東日本大震災から8年後に、自らも被災者である佐藤そのみ監督が故郷の宮城県石巻市で撮影した劇映画『春をかさねて』とドキュメンタリー『あなたの瞳に話せたら』の中編2作品が、12月7日より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムを皮切りに全国ロードショーされることが発表され、ポスターヴィジュアルと特報映像などが解禁されました。
『春をかさねて』は、震災で妹を亡くした14歳の祐未と、その幼馴染で同じく妹を亡くしたれい、ふたりの中学生の少女の心の揺れを繊細に描いた劇映画。
『あなたの瞳に話せたら』は、震災で大きな被害を受けた大川小学校に通っていた当時の子どもたちが、亡くなった友人や家族に宛てた書簡で綴るドキュメンタリー。
いずれも石巻市大川地区で撮影され、フィクションとドキュメンタリーそれぞれの手法で「その後の私たち」を描いた作品となっています。
両作品を監督した佐藤そのみ監督は1996年生まれ。幼少時から故郷である石巻市を舞台に映画を撮りたいという想いを抱いており、震災を経験したのちに日本大学芸術学部映画学科に入学。震災から8年の2019年、石巻市大川地区で地元住民や大学の友人の協力を得て『春をかさねて』と『あなたの瞳に話せたら』を撮影、『あなたの瞳に話せたら』は大学の卒業制作作品として発表され、東京ドキュメンタリー映画祭2020の短編部門で準グランプリと観客賞を受賞するなど高い評価を得ました。
2024年には映画産業振興機構の「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2024」に参加する4名のひとりに選ばれ映画作家として期待を集める佐藤監督は、テレビ番組制作会社や映画配給会社に勤務しつつ『春をかさねて』と『あなたの瞳に話せたら』の自主上映を全国各地でおこなってきました。その活動はメディアにも取り上げられるなど着実に各所での話題を集め、制作から数年を経ての劇場公開が実現しました。
劇場公開発表と合わせて解禁された2作品のポスターは、それぞれが独立したポスターであると同時に、2枚を並べると横長の大きなポスターとなり、2作品のつながりを示すデザインとなっています。
特報は、仙台出身で仙台を拠点に活動するサウンドアーティスト・佐藤那美さんによる音楽に乗せ、2作品の映像が映し出されていきます。
また、佐藤監督が公開に向けたコメントを発表し、『息の跡』(2016年)『空に聞く』(2018年)『ラジオ下神白 ―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』(2023年)など震災後の東北を題材としたドキュメンタリーで知られる映像作家の小森はるかさんが応援コメントを寄せています。
佐藤そのみ監督コメント
幼い頃から地元の風景や人々が好きで、震災前の 12 歳の時には「いつかここで映画が撮りたい」と思っていました。震災でそれらのほぼ全てが遠くへ消えてしまい、途方に暮れる中、なんとか形にできたのがこの2本です。地元の方々や大学の友人たちなど、多くの人に支えられての撮影でした。あれから 5 年以上を経て、大好きな映画館で公開させていただけること、本当に嬉しく思います。
故郷の変化や身内の死にどう向き合えば良いのか、またはどうすればそこから解放されるのか。映画を撮りながら、ずっともがいていたような気がします。あの日を経験した方にも、していない方にも、ぜひ見に来ていただけたら嬉しいです。
映像作家:小森はるかさんコメント
進んでいく時間、止まったままの時間。震災によって重ならなくなった過去と現在を抱えながら、歳を重ね、大人になっていくあの時の子供たち。彼らには「もうみんな十分苦しんだ」と、そのための物語が必要だったと、誰か気付いていただろうか。
大川小学校の校舎に差す夕暮れは、同じ光の中で過ごした人たちの記憶を映し出す。きっと、ずっとこの先も変わらないと思える光を、そのみさんは撮れる人だ。大川の記憶をそんな風に映画を観る私たちに分けてくれる。
映画も、人と同じように歳を重ねていく。この先も長く観続けられる映画として、劇場公開されることを心から祝福しています。
10代のころから被災者のひとりとして取材を受ける立場であった佐藤監督が「描かれるより、描きたかった」との想いから、自ら脚本を書き、あるいはカメラを回して作り上げたフィクションとドキュメンタリーの2作品『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』は、12月7日土曜日より27日金曜日まで東京のシアター・イメージフォーラムで3週間限定公開されるほか、全国順次ロードショーされます。
解禁された『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』2作品のポスターは並べるとひとつにつながる