『ハイキック・エンジェルス』川本まゆさんインタビュー
アクション映画の撮影のため廃校にやってきた女子高生たち。ところが突然現れた謎の集団により校舎は封鎖され、逃げ出すことも外部に連絡を取ることもできなくなってしまった。集団の目的はなんなのか? いま5人の女子高生が立ち上がる!
美少女たちの激しいアクションが公開前から話題となっている『ハイキック・エンジェルス』は、アクション映画部の女子高生が悪人たちと闘いを繰り広げる痛快なガールズアクションムービー。
この作品で主人公のサクラとともに悪に立ち向かうアスカを演じたのが川本まゆさん。なんと極真空手の黒帯と居合の1級を持ち空手の国際大会で優勝も経験している、キュートなルックスからは想像もつかないほどの実力派武道少女です。
これまで『ハイキック・ガール!』など数々のアクション作品を手がけてきた西冬彦さんの指導のもと、川本さんは『ハイキック・エンジェルス』で吹き替えなしCGなしの華麗で力強いアクションをこなし、見事にアクション女優としての才能を開花させています。
今後も主演映画公開や話題作への出演が控える注目の“エンジェル”川本まゆさんにお話をうかがいました。
川本まゆ(かわもと・まゆ)さんプロフィール
1994年生まれ、アメリカ・デトロイト州出身。2006年から芸能活動を始めCMやドラマ、舞台などで活躍し、2012年にはゲーム「LOLIPOP CHAINSAW」(角川ゲームス)イメージガールをつとめて話題となる。小学生から始めた極真空手は黒帯を取得、2008年にロシアで開催された全ロシア国際青少年空手道選手権大会・女子の部で優勝を果たした。居合無外流1級も持つ。
出演作に劇場用映画『HOME 愛しの座敷わらし』(2012年/和泉聖治監督)など。主演映画『Z~ゼット~』(鶴田法男監督)が2014年夏公開予定、メインキャストとして出演するVシネマ「宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION」(坂本浩一監督)が2014年11月7日リリース予定。
「大好きな空手とお仕事を一緒にできるというのは嬉しかったです」
―― 『ハイキック・エンジェルス』ではすごいアクションを披露していらっしゃいますが、川本さんはもともと空手をやっていらしたんですね。
川本:はい、私は兄弟がふたりいて、姉と弟が先に空手を始めてたんです。私の家は大晦日は「紅白歌合戦」じゃなくて格闘技の中継を見ている格闘技大好き一家だったんです(笑)。やっぱり昔から格闘技を見ていて興味があったので、近所に道場ができたというのを聞いて、最初に弟が始めたんですね。私も道場見学とかにはずっと行っていて、姉と弟の影響で小学5年生のときに私も始めて、それからいままでずっと続けています。
―― 空手はけっこう稽古がハードな面もあると思うんですけど、嫌になったりしたことはありませんでしたか?
川本:それはたくさんありますね(笑)。けっこう試合に出ることが多くて、試合前になると週6回道場に稽古に行っていて、テレビとかも見られなかったし、学校帰りもすぐ道場に行く空手中心の生活をずっと送っていたんです。だから遊びたいなと思ったりしたこともありましたけど、やっぱり大会に出て勝ったときの喜びとか、兄弟で競い合いながら「一緒に優勝しよう」とかを目標にしてやっていたので、つらかったけど楽しかったです。
―― そして、2008年に全ロシア国際青少年空手道選手権大会で優勝なさっているんですね。2008年だと中学3年生で、空手を始めてまだ数年なんですね。
川本:やっぱり、たぶんほかの人より稽古を重ねていたんだと思います。すごい厳しいので有名な道場だったんですけど、先生に竹刀で叩かれたりしながらアザを作って週6回練習していたんです(笑)。あと、私は体がちっちゃいほうで、それまでは日本の大会に出ても3位だったりが多かったんですけど、ロシア大会では体重別があるということだったので「私にも勝てる可能性がある!」と思って、ほんとに頑張りました。
―― 2008年にはもう芸能のお仕事も始められていて、芸能活動もして空手の国際大会で優勝してと、普通の人の何倍分もあるような経験をされていますね。
川本:そうですね。空手はもう生活の一部でもあるので、芸能活動を始めてからも空手を辞めようと思ったことはなかったんですけど、自分の特技の空手が芸能活動のほうでも役に立つとは思っていなかったんです。なので、今回『ハイキック・エンジェルス』で自分の大好きな空手とお仕事を一緒にできるというのは嬉しかったです。
―― 『ハイキック・エンジェルス』への出演はどのように決まったのでしょうか?
川本:オーディションがあるというお話を聞いて、空手だったりダンスだったり運動ができる女の子を募集しているということだったので「これはチャンスだ」と思ったんです。私は武田梨奈さんの出ている『ハイキック・ガール!』(2009年/西冬彦監督)という作品を観ていたので、その監督の西さんがプロデュースされるということで、すごくやってみたいという想いがありました。でも『ハイキック・ガール!』のメイキングを観て稽古がつらそうだというのも知っていたので、やってみたい気持ちと不安な気持ちと両方がありました(笑)。
―― オーディションに受かったときのお気持ちはいかがでしたか?
川本:嬉しかったです。すごいドキドキしましたし、今回は女子高生が何人か出てくるということで「ほかにどんな子が来るんだろう?」と思って、すごい緊張していました。
―― 今回は、撮影に入るかなり前からアクションの練習を始められていたそうですね。
川本:はい、1年くらい練習しました。最初はほんとに「どうなるんだろう?」って思ったんです。空手はやっていましたけど、映画ですから見せ方とかも違いますし、いままでと全然違うふうに指導されることもあって「自分がこれまで自信を持ってやって来たことはなんだったんだろう?」というふうに思って悩んだ部分も多かったんですけど、迷ったときは西さんが「俺を信じろ!」と1対1で熱く話してくださって、西さんの熱い想いがあったから1年頑張れたんだなと思っています。
―― 映画のアクションと空手との一番の違いはどんなところでしょうか?
川本:空手の試合では、いかに相手に悟られないように攻撃を入れるかというのが大事なんですけど、アクションだとわかりやすく伝えるという面で動きを大きく見せなくちゃいけないんですね。なので、動きを止めたりとか、脚を外から大きく回したりというのがすごく難しかったです。
―― 撮影前の練習で印象に残っていることがあれば教えてください。
川本:ほんと最初はできないことばかりだったのと、西さんが怖かったのとで、ずっと泣いていました(笑)。でも、楓ちゃん(青野楓=マキ役)と道場で一緒になることがあって、一緒に頑張っている子がいるから頑張れるというところがありましたね。
「私が稽古中に泣いてばっかりいたから、アスカは泣き虫の役に変わったんです(笑)」
―― アクション映画部員役の共演者のみなさんとは、稽古のときから一緒にやっていたのでしょうか?
川本:基本的には稽古の時間はみんなバラバラでひとりずつで稽古することが多くて、すれ違いで会ってあいさつするくらいだったんです。一緒になることがあっても稽古中は基本的には喋らないんですね、自分のことで精一杯で(笑)。華音ちゃん(宮原華音=主人公・サクラ役)は稽古に参加したのが途中からでしたし、クランクインするまでみんなとちゃんと話したことはほとんどない状態だったんですね。お互いにどういう子なのかもわかっていなくて、クランクインしたときはまだお互い敬語のままで(笑)。クランクインしてから一気に仲良くなった感じです。
―― これだけ空手経験者が揃ったお仕事の現場も珍しいと思うのですけど、撮影の休憩時間の会話とかは、ほかのお仕事のときと違ったりしましたか?(笑)
川本:違いますね(笑)。アザの見せ合いして「どこをケガした」っていう話とか、あとはもちろん空手のことについて「いつからやっているの?」とか「どういう型があるの?」とか、やっぱり空手についての会話が多かったです。
―― やっぱり、稽古や撮影でケガは多かったですか?
川本:アザを作ることは多かったですね。でも、みんなアザができるのは嬉しいんです。頑張った証拠じゃないですけど、みんなアザができると写真撮って保存してっていう感じでした(笑)。撮っている最中は集中しているのでアザができていることも気づかなくて、終わったあとに「ああ、アザできてる」という感じだったので、痛かったとかそういう思い出はないんです。
―― 今回の『ハイキック・エンジェルス』では登場人物それぞれが個性のあるアクションをやっていて、川本さんのアクションは固めたりとか極めたりとか、空手以外の動きもかなり入っていますよね。
『ハイキック・エンジェルス』より。川本まゆさん演じるアスカ(左より2人目)たち5人の女子高生が謎の集団に立ち向かう
川本:そうなんです。今回はひとりひとり違うアクションを見せたいということで、それぞれのいいところを伸ばせるアクションを見つけられるようにと、稽古ではほんとにいろいろなことをやったんです。柔道の投げ技もやりましたし、私は居合を習っているので刀の技もやりましたし、いろいろやる中で、西さんが私が映画でやっている接近戦というのを見つけてくださったんです。立ち方だったりとかは空手がベースとなっているんですけど、西さんからは「今回は空手は捨ててくれ」と言われていて、護身術のような刀を持った相手への対処法だったりを一から学んで、それを中心に稽古してクランクインしました。
―― 空手と違ったものをやってみていかがでしたか?
川本:勉強になる部分がすごくありました。接近戦という技を見つけるまでの練習は毎回「こんなのもあるんだ」と思って勉強になりましたし、どういう技をやるかが決まってからは気持ちがすごく楽になったんです。「これをやればいいんだ!」というものがしっかり見つかったので、すごく楽しかったです。
―― アクション以外の部分では、アスカは最初はオドオドしている子なのが話が進む中で変わっていくという、感情の変化がある子ですよね。そういうところは演じられていかがでしたか?
川本:実は、最初はアスカはできあがった映画とは全然違った武道家の役だったんです。でも、私が稽古中に泣いてばっかりいるからということで、西さんが当て書きのような感じで脚本を直してくれて、泣き虫の役に変わったんです(笑)。いろいろなことがある中でアスカの気持ちが変わっていくところはちゃんと見せてほしいと横山(一洋)監督には言われていましたし、気持ちの変化だったり、闘うって決めたらやり切るというところは、意識してやりました。
―― 映画の中で、川本さんご自身が好きな場面とか、特に記憶に残っている場面はどんなところですか?
川本:いっぱいあるんですけど、アクションシーンでは屋上で撮ったシーンですね。すごい長回しのアクションで、前日に手を付けてもらって夜に体育館で練習したんですけど、何回やっても納得できなかったんです。「これで明日大丈夫なのかな?」と思って何回も何回もみんなに合わせてもらって練習して、でも納得できないなと思っていたときに、西さんに「いいものにしようとしているのはわかるけど、もうできているから、自信を持ってやればいまのままで大丈夫だよ」と言っていただけて、次の日は思いっきり屋上で暴れられたんです(笑)。最後の大きなアクションシーンでしたし、撮影も最後のほうだったので、すごいスッキリしたっていうか達成感があって、すごく記憶に残っています。やっぱりアクションシーンがある日は前日からすごく緊張していて、お芝居もそうなんですけど、1年間練習してきたものを出せないとやって来たことが無駄になっちゃうなと考えていて、でも完成したものを観たら納得いくものができていたので、よかったなと思っています。
―― ほかにはどんなシーンが気に入っていますか?
川本:演技のシーンでは、アクション映画部の部室でサクラと喧嘩するシーンですね。あそこはクランクインする前に(制作会社の)アマゾンラテルナさんの部屋で練習をして、そのときはそんなに納得いくようにはできなかったんです。でも、撮影のときはロケ場所の部室の雰囲気だったり、身につけた衣裳の雰囲気にも支えてもらって、本番では納得のいく演技ができました。撮影中は合宿のような状態で泊まっていて、サクラとはずっと同じ部屋だったのですごくやりやすかったですし、基本的に順撮りだったので感情も盛りあがっていて、お互いに集中してできたんです。あそこのシーンはすごく好きです。
「“川本まゆのアクションだな”って思ってもらえるアクションをしたいと思っています」
―― 映画の冒頭は、劇中映画になっていて少し違う雰囲気ですね。
川本:あそこは面白かったですね(笑)。あそこは一番最初に撮ったんですよ。みんな楽しみながらやっていて、思いっきりカッコつけて楽しもうという気持ちでやっていました。
―― その劇中映画のシーンではゾンビ軍団が出てきますが、川本さんは以前にゾンビが出てくるゲームの「LOLIPOP CHAINSAW」のイメージガールをつとめられていて、夏公開の主演作『Z~ゼット~』もゾンビもので、ずいぶんゾンビとの縁が続いていますね(笑)。
川本:そうなんですよ。日本でこんなにゾンビに会えるとはビックリですね(笑)。もう、ほんとにゾンビ退治は任せてもらって大丈夫です(笑)。チェーンソーでも空手でも倒します(笑)。
―― 次の『Z~ゼット~』でもアクションシーンはあるのでしょうか?
川本:はい、今度は薙刀を使ったアクションシーンが多いです。やっぱり薙刀のアクションも空手の立ち方とかがベースとなっているので、そんなに苦労することなくできました。
―― そのあとには「宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION」で、またアクションのある作品が控えられていますね。
川本:そうですね、またいままでやったのとは違うアクションだと思うので、1回練習したんですけど、もうワクワクしています。今回「宇宙刑事シャイダー」でやるタミーのような役をほんとにやってみたかったので、すごい緊張しているんですけど、すごい楽しみです。
―― これからもアクションのある役を中心に演じていかれるのでしょうか?
川本:はい、どんどんアクションできるようになって、空手を習っている子たちに「カッコいいなあ」って思ってもらえる女の子になりたいと思っていますし、もちろん、アクションがなくて演技だけでもちゃんと演じられるような女優にもなりたいなと思っています。
―― 川本さんが目標とする女優像というのはどんな女優さんでしょうか?
川本:私は福田沙紀さんがほんとに大好きなんです。福田さんの演技がすごい好きで、ああいう演技ができるようになりたいなと思っています。アクションの面で言えば、やっぱり武田梨奈さんはカッコいいなと思うんですけど、アクションでは誰とも違うものをやりたいなと思っていて、誰かのようなアクションというよりは、観ていただいて「カッコいいな」って思ってもらえるアクションをしたいですし「川本まゆのアクションだな」って思ってもらえるアクションをしたいなと思っています。
―― そうやってアクションという特技を活かしてお仕事をされていく上で、今回の『ハイキック・エンジェルス』は川本さんにとって大きなポイントとなる作品ですね。
川本:そうですね、ほんとに私のこれからの土台になっていくというか、自分のすべてが出ているというか、もう、この映画を一生残したいですね。ほんとにほんとに頑張って練習しましたし、頑張ったものがほんとに全部出ていますし、自信を持って「いろいろな方に観てもらいたい」と言える映画です。
―― では最後に『ハイキック・エンジェルス』に興味を持たれている方に向けてメッセージをお願いします。
川本:空手を習っていたりとかアクション大好きな人はもちろんなんですけど、今回は女の子のアクション映画ということなので、女の子たちに観てほしいなと思っているんです。女の子たちがこの映画を観て「空手をやりたいな」と思ってくれたり「アクションがカッコいいな、私もこんなふうになれるかな」と思ってもらえたら一番嬉しいなと思っています。ほんとに、女の子が観ても男性が観ても楽しめる映画だと思いますので、ぜひ観てもらいたいです。
(2014年5月19日/アマゾンラテルナにて収録)
ハイキック・エンジェルス
- 監督:横山一洋
- 原案・脚本:西冬彦
- アクション監督:吉田浩之
- 出演:宮原華音 伊藤梨沙子 川本まゆ 長島弘奈 青野楓 ほか
2014年6月14日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、横浜ブルク13 ほか全国ロードショー ニコニコ動画でも同日公開