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『赤×ピンク』芳賀優里亜さんインタビュー

芳賀優里亜さん写真 コスプレ姿の美女たちが闘う非合法の格闘イベント・ガールズブラッド! そのメンバーのひとりとしてリングに立つ皐月には、心が男であるという秘密があった。そして、新たにガールズブラッドに加わった千夏(ちなつ)の存在が、皐月たちの日々を変えていく……。
 スクリーンデビューから15年を迎える芳賀優里亜さんが、いま新たな一面を見せてくれます。主演最新作『赤×ピンク』は、直木賞作家・桜庭一樹さんの同名小説を原作に、海外で経験を積み多くのヒーロー作品を手がけてきたアクション演出の名手・坂本浩一監督がメガホンをとった青春アクションムービー。それぞれの生きる意味をたしかめるかのようにリングで闘う女性たちの青春を、激しいアクションにエロスも交えて描いていきます。
 主人公の皐月を演じた芳賀さんは、本格的なアクションを披露するとともに、初となるフルヌードで女性同士のラブシーンにも挑戦。性同一障害の空手家という複雑な設定の役柄を、生身の人間としてしっかりとスクリーンに息づかせています。
 “女優・芳賀優里亜”の新たな代表作となるであろう『赤×ピンク』という作品と、芳賀さんはどう「闘った」のか?

芳賀優里亜(はが・ゆりあ)さんプロフィール

1987年生まれ、東京都出身。1999年公開の『どこまでもいこう』(塩田明彦監督)のヒロイン役で映画初出演。2001年には人気子供番組「おはスタ」に“おはガール”としてレギュラー出演、2003年には「仮面ライダー555」にヒロイン役でレギュラー出演し、ファン層を広げる。その後、映画・ドラマ・舞台に出演するほか、2004年より2007年までファッション誌「Seventeen」専属モデルをつとめるなど多方面で活躍。2013年には舞台「ハローグッバイ&グッバイ」「天使と雨と時々、男。」で出演に加え初の作・演出をつとめる。
出演作に、劇場用映画『劇場版仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(2003年/田﨑竜太監督)『END CALL』(主演:2008年/山本清史監督)『心霊病棟 ささやく死体』(主演:2011年/福谷修監督)、テレビドラマ「遠山の金さん」(2007年)「仮面ライダーキバ」(2008年)「カラマーゾフの兄弟」(2013年)など多数。

「ほんとに覚悟を決めて、命を懸けるくらいの気持ちでやります」

―― 今回の『赤×ピンク』は、芳賀さんにとってチャレンジの多い作品だったのではないかと思いました。まず、この作品のお話があったときのお気持ちから聞かせてください。

芳賀:最初はまず台本を読ませていただいて、そのあと原作を読ませていただいて、原作にすごく惹かれたんですね。これが実写化されたらすごく面白いだろうなと思いましたし、自分がやる皐月という役にも惹かれたんですけど、ほんとにおっしゃったとおり挑戦することが多い作品で、脱ぐということが条件でもありましたし、そういう意味で不安もありました。それで、出演するかしないかは監督さんに会ってから決めようと思っていたので、監督と会ってお話をして、その中で決めました。

―― 出演を決めた一番の理由はどんな部分だったのでしょう?

芳賀:私は坂本監督のお名前はよく聞いてはいたんですけどお会いしたことは一度もなくて、実際にお会いしたら私の持っていたイメージと全然違っていたんです。もうニッコニコしていらして、すごく穏やかな監督さんで「ずっと優里亜ちゃんとお仕事したかったんだよ」というようなことも言ってくださったり、ほんとにオープンな方だったんですね。それで、どういうふうに撮っていくのかとか、どういう作品を思い描いているのかとか、そういう意見交換がしたくて、私が不安に思っていることとか質問をぶつけると、それにすごく的確に答えてくださったんです。そういう中で、私が「私はやるんだったらほんとに覚悟を決めて、命を懸けるくらいの気持ちでやります。だから、一緒にそれくらいの気持ちでやってくれますか?」と聞いたら「もちろんです」と。「一緒に代表作にしましょう」と言ってくださったので、監督の人柄に惹かれたのもあったんです。

―― チャレンジのひとつとしてアクションがあったと思うのですけど、芳賀さんはこれまで「仮面ライダー」などアクションの多い作品にご出演になっていても、あまりアクションをやらない役が多かったですよね。

芳賀優里亜さん写真

芳賀:そうなんですよ(笑)。正直、そんなにアクションが得意なほうではないんですよね。でも、すごく面白い話があって、今回の『赤×ピンク』のアクション監督のこしげ(なみへい)さんという方がいらっしゃるんですけど、この『赤×ピンク』が決まる1年くらい前に、バーベキュー大会みたいなところでこしげさんとお会いしていたんです。以前、私が出演した「Sh15uya シブヤ フィフティーン」(2005年)というアクションもののドラマがあって「俺、ちょっとだけ関わっていたんだよ」「そうだったんですね」というお話をしていて、そのときにこしげさんに「優里亜ちゃんは絶対アクションをやったほうがいいよ!」って言われたんですよ。「でも私、全然体固いし動けないし、アクションできませんよ」って言ったら「いや、女優さんのやるアクションとスタントマンのやるアクションは違ってて、気持ちだったり見せ方が違うから、絶対にあってると思う。絶対やりなよ!」と言ってくださったんです。「じゃあ、いつか一緒にお仕事できたらいいですね」とお話していたんですけど、そしたら、ほんとに1年後に『赤×ピンク』で再会したんです。

―― それはちょっと運命的な感じがしますね。

芳賀:ほんとにそうで、ちょっとビックリしました。「あのときのこと覚えてる?」「覚えてます、そういうお話をしてくださいましたよね!」って。

―― 今回、実際にアクションを体験してみていかがでした?

芳賀:インの前にアクションがあったんですけど、やっぱり稽古でもできるほうではなかったんですね。一番できるのはやっぱり綾女(水崎綾女=ミーコ役)で、綾女は前にもアクションものをやっていたりしたのもあって、すごくアクションの型とかがきれいなんです。私は自分の中で苦手意識があったんですけど、今回はそれぞれのキャラクターが個々にあって、それぞれのキャラクターの中で闘っていくアクションだったんですね。だから、きれいなアクションであるに越したことはないんですけど、そこまで形にとらわれず気持ちでやろうと思ってからは、わりと……。もちろん、大変は大変でしたけど(笑)。

―― 撮影中には、ご自分のアクションは映像でチェックできたんでしょうか?

芳賀:できるときとできないときがありますね。ベース(撮影した映像を確認する場所)が離れているので、戻って見られるときもあれば(スケジュールが)タイトに押しているときとかはそのまま「はいOK、じゃあ次はこっち行くよ」みたいな感じではあったんですけど、途中で監督が粗くですけど編集でつないだものを持ってきてくださって「こんな感じになっているから」と見せてくださって、そういう気遣いをしてくださったので、イメージしやすくなる部分もありました。

―― いかがでしょう、ご自分のアクションを見た率直な感想というのは?

芳賀:「カッコいい!」(笑)。ほんと率直にそう思いましたよ。「こんなカッコよくなるんだ!」って、ビックリしましたもん。やっぱり、女の子がああいうふうに闘っているアクションものってそんなにないじゃないですか。だから、これは監督ならではだなって思いました。

「女の子が見てカッコいいと思う皐月でいたかった」

―― 『赤×ピンク』は、セリフと同じようにアクションで語るというか、アクションで伝えるものが多い作品ではないかと思いました。そういう部分で苦労した点はありますか?

芳賀:あんまり苦労とは感じなかったですね。この映画に出てくる女の子たちというのは、みんなそれぞれ世間に溶け込めずに、リングの上でぶつかりあうことで自分らしくいられたり、嫌なことを忘れられたり、リングの中が居場所で、みんなにとっての大切な場所なんですよね。だから、私たちもそこに立ってアクションしているときは同じような気持ちで、セリフはないけどアクションでぶつけあう、身体と身体をぶつけあうじゃないですけど、たぶん、ほんとの自分自身の必死さみたいなものも絶対あったと思います。

―― 撮影のときに、坂本監督からアクションについてアドバイスや指示などはあったのでしょうか?

芳賀:「とにかく皐月はカッコよくスマートでいたほうがいいよね」というお話を最初にしていたんです。だから佇まいであったりとかは意識したりしましたし、やっぱり女の子が見てカッコいいと思う皐月でいたかったので、アクションに限らずほかのシーンでもイケメンでいようと心がけていました(笑)。監督が(映像の)チェックが終わるたびに「いまのイケメンだったよ!」「あ、イケメンでした?」とか言いながら(笑)。あとは、皐月がマントをこうやったり(マントをさばく動きをしながら)するのは、自分で勝手にひとつのポーズとしてやろうかなと思ってやってみたんです。監督は、わりと自由ににやらせてくれるので。

―― 皐月って設定としても難しい役ですよね。「イケメンでいよう」というところ以外に、皐月を演じる上で意識されたことはありますか?

『赤×ピンク』スチール

『赤×ピンク』より。芳賀優里亜さん演じる皐月

芳賀:なんだろう……孤独、一匹狼的なことというか、人との距離感であったりですかね。皐月は、原作では髪もショートでリーゼントにしていて、革ジャンを羽織ってバイクに乗って、もうほんとに男みたいで、客の女の子から人気があるという設定だったんですけど、今回の映画に関しては、性同一障害ではありながら、それを隠して誰にも言えず悩んでいて、なんとか女の子として世間に溶け込もうとしているけど溶け込めないという揺れ動いている葛藤みたいなものを表現していこうということだったんです。だからあえて髪の毛も切らなかったりとか、見ていてもやっぱり女性的なところもあったりするんですね。そこは意識して演じたというか、逆に言えば、そんなに男っぽくこだわり過ぎないように演じていました。

―― 皐月の男っぽさというのは、座り方とか、何気ない仕草に自然に出ていましたね。

芳賀:そうですね、そういうところは意識してやっていました。

―― ああいう何気ない仕草を意識して演じるというのは、やはり難しいのでしょうか?

芳賀:いや、そんなにはというか……なんでしょうね(笑)。変な話、皐月になったときには自然にああいう座り方になってしまうんですよ。だけど、シャワーのシーンではあえて女の子っぽかったりするんですよね、脚をこう閉じてて。そういうアンバランスさみたいなのは、ちょっと意識しましたね。

―― では、撮影のときには芳賀さんの中に皐月という人物がしっかりとできあがっていた感じですか?

芳賀:うーん、私はあんまり役作りをして固めていくというタイプでもなくて、変な話、思ったままなタイプなんじゃないかなって自分では思うんです。もちろん、原作を読んだり脚本を読む中で皐月という役のヒントはたくさん得て現場には臨むんですけど、でもわりと直感というか、読んだときに一番最初にイメージしたものがそのままという部分はありますね。

―― もうひとつ皐月の重要なシーンとして、多田あさみさんが演じた千夏とのラブシーンがありますね。あのラブシーンを演じられたときのお気持ちはいかがでした?

芳賀:ひとつの山場であったことには間違いないんですけど、ほんとにすごくコミュニケーションがとれていた現場だったので、そのシーンに関してもあさみちゃんも含めて何度も何度も打ち合わせもありましたし、監督個人との打ち合わせも何度も何度もしましたし、なので、当日はわりと普通の撮影と変わらずに、すごくスムーズでしたね。ほんとに流れだけ決めてしまって、あとはなるべく一連で撮っていって。すごく配慮していただいて、周りのスタッフの方々はすごく気を遣ってくださいました。

―― 作品を拝見しても、すごく自然な流れでラブシーンがあると思いましたし、皐月と千夏はラストにリングでの対決シーンもありますよね。ラブシーンもリングで闘うのも皐月と千夏にとっては同じ意味なんだという感じがしました。

芳賀:そう受け取っていただけるとすごく嬉しいです。ほんとにそういうことなんですよね。ラストのアクションに関しては、別に型なんてどうでもいい、もう気持ちさえあればいいっていう中でやっていたので、しかも撮影もラスト日みたいな感じで、いろいろな想いがこもったラストシーンの闘いではありました。

「“女でもこんなカッコよく闘えるんだ”って思ってほしい」

―― 『赤×ピンク』は、皐月と千夏と、それから水崎綾女さんの演じたミーコ、小池里奈さんが演じたまゆという、4人の女の子の青春だったり友情ストーリーという部分もありますよね。4人での撮影はいかがでした?

芳賀:ほんとに仲いいっていうか、もうそのまんま、すごく自然体でしたね(笑)。インの前からアクション稽古があったというのもあって、撮影現場に入ったときにはもう仲良しでしたし、目指すものが一緒というか、この『赤×ピンク』という作品をやるからには、やっぱり女の子に観てほしいという想いだったりとか、なるべく原作に忠実に表現したいことがあったりとか、目指すものがみんな一緒だったんです。それがすごく大きくて、いい意味で刺激しあいながら、支えあいながら撮影は進んでいきましたね。

―― 4人での撮影で、特に印象に残っていることがあれば教えてください。

芳賀:4人では、やっぱホースで水を掛け合うところとかは楽しかったですね(笑)。あそこは音は入らないんで「なに言ってもいいよ」って言われたりしていたので「じゃあ次は里奈に向けて行きまーす」とか「綾女向け行きまーす」とか言いながら、ビッショビショになりながらワーワーキャーキャーやってて(笑)。ほんとに自然体にはしゃいでる表情が垣間見える瞬間があって、そういうのってやっぱりね、ほんとに仲良くないとなかなか出ない表情だったりするので。

―― いま「女の子に観てほしい」というお話がありましたけど、そのために演じる上で気をつけられた部分はありましたか?

芳賀優里亜さん写真

皐月らしくファイティングポーズ!

芳賀:やっぱり、私が最初に桜庭一樹さんの原作を読んだときに思ったのは、とても非現実的な設定でありながら、彼女たちが抱えている葛藤とか悩みとか、そういうものがすごくリアルに伝わってくるんですね。それがすごく不思議で、独特で面白いなと思って。それは桜庭さんが女性だってこともあると思うんですけど、そういう意味で女の子が観て「ああ、女でもこんなカッコよく闘えるんだ」って思ってほしいなって。やっぱり、アクションものってどうしても男の人のイメージが強い中で、女の子たちがこんなにも可憐にカッコよく闘っている姿ってなかなかないので、そういうところを観てもらいたいですし、友情であったり、ちょっとした甘酸っぱい恋愛だったりも観てほしいですし、一番思ったのは、ほんとに濡れ場のシーンが女の人が観て綺麗だと思ってもらえるものにしてほしかった。それは、監督と一番約束していたことですね。

―― 完成した作品では、芳賀さんたちのそういう気持ちと坂本監督の男性の視点が、うまくミックスされていったのかもしれませんね。

芳賀:そうですね、それはありますね。

―― 芳賀さんは、舞台で作・演出もやられていますよね。今回いろいろと新たな経験をされて、作り手として刺激を受けた部分はありますか?

芳賀:そうですね、去年、自分で作・演出・出演で2本舞台を打ったんですけど、やっぱりそこで学んだことはすごく多かったです。いままで自分が出る側しか経験がなかったんですけど、裏方っていうことも含めて学ぶことだったりとか、知らなかったこととか、やっぱり得たものはすごく多かったですし、だから逆に今回の『赤×ピンク』のように出る側のときは、出る側に専念できるようにさせてもらえてることが幸せなんだなということは感じました。ほんとに、いいスタッフさんとキャストに恵まれたなと思いました。

―― 『赤×ピンク』の中で、特に気に入っていらっしゃるシーンや、ぜひ観てもらいたいシーンというとどこでしょう?

芳賀:好きなシーンは、綾女とふたりのシーンなんですけど、皐月とミーコがコーラを飲みながら話しているシーンがあるんです。そのシーンは原作にもあって、最初の脚本の第一稿ではそのシーンがなかったのかな? それで「あのシーンが好きだからやりたいです」と言ったら追加していただけて、なんかすごい好きなんですよね。皐月とミーコの言葉には出さないけどどこかにある友情みたいなのって、最初からけっこう垣間見えてると思うんですけど、それを初めてお互いがはっきりと口にするシーンで、あのシーンはすごく思い入れのあるシーンですね。あとはやっぱりラストの闘いのみんなの気迫と、あとね、里奈が闘っているシーンを観ると泣いちゃうんですよ、私(笑)。

―― 小池里奈さんが演じたまゆが、負けそうになっても何度も何度も立ち上がるところですね。

芳賀:そう、なんかもうダメなんですよ。里奈は20歳になったばっかで、私は「キバ」(「仮面ライダーキバ」2008~2009年)でも共演していて妹みたいな感じがあって、あのシーンを観ると、演技だってわかっているのに毎回毎回かわいそうでかわいそうで「がんばってるな」みたいに思って泣けてきちゃうんですよね。やっぱり、ミーコなんかも強がっているけれど実は弱かったりとか、この映画の女の子たちはみんなギリギリのところでがんばっているんですよね。きっとみなさん日常を生きている中でいろいろなことと闘っていると思うんですけど、映画の女の子たちがギリギリの中で一生懸命生きているし一生懸命闘っているという姿が、悩みは葛藤は違えど、みなさんとリンクするものがあれば、そして感じるものがあれば嬉しいなと思います。

―― では最後に『赤×ピンク』をご覧になる方へメッセージをお願いします。

芳賀:ほんとに、この『赤×ピンク』という映画の魅力は、女の子たちが繰り広げる大迫力のアクションシーンと、それに加えて少女から大人に駆けあがっていくちょっと甘酸っぱい青春ストーリーでもあって、一見すると偏りがちに見えて実はいろいろな要素が詰まっている、ほんとにエンターテイメント性の強い作品なんですね。なので、イメージにとらわれず、ほんとに女性から男性の方まで幅広く観ていただきたいですし、幅広く楽しんでいただける作品に仕上がったと思うので、このアクションはぜひ劇場で堪能してもらえたら嬉しいなと思います。

(2014年2月4日/KADOKAWA本社にて収録)

作品スチール

赤×ピンク

  • 監督:坂本浩一
  • 原作:桜庭一樹
  • 出演:芳賀優里亜 多田あさみ 水崎綾女 小池里奈 ほか

2014年2月22日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー

『赤×ピンク』の詳しい作品情報はこちら!

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