映画界で活躍する中堅・若手スタッフによる完全自主製作で作られた、殺人犯の父を持つ娘の物語『誰が為に花は咲く』(藤原知之監督)が、2024年1月26日よりアップリンク吉祥寺で上映されることが発表されました。
殺人犯の娘はどう生きるのか? 湯川ひなさん主演『誰が為に花は咲く』1月26日公開決定
『誰が為に花は咲く』は、凶悪な殺人事件を起こして逃亡中の父親を持つ高校生・椿が主人公。「普通」でいることを許されない人生を送らざるを得ない椿やその周囲の人々を通して、自分の親が絶対的な“悪”の一面を持っていたときに子は親を拒絶するのか、愛を求めるのか、そしてお互いのすべてを理解できるわけではない感情の奥底になにがあるのか、というテーマが描かれていきます。
完全オリジナルの脚本を執筆しメガホンをとったのは『幸せの青い鳥居』(2012年)『U・F・O』(2015年)『無題』(2021年)など短編作品が各地の映画祭で受賞するほか、商業長編作品『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。』(2018年)やテレビドラマの演出も手がける藤原知之監督。
『タイトル、拒絶』(2019年/山田佳奈監督)『ミッドナイトスワン』(2020年/内田英治監督)などに参加する撮影の伊藤麻樹さんをはじめ、映画界で活躍する中堅・若手スタッフによる完全自主製作映画として製作されました。
主人公・佐久間椿を演じるのは、第33回サンダンス映画祭短編部門グランプリ受賞作『そうして私たちはプールに金魚を、』(2016年/長久允監督)主演の湯川ひなさん。
そして、椿に寄り添う刑事の真島絢斗には『恋い焦れ歌え』(2021年/熊坂出監督)『間借り屋の恋』(2021年/増田嵩虎監督)などに出演する髙橋里恩(たかはし・りおん)さん。椿の父親で殺人を犯し逃亡する佐久間秀明にはお笑いタレントで映画『あまのがわ』(2018年/古新舜監督)など俳優としても活躍するマツモトクラブさん。椿の母親で離婚により姓が変わった光本小百合には長いキャリアを持つ小島聖さん。秀明に息子を殺された矢野豊には『かぞくへ』(2016年/春本雄二郎監督)『鬼が笑う』(2021年/三野龍一監督)などの梅田誠弘さん。幼少期の椿に藤原監督『無題』出演の奥村心結(おくむら・みゆ)さん。若手からベテランまで幅広いキャストが集結しました。
さらに、椿を支える祖父・宗六役で2022年に惜しくもこの世を去った名優・渡辺裕之さんが出演。遺作のひとつとなった本作では演技だけでなく現場での姿勢でもスタッフ・キャストを導き、作品に一層の厚みを与えています。
解禁された予告編は、秀明の起こした事件を伝えるニュースの音声に乗せて高校生の椿と、過去の椿と父親の姿などが映し出され、椿や家族、周囲の人々が抱えるものの大きさを感じさせる2分間の映像となっています。
公開決定にあたり、藤原知之監督と主演の湯川ひなさん、藤原監督をよく知る映画監督の堤幸彦さんがコメントを発表。
藤原監督は「この作品に触れることで何かを感じてくれる人がいるのなら 届けたいと思いました」、湯川さんは「椿の為人(ひととなり)を、監督と話し合いながら大切に演じました」と、それぞれ作品への想いを語り、堤さんは「きっと本能的に藤原視線はたった一つのアングルで人間を撮ることができないことを知っている」と作品を評しエールを送っています。
脚本・監督:藤原知之監督コメント
映画を作るということは自分の生き方と正面から対峙して目を逸らさず見つめ直す作業でもあるので毎回苦しいのですが、今作は特にそう感じました。自分にこの題材を扱う資格があるのか。結局答えは出ず、自問自答しながら撮影する日々でした。
しかし撮影をしながら主人公・椿が不器用にいろんなことを模索しながら生きる様を見て、 自分の資格云々は置いといて、椿を多くの人に見てもらいたい、この作品を多くの人に見て貰いたいと強く思いました。この作品に触れることで何かを感じてくれる人がいるのなら届けたいと思いました。見てくれた人にどういう感情が芽生え、どういう疑問や不条理を感じるのか見てみたいと思いました。この作品は上映がゴールではなく、見てくれた人の中でも動き続ける、そんな作品になればと思っています。
ぜひご覧ください。
主人公・佐久間椿役:湯川ひなさんコメント
いよいよ公開されること、楽しみであると同時に緊張が高まっています!
私が演じた椿の人生は、2時間では語りきれない程の壮絶なものでした。自分が演じることで、劇的で大きな出来事の感情にだけ目が向けられることを恐れました。椿と自分の間にある距離を、部外者的な目線で埋めてしまわないためにも、むしろ見逃してしまうような瞬間にこそ表れる椿の為人を、監督と話し合いながら大切に演じました。けれども私は結局、椿のような立場で人生を送る人たちにとって部外者であることに変わりはなく、その葛藤は今でも続いています。皆さんにご覧いただくことは少し怖いです…。でもやっぱり嬉しい気持ちが強いです。何かを受け取ってもらえたら嬉しいです!
堤幸彦さん(映画監督)応援コメント
大事な仲間である藤原知之君のオリジナルムービーである。
しかし見始めてすぐ仲間であることや自主映画であることを忘れてしまう。あまりに丁寧に、人間の「ダークな意志」や「立っていることの脆さ」の感情を捉えているからだ。その感情達は「解放」を求めているが「予定調和的提示」はされない。きっと本能的に藤原視線はたった一つのアングルで人間を撮ることができないことを知っている。それは同時に私や彼を含む「日常としての映画作り」への静かで強烈なアンチテーゼであり、解体作業だ。
結果として「未完」の美しい作品ができ上がる。登場人物の誰にも例外なく等距離で感情移入できる。なぜならどの人物にも「私」が埋め込まれているからだろう。それが『映画』 なのだ。それこそが。
美しい斜光に「映画を見た幸福」がやってきた。
完成以来、先行上映やイベント上映をおこない、2023年9月にはアメリカ・ロサンゼルスにて開催されたJAPAN FILM FESTINAL LOS ANGELES 2023 でBEST FEATURE AWARD(最優秀長編作品賞) を受賞した『誰が為に花は咲く』が、いよいよ2024年1月26日金曜日より、アップリンク吉祥寺で初の本格的劇場公開。公開期間中には、監督・キャストによる舞台あいさつやトークイベントが予定されています。
『誰が為に花は咲く』ストーリー
高校3年生の椿(湯川ひな)は、将来について考えなければいけない時期をむかえていた。しかし椿は他の人とは違う環境にいた。椿の父・秀明(マツモトクラブ)は4年前に小学生を殺害する事件を起こして消息を絶ち、もう死んだと思われていた。
ある日、秀明に似た男が公園で子供に声をかけたと目撃情報が入る。しかし男は別人だった。警察に思いを吐露する椿。「私、目撃情報を聞いて『お父さんが生きていて嬉しい』と思っちゃったの。また小さい子が襲われかけたのに、私の心もお父さんみたいに壊れているのかもしれない」
2年後、椿の弟が行方不明になる事件が起こる。SNSに「卑劣な殺人犯の息子を殺害した」と犯行声明が出される。だが犯行声明はイタズラで、弟は無事だった。しかし今度は、弟を心配して出てきたであろう秀明が目撃されたという情報が入り…。
誰が為に花は咲く
- 湯川ひな
髙橋里恩 マツモトクラブ 小島聖 奥村心結 齋賀正和 梅田誠弘 / 渡辺裕之
松本優翔 阿部翔平 木村龍太 小松勇司 髙野旬二 瓜生真之助 上村侑 内海誠子 空 花 永瀬未留 森脇なな 青木崚 東虎之丞 長岩健人 後藤龍馬 高山璃子 ほか - 監督・脚本・編集:藤原知之
- プロデューサー・キャスティング:吉川春菜
- 撮影:伊藤麻樹
- 照明:石川裕士
- 録音・サウンドデザイン:桐山裕行
- スタイリスト:三浦玄
- ヘアメイク:小浜田吾央
- 美術:TENTEN
- 制作:梶本達希
- 音楽:Uta
- 助監督:小野裕昌・大西広晃
- スチー ル:迫村慎
- 製作・宣伝・配給:Memento Film Club 製作協力:Kinema Century Investment
- 2021年/119分
2024年1月26日(金)より アップリンク吉祥寺にて上映