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本作は、第7回水戸短編映像祭でグランプリに輝いた『鍋と友達』(02)や黒澤明記念ショートフィルム・コンペティション 04-05ノミネート作品『進め!』(05)など、皮肉とユーモアに満ちた独自の世界観を現出する俊英・沖田修一の初の長編作品である。不器用で情緒不安定ながらどうにも憎めない叔父さん・清と、彼に振り回されるうちに徐々に変化する男子高校生の心をコミカルかつ繊細に描き、『たまもの』のいまおかしんじや、『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘らの系譜へと連なる<ちょっとひねくれた>ハートウォーミングコメディの傑作となっている。
ゆるやかに過ぎる日々の中で、ほんのりコミカルなキャラクターたちの仕草や表情ひとつひとつも非常に魅力的に描かれ、男の子と叔父さんの“冴えない”かつ“シュール”で笑えるエピソードが積み重なっていくというシンプルな構成ながら、最後は「せつなさ」で満たされる。それはまるで『男はつらいよ』シリーズなどの人情喜劇やの味わいや、『家族ゲーム』(82/森田芳光監督)のようなひねくれた魅力が融合したような感覚である。
世界の見え方がほんの少し変わるような、愛すべき、愛されるべき傑作が、日本映画史にまたひとつ登場した。
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東京郊外の一軒家・菊池家。高校生の涼一(畑敬志)は、同級生にけがをさせたことから、学校にも行かず、家でテレビゲームばかりやっている。父(志賀廣太郎)をはじめとして家族はみな一様に忙しく、朝になると涼一に千円札1枚だけを置いて出かけていく。そんなある日、住む家も金もなくした、叔父さんの清(古舘寛治)が、しばらく療養するために菊池家にやって来た。日々、家にいるのはほとんど涼一ひとり。清との奇妙な生活が始まり、偏屈な清の性格に辟易する涼一だったが、徐々に不安定ながらもマイペースな清に惹かれていき、少しずつ彼の中の何かが変わっていく…。
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