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なにも持たない少女かやのに、神様が贈ってくれた歌の才能。それは彼女が新しい世界に飛び立つための翼になった。彼女はやがて、ヴォーカリスト“ジーナ・K”として、かつて母親が立っていたストリップ劇場のステージで歌いはじめる。創られたイメージと自身とのギャップに悩み、ストリッパーである母親との葛藤を抱えながらも、心の叫びを音楽に託し、かやのは歌い続けた。
欲望と夢が渦巻く、福岡・中洲の歓楽街を猛スピードで駆け抜けたひとりの少女。彼女の命の煌めきと、彼女を取り巻く人間模様を、生き生きと描き出した青春映画がここに誕生した。
監督・脚本は福岡出身の藤江儀全(ふじえ・よしまさ)。本作は石井聰亙、東陽一、橋口亮輔作品などを助監督として長年支えてきた藤江の、待望の初監督作品である。作品の出発点になったのは、昭和を生きた実在のストリッパー、ジプシーローズ。彼女にもし娘がいて、ヴォーカリストになっていたとしたら…。長年あたためてきたアイディアを元にオリジナル脚本を執筆した。
女優初挑戦とは思えないほどの熱演で、かやの=ジーナ・K役をつとめたのは、シンガー・ソングライターとして活躍するSHUUBI(しゅうび)。迫力のライブシーンと、ステージを降りたかやのの揺れる想い。そのどちらをもリアルに表現できるのは彼女のほかにはいなかっただろう。ジーナの母親でストリッパーのカトリーヌ役には、映画、舞台などで幅広い活躍を続けるベテラン・石田えり。母娘の複雑な愛憎を体当たりの演技で見事に演じきった。ほかに、ARATA、光石研、永瀬正敏、片岡礼子など、数々の日本映画で活躍する個性派俳優に加え、オーディションで選ばれた福岡出身の新人・吉井亜希子、さらに映画監督の石井聰亙がドキュメンタリー作家役で出演するなど、ユニークなキャスティングにも注目が集まる。
主演のSHUUBIは本作の映画音楽のプロデュースも手掛けている。藤江監督とのディスカッションを重ねて彼女が作り上げたエンディングテーマ「ハジマリノウタ」は、聴く者すべての心を震わせ、明日に向かって歩き出す勇気を与えてくれる。
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「ジーナ・Kは死んでいた」。そんなショッキングなニュースを耳にしたドキュメンタリー作家・荒木(石井聰亙)は、カメラを片手にジーナ・K(SHUUBI)の足跡を追い始める。荒木は、彼女の母親であるストリッパー、カトリーヌ(石田えり)のもとを訪れる。「ジーナ・K、かやののことたいね…」。カトリーヌは語り始めた。
福岡・中洲に君臨する伝説のストリッパー・カトリーヌ。その娘・かやのは母親との葛藤から家を離れ、街をさまようようになっていた。ある日、かやのは良く似た境遇の娼婦・ニナ(吉井亜希子)と出会い、打ち解けあう。コンビを組んで詐欺まがいのことをしていたかやのとニナは、カモとして引っ掛けた男・菊地(ARATA)に逆に罠にはめられる。だが、菊地もまた郷田という男(永瀬正敏)からゆすられていたのだった。暗い過去を背負った物静かな菊地に、かやのはいつしか惹かれていく。そんな中、かやのはカトリーヌをストリッパーとして育てた男・宮本(光石研)と再会する。人気の翳りの見えるカトリーヌに見切りをつけた宮本は、今度はかやのを売り出そうとしていたのだった。宮本が用意したシナリオに従って、かやのはジーナ・Kとしてライブハウスで歌うようになり、人気を得ていく。だが、彼女は次第につくられたジーナ像と自分とのギャップに苦しめられるようになっていた…。
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