しい問いだったのに、あの独特な会話の中に入ってもう一度考えたいと思っている自分に気づく。
脚本家:高橋泉さんコメント
友人とのスタンスを見失った登場人物たちが、自分の気持ちを探して喋り続ける。
ムダ話の語彙力高めなのに、その力を本題では発揮できないという皮肉に笑い、
空回りし続けた先に生まれた熱風に、巻き込まれて泣いてしまった。
シネマハウス大塚支配人・映像作家:後藤和夫さんコメント
2018年、私はとんでもない映画に出会ってしまった。私の主催するシネマハウス大塚で開催された「インディーズ映画祭」。
そこで上映された太田真博監督の『園田という種目』である。
突然そこからいなくなった男“園田”。残された者たちの園田をめぐる果てしない会話。
果たして園田とは何者か。饒舌の果てに見えてくるもの。私たちは他人の何を知っているのか。何を知らないのか。私たちは私たちの何を知っているのか。
飛び交う言葉にゲラゲラ笑いながらも、背筋がぞっとするような体験。
まさに笑劇的な作品だった。
その後太田作品をことごとく観ることになり、私は太田監督がこだわる「不在をめぐる冒険」にたどり着いた。そこにいない人物をめぐって、残された人間たちが、想像や思い込みや、果ては妄想も交えて語り合う。それは会話のバトルだけでなく、役者の演技バトルでもある。まるで、ロバート・アルトマンの群像劇を見ているようなスリリングな面白さ。
そしてそこに流れる哀しみもまた。人はつながりを求め会っているのに傷つけあう厄介な存在。時にブニュエルのように残酷に、時にウディ・アレンのように身もふたもなく、太田ワールドは私たちを翻弄する。
『園田という種目』のバージョンアップともいうべき本作品。「不在を埋める何か」を発見できるかも しれない。
映画プロデューサー:前田和紀さんコメント
膨大な台詞量に圧倒されました。
犯罪を犯してしまった男が所属していた劇団時代の仲間たちの群像劇。仲間たちが、その男を軸に、くりひろげる一見、意味のないような無駄話も、彼らの過ごしてきた空気、時間が垣間見え、映画を支えてる。
人の弱さ、あやうさ、立場、後悔の念、意思、それぞれの感情や行動が、リアルにせまってきて、自分は、この中の誰かかもしれない。そう自問自答した。
友人が捕まったとき、果たして自分は、、、 映画冒頭からぐいぐいと迫ってきて、気付けばエンドロールが。。。没入しました。
映画監督:塚田万理奈さんコメント
怖い監督です。そして変態。
役者の内面と、自分自身をガン見しながら、笑いながら、笑っていない。
あいつって私のこと本当はどう思ってんだろ、皆なんて言ってんだろ。知りたい、でも怖い、いやだ掘らないでくれ。
不在の人間を語る、見事な台詞達と厳しい演技演出による群像劇。
ど天才です。近づきたくない。 けど太田さんという監督を知った時、私は天を仰いで興奮しました。世間に知られてないのが悔しくもなった。
福井映画祭実行委員会 事務局長:有元真一さんコメント
太田監督の持ち味は、すべての役者の機微を的確に撮る事で、まるでその場にいるような臨場感を映画に宿すところにある。
それぞれの本音が伝わるようなこの感覚は何だろうか。 自ら招いた過ちの顛末や周りの人たちと向き合い、過ごした日々がこの映画には映されているのだろう。前に進むためには撮らなくてはいけない映画なのだと。
太田監督にしか描けない境地を是非見てほしい。
「逮捕された映画監督“S”は10年来のトモダチだった」というコピーも印象的な「エス」。映画監督としての未来も、それまでに築き上げた人間関係の多くも失った“S”こと染田を巡る、事件報道から始まる再会と断絶のストーリー『エス』は、2024年1月19日金曜日より、東京のアップリンク吉祥寺にて公開。
公開に向け、X(旧ツイッター)、Facebook、Instagramの各SNSに作品公式アカウントが開設されており、最新情報を発信しています。
『エス』あらすじ
若手映画監督・染田真一が逮捕された。
染田の大学時代の演劇仲間たちは、嘆願書を書く目的で久しぶりの再会を果たす。
染田の新作に主役として出演するはずだった、崖っぷち俳優の高野(青野竜平)。自称“染田との絆が 最も深い”先輩、鈴村(後藤龍馬)。そして染田への想いをこじらせ散らかした挙句、別の男性と結婚したばかりの千穂(松下倖子)。
染田の力になってやりたい。想いはひとつ、のはずだった。
エス
- 松下倖子 青野竜平
後藤龍馬 安部康二郎 向有美 はしもとめい
大網亜矢乃 辻川幸代 坂口辰平 淡路優花 石神リョウ 篠原幸子 中尾みち雄 ノブイシイ 岡山甫 高村明裕 太田真博 松永直子 / 河相我聞 - 監督・脚本・編集:太田真博
- プロデューサー:上原拓治
- 撮影監督:芳賀俊
- 録音:柳田耕佑
- 助監督:山田元生
- 特機:沼田真隆
- 撮影助手:中川裕太
- 監督助手:玉置正義
- 車輌:堀田孝
- スチール:ViVi小春/浦川良将
- カラリスト:五十嵐一人
- 音楽:窪田健策
- 劇中台本:大野敏哉
- 宣伝:Cinemago
- 制作プロダクション:株式会社上原商店
- 2023年/カラー/アメリカンビスタ/DCP/5.1ch/110分
2024年1月19日(金)より アップリンク吉祥寺にて公開