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『靡く、我々』藤江れいなさん・勝又悠監督インタビュー

インタビュー写真 新世代の青春映画の旗手・勝又悠監督と、人気グループ・NMB48で活躍し女優としても評価を高める藤江れいなさん。これまで1本の長編と2本の短編でタッグを組んできた監督と女優が、4度目のタッグで新たなジャンルに挑みます。
 勝又・藤江コンビの最新作となるのは、ネットで配信される動画『靡く、我々』。老舗プロダクション・石原プロモーションが初めて制作する舞台劇「希望のホシ」に、藤江さんがナビゲーターとなり密着したドキュメンタリー映画です。
 勝又監督は『靡く、我々』で撮影から編集までをひとりで担当、全3話の物語を撮影と同時進行で順次公開していくという、ネットのリアルタイム性を活かした意欲的な試みに取り組んでいます。
 フィクションの世界で物語を綴ってきた監督は「現実」に向けたカメラのファインダーからなにを見るのか。そしてナビゲーターをつとめる女優は「自分自身」としていかにカメラと向き合うのか。
 まさに制作のまっただ中におこなわれたこのインタビューは、リアルタイムで走る『靡く、我々』のひとつの記録です。

藤江れいな(ふじえ・れいな)さんプロフィール

1994年生まれ、千葉県出身。2007年にアイドルグループ・AKB48のオーディションに合格して同グループに加入。2014年4月にはAKB48から姉妹グループのNMB48に移籍し、2015年4月よりNMB48チームMのキャプテンをつとめる。AKB48在籍中より女優として映画やドラマ、舞台で活躍しており、勝又悠監督作品にはオムニバス『放課後たち』の一編『Do you think about me?』(2014年)、長編『いつかの、玄関たちと、』とそのスピンオフ短編『ワールドオブザ体育館』(いずれも2014年)の3作に出演し、すべて主演をつとめている。
そのほかの出演作に『眠り姫 Dream On Dream』(主演:2014年/上野コオイチ監督)、『ベトナムの風に吹かれて』(2015年/大森一樹監督)など多数。

公式ブログ:Reina's flavor

勝又悠(かつまた・ゆう)監督プロフィール

1981年生まれ、神奈川県出身。専門学校卒業後、映像制作会社勤務を経てSTROBO RUSHを設立。一貫して思春期の少年少女を主人公にした青春映画を制作し、国内外の映画祭で高い評価を得る。2011年に『はい!もしもし、大塚薬局ですが』で劇場作品デビュー。その後『オードリー』(2011年)、『See You』(2012年)などの劇場長編作品のほか、短編やミュージックビデオなど幅広いかたちで作品を発表している。2015年には出身地である南足柄市のふるさと大使に任命された。藤江れいなさんとは『Do you think about me?』『いつかの、玄関たちと、』『ワールドオブザ体育館』(いずれも2014年)でタッグを組んでいる。アイドルグループ・Lucky Color'sのふたりを主演に迎えた『ゆらい、ほしぼし、笑うまで』がオムニバス『Only 4 you』の一編として2015年10月公開。

公式ブログ:足柄 at the Bord Walk

「一緒に闘ってくれる人が欲しくて、それが藤江だったんですよね」(勝又)

―― 藤江さんはこれまでドキュメンタリーで撮られる側というのは経験されていると思いますが、今回『靡く、我々』でナビゲーターをつとめるというのはどんなお気持ちでした?

藤江:そうですね、今回はナビゲーターでナレーションで伝える部分も多いので、声でその作品のことを伝えなきゃいけないというのは正直すごく難しいなって思っています。『いつかの、玄関たちと、』のスピンオフ作品の『ワールドオブザ体育館』でナレーションというか声で伝えるというのをやらせてもらっていて、それがきっかけで今回、勝又監督に声をかけていただいたんです。今回は3話あって、舞台で演じる役者さんの目線だったり、演出の大浜(直樹)さんの目線だったり、それぞれの目線で語っている内容が多かったので、私はナレーションという立場ではあるけれど、その方々の気持ちも感じ取れるきっかけにもなりましたし、私自身いい経験をさせてもらったなと思っています。

―― 監督がナビゲーターとして藤江さんを起用なさった理由はなんなのでしょうか?

勝又:理由はいっぱいあるんですけど、藤江と一緒にやりたかったというのが一番ですね。ドキュメンタリーっていうのは自分にとって新しいというか、さっぱりわからないんですよ(笑)。難しいなあって思うし、そこに挑むとき一緒に闘ってくれる人が欲しくて、それが藤江だったんですよね。

―― 藤江さんは、ご自身も演じる立場として演劇の舞台を経験されていますよね。今回はナビゲーターとして演劇の現場に入ってみていかがでした?

『靡く、我々』スチール

『靡く、我々』より。ナビゲーターとして舞台「希望のホシ」稽古に密着する藤江れいなさん

藤江:普段は自分がやる側で指導していただいているのが今回は稽古を見学させていただいているんですけど、やっぱり今回のキャストのみなさんは演技経験が豊富な方々なんですね。なので、見ているだけでも刺激になるというか自分の気持ちが動かされるところがあって、座っているだけじゃなく自分も演技をしたいなという気持ちになりながら見ていました。

―― 実際に映像を拝見して、カメラがナビゲーターである藤江さんをどう捉えるかという、カメラと被写体とナビゲーターの関係が面白いと思いました。監督はどのような意図を持たれているのでしょうか?

勝又:そうですね、一応「ナビゲーター」という肩書なんですけど藤江れいなはこの作品の立派なキャストのひとりと言いますか、ぼくは彼女というフィルターを通して物語を作るのが使命だと思ってやっているので、藤江れいなは欠かすことのできない登場人物のひとりとして撮っていますね。

―― 藤江さんは、これまでの勝又監督の作品では「小湊綾」だったり「大塚あやめ」だったり役としてカメラの前に立たれていて、今回は藤江さん自身として立ってみて、気持ちの上で違いはありますか?

藤江:でも、ナレーションで声を録っていただくというのもひとつの演技のジャンルになるのかなと思うので、そこまで気持ち的に大きな変化はなかったですね。勝又監督とご一緒させていただくのは今回で4回目で、毎回毎回撮影しているときに思うんですけど、勝又監督は私にすごくわかりやすく言ってくださるんです。だから監督とご一緒させていただくとすごく成長できるなと思っていて、ファンのみなさんもそう言ってくれるんですよね。今回も、ナレーションでなかなかやったことのないジャンルに挑戦させていただいて、自分にとって新たな道を見つけるきっかけにもなったなと思っています。

―― 勝又監督は、演じているのとは違う藤江さんを撮ってみていかがですか?

勝又:そこまで違和感みたいなものはなかったですね。ただ、いままでは役と監督として向き合っていたじゃないですか。今回は本人と自分自身で向き合わなきゃいけないので、ちょっと照れみたいなのはありますよね(笑)。

「普段はなかなか出せない表情だったりとかも映像に収めてもらえてると思うんです」(藤江)

―― 今回は撮影も勝又監督ご自身でやっていらっしゃるんですよね。

勝又:はい、ひとりでやってます。久しぶりに(カメラを)回しましたね。

藤江:私、それもすごくビックリしました(笑)。

―― 撮影の機材はなにを使っていらっしゃるんですか?

勝又:機材はけっこう改造してて、ソニーのカメラに社外のレンズを無理やりくっつけてるんです。それで編集でシネルックにして上げてるんです。

―― 被写界深度が浅くて「カメラがなにを見ているのか」という視点が明確な映像という印象を受けました。

勝又:アートに振りたかったというのがありますね。アートに走りながらも間口を広げるというか、本気でドキュメントをやっている人から見たら怒られるような、自分が見たことないものが見たかったんですよね。ぼくなんてドキュメント畑じゃない人間なので、対等に勝負をしても勝ち目がないわけですよ。そこで負けるんだったらもっと逆手に撮った勝負をしたいわけなんです。

―― カメラが複数あるときは1台が稽古の様子を撮ってもう1台は藤江さんを撮るみたいなことができると思うんですけど、今回は監督がおひとりで撮影をしていて、現場で監督の視点というのはどう動いているんでしょうか?

インタビュー写真

勝又:けっこう客観視しちゃっているんですよね。目の前で稽古しているんですけど、そこに入り込まないようにしているし、誰にも感情移入しないようにしているし。だから一番ぼくが感情移入できるのはやっぱり藤江なんですよね。だからそこにウェイトをかけている感はすごいありますね。藤江の動向はすごい気になっています。

―― 藤江さんは、そういうふうに撮られるというのはいかがですか?

藤江:ちょっと恥ずかしかったのが、何回かカメラを見ちゃってて(笑)。私のことを撮ってくれているっていうのに気付かずに勝又監督のことをパッと見たらたまたま私のことを撮っていたことが何回かあったので、ときどき目線が行っちゃってるのが恥ずかしかったです。でも、これもドキュメンタリーならではというか、そういうこともありますよね(笑)。

―― それって、ちょっと隠し撮りっぽい感じもしますね(笑)。

勝又:いや、近いものはありますよ。気づいたら狙ってるっていう(笑)。

藤江:アハハ(笑)。でも、そういう素の一面を撮ってくださっているので、普段はなかなか出せない表情だったりとかも映像に収めてもらえてると思うんです。そこも見どころのひとつかなと思います。

―― 藤江さんは、ご自分がどう映っているかとか、どんな表情が使われるかとか、現場ではわからないんですよね。

藤江:そう、わからないんです。

勝又:だからヒヤヒヤですよ。あとでなんて言われるか(笑)。

藤江:フフ(笑)。

―― その中で、カメラと向きあって藤江さんの言葉を話すという場面もありますが、そこを撮影しているときは気持ちって違いますか?

藤江:違いますね。なんていうか、気持ち的には勝又監督とお話しているような感じなので少し気が楽というか、そこまで緊張しすぎずに話すことができますね。

勝又:まさにそうなので、ぼくは逆にこっ恥ずかしいんですよ(笑)。

「“この映像があったからこそ舞台がより面白く観られた”って思ってもらえたら嬉しいです」(藤江)

―― 監督は、作品全体に対してはどういう視点を持って撮影に臨まれているのでしょうか?

勝又:それは答えるのがひじょうに難しいですね。……ぼくはよそ者なので、よそ者でしか撮れない映像を撮ろうというのはありますね。だからなおさら藤江の存在はすごい大事だし、こんなことを言ったら怒られるかもしれないですけど、ぼくはこれが「舞台 VS 映画」だと思ってて、勝ちに行くつもりなんです。そういう意味で藤江の存在はぼくにとっては欠かせなかったですね。

―― 「舞台 VS 映画」となると、それはある意味で舞台のスタッフ・キャスト全員と藤江さんひとりの対決でもあるわけですよね。

勝又:そうそう、ほんとそうですよ。

―― 藤江さんは、監督のそういうお話を聞いていかがですか?

藤江:そう聞くとプレッシャーが(笑)。でも、やっぱり心強い勝又監督という存在があるので、人数では負けてますけど気持ちでは負けていないんじゃないかと思います。

勝又:さすが!

藤江:ハイ(笑)。

―― 藤江さんは作品全体をどういうふうにご覧になっています?

インタビュー写真

藤江:もう、タイトルからして『靡く、我々』と「希望のホシ」で違うものっぽく見えるじゃないですか。そこにも監督のたくさんの想いというのが込められていると思いますし、私自身はこの『靡く、我々』のほうにナビゲーターとして登場させてもらっているので、舞台の「希望のホシ」もすごく楽しみですけど、先に『靡く、我々』をたくさん観てもらって「この映像があったからこそ舞台がより面白く観られた」って思ってもらえたら嬉しいなって思っています。

―― それから、今回の作品の特徴として、撮影から世に出るまでがすごく短期間ですよね。ネット配信の動画の特性でもあると思いますが。

勝又:地獄ですよ、もう(笑)。

藤江:そこは不思議ですよね。短期間で3本あって、もし私が編集する側だったら絶対に期限に間に合わないなみたいな(笑)。やっぱり監督ってすごいなあと思いますね。今回は監督自身が全部ひとりでなさっているということを考えると、より尊敬する部分です。

勝又:ホント?(笑)

藤江:ハイ。なんの疑いですか?(笑)

―― まだ制作が続いている段階ですでに第1弾が発表されているというのは、監督としてはどんなお気持ちなんでしょうか?

勝又:もう、頭の中に物語はあるので、それに沿って作っていくという感覚なんですよ。結果を知っているサッカーの試合でフィールドプレイヤーを動かすみたいな感覚ですね。点数はもう決まっているんだけどいろんな山場があってみたいな。だから、難しいけど楽しいですね。

―― ドキュメンタリーとしては珍しいのかもしれない作り方ですよね。

勝又:驚かせてやろうっていう気持ちが強いんですよね。サプライズ感っていうか、それがすごく大事だなと思うんです。特にネットの動画っていいサプライズというのがないと簡単に忘れられちゃうと思うので、それはつねに意識はしていますね。だから、方向が曲がっちゃったら曲がっちゃったで、そこでくよくよせず、どうやって別のやり方でゴールへ向かうかという話ですね。

「あらゆる物事が起きても動ぜずに撮りたいなっていうのはありますね」(勝又)

―― 撮影が進んでいくと監督の現場に対する感覚は変化していくものなんでしょうか?

勝又:いや、ほんとに客観視しているので、誰にも感情移入しないように撮ろうと思っていますね。だから、演出家の大浜さんの言っていることはものすごく納得できて、ほんとなら個人的にすごく仲良くしたいなという感じなんですけど、それをやってしまうと被写体との間にブレが生じちゃうので、全部それは排除して撮っていますね。

―― それはけっこう難しそうですね。

勝又:難しいですね。だれとも仲良くないんで、クラスのいじめられっ子みたいな感じですよ(笑)。

藤江:アハハハハ(笑)。

―― そういう監督の姿って藤江さんからはどう見えます?

藤江:近寄り過ぎないっていうのも監督の考えがあってのことだと思うので、それがいいように映像に現れると思うんですよ。誰にも感情移入しないで撮っているから、できあがりを観たときにも誰かが目立っているわけじゃなくて、何回も観ても同じ気持ちで快く観られるんじゃないかと思います。

―― 監督は近寄りすぎずに現場を見ていらっしゃるということですが、藤江さんはご自身がどういうスタンスで現場にいればいいかという戸惑いみたいなものはありませんでしたか?

藤江:うーん、私はナレーションをするってわかった上で現場にいさせてもらっているので、そんなに戸惑いみたいなのはないですね。ホン読みのときから何回か見せていただいていたんですけど、何回もやっていく中でどんどん変化していくのを見ていると、私はこういう素敵な一面を声に乗せて届けなきゃいけないっていう気持ちになったりしたんです。役者さんおひとりおひとりがどう考えていらっしゃるかとか、演出の大浜さんは「観にきてくださる方の笑顔」というようなことを何回かおっしゃっていたので、私もそういう気持ちを忘れずにナレーションに持っていくようにはしていました。

―― 現場の空気というのは藤江さんにとってどんな感じでした?

藤江:やっぱり、今回の舞台は大人の方が多いので、初日の稽古からピリピリとまでは行かないですけど力を感じたというか、絶対にいいものを作るぞという気をみなさんから感じたんです。私もいつか、こういうみなさんの中に入って演技をしてみたいっていう気持ちになりました。

―― 監督は、やはりそういう藤江さんの心境を撮りたいというところもあるのでしょうか?

インタビュー写真

勝又:そうですね、なんやかんや言って主役は藤江なので、藤江の傾きとかっていうのは掬いたいなというのはありますよね。

藤江:フフ(笑)。

―― やはり監督にとってはこの作品も藤江さんを主演にした映画であると。

勝又:まあ、これはあくまで「希望のホシ」っていう舞台があってのプロモーション動画なので、まず「希望のホシ」の宣伝にならないとダメなんですよ。それがあった上で自分がなにができるのかを考えたときに、藤江と映画を作るっていう選択肢しかなかったですね。

―― その選択の結果がある意味で挑戦的な作り方になっているということですね。

勝又:普通のドキュメントで勝負しちゃダメだなっていうのがあったので、さっきも話したんですけどサプライズ感を大事にしたいんですよね。実は、ぼくはあるベテラン歌手の方の歌が好きで、この作品のナレーションをどうしようか悩んでいるときにその歌の動画を見たくなってネットで検索したんですよ。そしたらたまたまその動画に藤江が出てきて、それを見たときにぼくはパーッと光が見えた感じで、一気にナレーションの原稿を書き上げたんです。検索したらたまたま自分が思ってもなかったものに出会えるっていう、それもサプライズですよね。それがネットの動画のいいところだと思うんですよ。

―― このインタビュー記事が出ることには作品の制作状況ももっと進んでいるわけですが、いまの時点での『靡く、我々』という作品への想いを一言ずつお願いします。

藤江:監督の中では1弾、2弾、3弾、でそれぞれ「こういうテーマ」というのは決まっているんですよね。1本ごとに目線も変わっていくんですけど、ドキュメンタリーっていうのはその瞬間にしか撮れない映像で、そういう大事なところを監督がたくさん撮ってくださっていると思うので、私自身も完成がすごく楽しみです。

勝又:あらゆる物事が起きても動ぜずに撮りたいなっていうのはありますね。特別に感動するわけでもなく、特別に憤慨するわけでもなく、落ち着いて撮りたいなという感じですね。まあ、藤江のナレーションがあるので、心強いですね。

インタビュー写真

グリーンのスカートが印象的な取材時の藤江れいなさん。ドキュメンタリー映画のナビゲーターという新しい活躍の場で藤江さんがどんな表情を見せているか、ぜひ『靡く、我々』でたしかめてください。

※クリックすると拡大表示されます。

(2015年9月24日/イトーカンパニーにて収録)

作品スチール

靡く、我々

  • 監督:勝又悠
  • ナビゲーター:藤江れいな
  • 製作:石原プロモーション

2015年9月より公式サイトで第1弾動画配信中。10月上旬に第2弾、中旬に第3弾配信予定

→動画を視聴できる『靡く、我々』公式サイトはこちら!

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