謎の世界に迷い込んでしまった高校生ふたりが主人公の青春ＳＦラブストーリー『きみといた世界』が12月14日に初日を迎え、池袋シネマ・ロサでダブル主演の中川可菜さん、高橋改さんら出演者と政成和慶監督が舞台あいさつをおこないました。

　政成和慶監督の初劇場長編作品となる『きみといた世界』は、内向的で友達のいない男子・水野卓と、クラスの人気者で学級委員の女子・吉川碧衣（よしかわ・あおい）、同じクラスにいても対照的で交流のない高校生ふたりが主人公。ふたり以外に誰もいない謎の世界へと迷い込んでしまった卓と碧衣が、元の世界に戻るために互いの心を通わせ合い「両想い」になろうと試行錯誤していく姿と、その中で変わっていくふたりの心が描かれていきます。

　碧衣を演じた中川可菜さんは、ミニシアターで上映される映画で主演を飾りたかったそうで「夢が叶いました！」とあいさつし、客席の拍手に「ありがとうございます」と感謝。

　水野を演じた高橋改さんは、作品の宣伝活動などを通して「挙げていったらきりがないくらいのいろいろなご縁」があったと振り返り「映画の持つ力というか、映画が世の中の方々に愛されているのは、そういった理由もあるのかなと、身を持って感じております」と初日を迎えた心境を語りました。

　イラストレーターのarawakaさんと共同でオリジナルストーリーを作り上げ脚本を執筆した政成和慶監督は、はじめは「空気を読みすぎてしまう女の子が、いつも教室で寝ている男の子と、謎の世界に迷い込む」というストーリーだったところ、映画としては長くなりすぎるため現在のストーリーへと考え直したと、作品ができあがるまでに試行錯誤があったことを紹介。
　撮影がおこなわれたのは２年半前で、政成監督は、当初予定されていたＣＧの担当者が参加できなくなり、新たなＣＧ担当者を探さなくてはならなかったことや、担当者変更に伴いＣＧ制作に使うソフトも変更となったためプランを考え直す必要があったこと、監督のイメージを伝える作業をやり直さなければならなかったことや、実際のＣＧ映像が書き出されるまでの時間など、作品のひとつの見どころであるＣＧへのこだわりが公開まで時間がかかった理由のひとつとなっていることを明かしました。

　演じた碧衣と似ている点や違っている点を質問された中川さんは「高校時代の私は、自分で言うのもおかしいですけど優等生だったんですよ(笑)。そういうところが似ているかなって思います。違うところは、碧衣は周りにすごく愛されているようなキャラだったので、私は愛されているかは自分ではわからないので、そこが違うところかなって」と答え「私は碧衣のことがすごく好きで、演じていて“出会えてよかったな”って思えるので、碧衣というキャラクターはすごくいい女の子です」と、役への思い入れを感じさせるコメントを。
　また、碧衣が涙を流すシーンは、政成監督が「私がカットを割るのが好きなので」（政成監督談）という理由もあって、中川さんは「６時間くらい泣きっぱなしだったんです」とのこと。涙が枯れて「泣きたいけど涙が出ないというのは感じました(笑)」と振り返った中川さんは「映画を観ていただいて“このシーンかな？”って思っていただけたら嬉しいです」とアピールしました。

　高橋さんは、司会者から「高校時代、演じた水野くんと同じく“ぼっち”だったそうですが」と質問されると「ちょっと傷つくんですけど(笑)」と笑いつつ「私が友達がいなかった理由と水野くんが友達がいない理由は違うから、直接的に役作りに使ったことはなかったんですけど、根底にある、羨ましいとか、ほんとは自分もみんなと一緒にいたいのにという気持ちは水野くんとたぶん共通しているので、にじみ出るものはあったのなかなと思います」と回答。
　高橋さんはさらに「大好きな役者さん」である弓削智久さんと共演すると知った日に、プレッシャーでボーッとしてバイト先のバーでお皿を３枚割ってしまったというエピソードを紹介。高橋さんが小学生時代に放送されていた「仮面ライダーカブト」で弓削さんが演じたキャラクター・三島正人の名前を挙げ「その三島さんがほんとに大好きだったんです私は！」という高橋さんに、当の弓削さんは「なんで三島のことが？　ちょっと悪役じゃん(笑)」と不思議そうなをリアクションを見せましたが、高橋さんは「そこがカッコいいんですよ」と力説。「小さなころに『仮面ライダー』を観ていた少年少女にとって、それに出ている俳優さんというのは永遠の憧れなんです。なので弓削さんはどんな存在ですかと聞かれたら“永遠の憧れ”です！」という高橋さんの熱い言葉に客席からは大きな拍手が起こり、弓削さんは「そんなこと言われたら、ねえ。現場で言ってほしかったかな(笑)」とやや照れたような反応で客席の笑いを誘いつつ「ありがとう、ほんとに」。高橋さんは「あとでサインもらっていいですか？」と付け加えました。

　碧衣の親友・横山理奈を演じた保﨑麗さんは、高校生役に「久々に制服が着られて嬉しかったのと同時に、気まずすぎて(笑)」と、実際の中高生世代の俳優もいる現場での20代での制服に「ほんとに気まずかったです(笑)」と笑いつつ「ほんとに楽しかったですね。青春時代に戻れたので」と話し、監督から「キャピキャピしたキャラ」を求められた理奈を演じる上で「テンションを上げなきゃいけないなというのは気を遣いました」と役について話しました。

　碧衣が想いを寄せていた男子・工藤佑太を演じた阿部快征さんは、実は水野役でオーディションを受けており、オーディション会場が阿部さん曰く「楽しい雰囲気」だったこともあり「なにがなんでも監督を笑わせてやろう」と、椅子から大げさに転げ落ちる演技などをオーディションで見せたとのこと。「監督もワッハッハって笑って“これは掴んだぞ、主演飾れる！”と思って連絡来たら、まったく違う役だったという(笑)」と話す阿部さんに、政成監督はオーディションで好青年と感じたため好青年の工藤の役を演じてもらったとキャスティングの意図を明かしました。
　また、阿部さんは工藤を演じるにあたり「このマンマで行きました。決してモテようとか、モテるようになんかしようとはしていません。素材そのままで挑戦しました。裸一貫で体当たりした役でございます」と話し、場内を沸かせました。

　謎の世界で水野と碧衣が出会うキャラクター・管理人を演じた弓削智久さんは「衣裳合わせのときに、ぼくがイメージしていた管理人とは違ってカッコいい感じだったので、監督とディスカッションして作っていきました」と、役作りについてコメント。
　管理人の出演シーンは背景がＣＧのシーンが多いため弓削さんは合成用のグリーンバックでの撮影が多く「ぼくたちには緑しか見えないので想像していくということが重要になっていくし、とにかく想像力を出してやっていったっていう感じでしたね。みなさんもそうだったと思います」と話しました。

　舞台あいさつは、中川さん、高橋さん、政成監督それぞれのあいさつで締めくくられました。

中川可菜さん「本日は寒い中、そして師走という忙しい時期の中、お越しいただき本当にありがとうございました。もし面白かったり、なにか呟きたいことがありましたら、ＳＮＳのほうに感想を呟いていただけたら嬉しいです。私もチェックしますので、ぜひ感想をお願いします。そして、私たちのサンタ姿、あとなんで弓削さんがサンタ姿じゃないのかも、このあと映画を観ると伏線回収されると思いますので、そこを含めて最後まで楽しんでいただければ嬉しいです。本日はありがとうございました」

高橋改さん「改めまして、ご来場ありがとうございます。初日からこんなにたくさんのみなさまに来ていただいて、本当に嬉しいです。いまはいろいろな媒体でね、すごく安く簡単に映画が観られる時代ですけど、こうやって劇場に来ていただいて、チケットを買っていただいて、観ていただけるお客さまのお陰で、我々映画人は生きながらえております。今後、２週間シネマ・ロサでやる間にトークショーとかイベントもあります。私と監督は２週間ずっとロサにいますので、ぜひみなさんにごあいさつさせていただきたいなと思っているので、そういったかたちで少しでもご恩返しができればと思っております。ほんとに今日はご来場いただきまして、ありがとうございます」

政成和慶監督「寒い中、ご来場いただきありがとうございます。ごれから本編が流れるのですが、観ていただいて、いろいろ感想をＳＮＳに書いていただければと思います。『きみといた世界』を、どうかみなさんの手で盛りあげていただきたいという気持ちがすごくあります。ぼくにできるのはもうここまでで、あとは観ていただいたお客さんの力が必要ですので、この映画がもっと多くの人に観ていただけるように成長していけば嬉しいなと思っています。『きみといた世界』を、よろしくお願いします」

　自身のコミックを映像化したかったイラストレーター・arawakaさんとＳＦで⻘春映画を撮りたかった政成和慶監督が生み出した完全オリジナルストーリーで、不思議な状況の中で大切なものを見出していく高校生のピュアな想いを描いていく『きみといた世界』は、東京の池袋シネマ・ロサ、長野の千石劇場で12月14日より公開中、ほか全国順次公開。arawakaさんによるコミック版もネットで無料配信されています。