映画の舞台である熊本でロングランヒットとなり、海外の映画祭でも高評価を得ている感動作『骨なし灯籠』(木庭撫子監督)が5月に恵比寿ガーデンシネマ、6月に東京都写真美術館ホールで東京上映されることが発表され、東京公開版のポスターヴィジュアルと予告編、出演者・スタッフコメントなどが解禁されました。
『骨なし灯籠』は、和紙だけで作られる伝統工芸品「山鹿灯籠」や温泉で知られる町・熊本県山鹿市(やまがし)が舞台で、タイトル『骨なし灯籠』は「山鹿灯籠」の別名。妻を亡くした喪失感を抱え山鹿市にやってきた男を主人公に「喪失と再生」が描かれていきます。
脚本・監督をつとめたのは、これが初監督となる木庭撫子(こば・なでしこ)監督。脚本家・倉本聰さん主宰の富良野塾で学び、脚本家(浅野有生子名義)としてテレビドラマや映画『棚の隅』(2006年/門井肇監督)などの脚本を手がけるほか、放送作家(木庭有生子名義)、作詞家(木庭撫子)としても活躍してきた木庭監督が、元・テレビマンである夫の木庭民夫プロデューサーと二人三脚で資金集めからスタートし、民夫プロデューサーの故郷である山鹿を舞台とした映画を作り上げました。
主人公で元・美術教師の市井祐介を演じるのは、富良野塾出身で倉本聰作品を中心に舞台やテレビドラマなどで活躍する水津聡(すいつ・さとし)さん。富良野塾での先輩にあたる木庭監督が「主人公を思い描いたとき、水津の姿が浮かんだ」と語る、繊細な表現で市井を演じ、映画初主演をつとめます。
そして、祐介の亡妻・ゆかりと、その双子の妹というあかりの二役を演じるのは、映画やテレビドラマで活躍するまひろ玲希(まひろ・たまき)さん。木庭監督が脚本を書いたすg連さん主演『棚の隅』でヒロインを演じた(旧芸名・内田量子名義)たしかな演技力で、対照的なふたりの女性を演じます。
また、山鹿市の出身で舞台を中心に活動する高山陽平さんが主人公が山鹿に留まるきっかけを作る地元の青年・加藤直樹を演じ、メンバー全員が九州出身の劇団男魂(メンソウル)代表をつとめドラマや映画でも活躍する杉本凌士さんが和尚役で出演するなど、地元にゆかりのある俳優陣も参加しています。
2024年3月に、熊本のミニシアター・Denkikanで公開され当初は2週間の予定が口コミで評判が広がり異例の21週ロングランを記録、神戸、名古屋での公開も実現。
さらに、カナダの第18回トロント国際女性映画祭で最優秀初監督賞、オランダの第5回チネチッタ国際映画祭で観客賞第3位、アメリカのロサンゼルス映画賞(October2023)で 最優秀初監督賞・予告編賞・俳優特別賞(水津聡)を受賞するなど、海外の映画祭での正式上映・受賞も続いてきた『骨なし灯籠』が、満を持して東京公開を迎えます。
5月16日より29日まで恵比寿ガーデンシネマで、6月3日より22日まで東京都写真美術館ホールで上映と、恵比寿ガーデンプレイス内の2館で約1ヶ月にわたり上映という、前例のない公開形式となっています。
東京公開を前に、東京公開版のポスターヴィジュアルと予告編が解禁されました。
ポスターヴィジュアルは、『キングダム』シリーズ(佐藤信介監督)や『ブルーピリオド』(2024年/萩原健太郎監督)『ラストマイル』(2024年/塚原あゆ子監督)など、数々の話題作のポスターヴィジュアルを手がける、熊本出身のアートティレクター・吉良進太郎さんが担当。
予告編は、映画本編の映像に、熊本先行公開で寄せられた感想が織り交ぜて映し出されていきます。
東京公開決定にあたり、主演の水津聡さん、ヒロインを演じるまひろ玲希さん、木庭撫子監督、が、次のようにコメントを発表、また熊本県立劇場館長の姜尚中(かん・さんじゅん)さんが推薦コメントを寄せています。
市井祐介役:水津聡さんコメント
昨年の春、熊本で。なんの後ろ盾もなく封切られたこの映画は、観た人が、知人を誘って再び観に来てくれて、また観た人が人を呼んで…というふうに、人から人へとつながった結果、夏まで延長上映が続きました。もしかしたら想像以上に、この映画を必要としている人が、いるのかもしれません。それはここ東京でも(またこれから展開してゆくだろう地方でも)。だったら一人でも多くの人に届きますようにと、願ってやみません。
市井ゆかり/あかり役(二役):まひろ玲希さんコメント
熊本での舞台挨拶の初日、一番前に座っていらした女性が嗚咽をこらえながら涙を流していました。思いが伝わり、私も会場を後にするまで涙が止まりませんでした。後日、一緒に泣いてくれてありがとうと頂いたお手紙には、「最後のセリフは主人が私に言ってくれたんだと感じました。映画館を出たとき、少し心が軽くなりました」と。
大切な人を亡くされた方の心が少しでも軽くなり、優しく背中を押すことができるなら私たちも嬉しいです。
木庭撫子監督コメント
プロデューサーである夫は、24年前に最愛の前妻を亡くしました。時を経ても哀しみは残ることを知るわたしたちが、遺された者の「生」を見つめた映画です。舞台となった山鹿(やまが)に住む人々や生きものだけでなく、路傍の小さな花や、風鈴を鳴らす風も「生きて」います。周りを見渡せば、そこにある「いのち」の美しさ、優しさを、この作品を通して感じてもらえたら・・・東京の空も、違う色に見えるはず。あなたの心に、『骨なし灯籠』の灯りがともることを願っています。
熊本県立劇場館長:姜尚中さんコメント
しっとりとした映像と静謐な風景、夜の闇にほんのりと灯る山鹿灯籠の数々・・・
生と死という重いテーマが、これほど深く、そして清々しく描かれている映画は稀ではないか。
『骨なし灯籠』は「グリーフケア」を扱った作品でもあります。
大切な存在などを失った悲しみ(Grief=グリーフ)に寄り添い支え、立ち直りを支援する「Grief Care=グリーフケア」は、日本でも広く知られるようになっており、主人公が山鹿市の人々たちとのふれあいの中で次第に心を癒やしていく姿を描く『骨なし灯籠』は、グリーフケアの物語ともなっています。
熊本から世界へと広がり、東京公開を迎える『骨なし灯籠』は、5月16日金曜日より29日木曜日まで恵比寿ガーデンシネマ、6月3日火曜日より22日日曜日まで東京都写真美術館ホールと、いずれも恵比寿ガーデンプレイス内にある劇場にて上映されます(※東京都写真美術館ホールでの上映は月曜休映)。