タイトルにちなんで「招き猫」ポーズの今関あきよし監督、鎌田らい樹(かまた・らいじゅ)さん、増井湖々(ますい・ここ)さん、美咲姫(みさき)さん、大島葉子(おおしま・はこ)さん、佐伯日菜子さん(左より)。佐伯日菜子さんは服もアクセサリーも猫づくし
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瀬戸内海の島で暮らす3匹の捨て猫が主人公のファンタジー『しまねこ』が9月7日に新宿K's cinemaで初日を迎え、猫役で主演をつとめた鎌田らい樹さん、増井湖々さん、美咲姫さんら出演者と今関あきよし監督が舞台あいさつをおこないました。
『しまねこ』は、チョコ、ココア、ミントという名前の3匹の猫の日常や人間との触れ合いを、人間が猫を演じて描いていくユニークな発想のファンタジー。
原案もつとめた今関あきよし監督は、当初はまったく別の映画を撮る予定でロケ地である岡山県の北木島を訪れたところ「やたらと捨て猫、捨て犬が多くて、それが気になっちゃって」急遽、企画を変更したと映画の成り立ちを説明しました。
『しまねこ』の特徴のひとつが、セリフのほとんどが「猫語」であることで、ココアを演じた増井湖々さんは「最初(監督との顔合わせで)“猫語で”って言われたときに“なに?”って思って、みんな言葉が出なかったです(笑)。とにかく、どういうものになるのか、まったく想像ができなかったです」と、戸惑いもあった様子。
ミントを演じた美咲姫さんは「私は猫を飼っていなかったし、身近に飼っている人もいなかったので、飼われている猫よりかは、野良猫の動画を見て勉強させていただきました(笑)」と、この作品ならではの準備をしたことを告白。
チョコを演じた鎌田らい樹さんは、出演が決まったのが増井さんと美咲姫さんより遅かったため「私から見たら(増井さんと美咲姫さんが)完全にものにしていて、なんの躊躇もなくニャーニャー言ってたから、どうやって付いていこうかなって戸惑いましたね」と振り返りました
猫役の3人が戸惑いを語る一方で今関監督は「最初からぼくは行けると思ってたんで」とコメント。当初は人間の言葉で書かれた台本を元にアドリブで猫語で演じてもらおうとしたところ「ニャーニャーだけで終わっちゃってバリエーションがまるでないので」という理由から、脚本の小林弘利さんに依頼して人間の言葉とその猫語訳とセリフが2行で書いてある台本を書いてもらい「それを全部暗記してもらってお芝居してもらっている感じです」と明かしました。
3匹の捨て猫に餌をあげたりしてかわいがっている島の住人・朝日さんを演じた大島葉子さんは、猫役の3人と演技するにあたり「猫として接しないとダメだと」思ったため、共演シーンの多いミント役の美咲姫さんに「猫みたいにメッチャ触るけど気にしないでね」と事前に話して撮影に臨んでいたそう。触られる側だった美咲姫さんも「ほんとに猫になった気分で撫でられたので、私も猫になった気分で葉子さんにスリスリ遠慮なくいけたので、気持ちよかったです」と感想を述べました。
島の店の店主で猫を嫌うトキワを演じた佐伯日菜子さんは、実際には愛猫家にかかわらず猫嫌いの役で「ほんとに3人ともかわいくってキャッてなるんですけど、心を鬼にしてやっていました。鬼役です」と猫好きだからこその心情を吐露。また、トキワの秘めた感情が覗くラストのシーンについて「私、あのときほんとに“みんな幸せになってほしいな”って気持ちで、踊っている美咲姫ちゃんが本当にかわいくて“なんだろうこの感情は?”って、ほんとに泣きそうになっちゃって、それがいいシーンになったんじゃないかなって。いい気持ちでできたので、ありがとうございます」と振り返りました。
劇中ではココアとチョコが喧嘩をするシーンもあり、鎌田さんと増井さんは「“喧嘩どうする? どう喧嘩する?”って話し合って、もう練習するしかないってなって」(鎌田さん)、「“喧嘩まであと何日”って数えて、みんなで練習してました(笑)」(増井さん)と、宿舎で連日取っ組み合いの自主練をしていたそう。
人間の喧嘩ではなく猫の喧嘩に見えるようにどうしたらいいかの苦労もあったそうで「監督もなにも言ってくれなくて(笑)」(鎌田さん)「助言がなくて(笑)」(増井さん)というふたりに、今関監督は「猫のことそんなに知らないもん」ととぼけた口調で答えつつ「お芝居は想像力でございますから。もうバッチリでしたよ」と、猫らしい喧嘩ができていたと太鼓判。「3匹のキャラクターができていたので、任せておけば大丈夫という安心感の中でやっていたのはありますね」と、3人への信頼があったと話しました。
そして監督は「ほんとに楽しかった。映画は苦労することもありますけど、今回ほど楽しいことはなかったです。どうもありがとうございます」とキャストに感謝。また「もうひとつの主役は北木島」と、ロケ地である島の魅力が映画で大きな役割を果たしているとアピールしました。
今関監督は舞台あいさつの最後に、島で捨て猫を見たことが映画のスタートになったことに改めて触れ「人間の身勝手でこういう子たちが生まれてしまいますので、ぜひ責任を持ってかわいがってあげてください」と呼びかけました。
舞台あいさつ登壇者のほか、沖山マコトさん、平岡京子さん、利重剛さんらが出演し、猫たちのほのぼのとした日々の中に人の心の陰や生き物との関わり方を描いていく『しまねこ』は、9月7日土曜日より新宿K's cinemaほか全国順次公開されます。