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幼い頃に母親に捨てられた中学生の美奈子と、その母親が父親とは別の男と間に生んだ小学1年の優。めぐり会うはずもなかったふたりは運命に引き寄せられるように、小さな町の片隅で出会う。母親は自分ではなく妹を選んだ。妹に対する抗えないくらい感情と嫉妬。あるいは収まることのない母親への憎悪。夜のスーパーの片隅でふたりが出会ったとき、運命は回りだす…。
『運命じゃない人』『バーバー吉野』に続く第15回PFFスカラシップ作品であり、2006年ベルリン国際映画祭キンダーフィルムフェスト・コンペティション部門で絶賛された本作の監督をつとめたのは、まだ24歳の木下雄介。フィックスされたロングショットと横移動をの画面を多用しながら、この恐るべき新人監督は、少女の内面の変化をセリフに頼ることなく饒舌に物語る。
主演は『理由』『青いうた/のど自慢青春篇』でヒロインを演じ、そのみずみずしさが魅力の大型新人・寺島咲と、本作で映画デビューを果たした小野ひまわり。黒沢あすか、田中哲司、津田寛治といった名優たちの演技に引けを取らない存在感で、映画にさらなる透明感を与えている。
誰もが通過する思春期の鋭利な残酷さと清冽さを見事に描いた作品の誕生である。
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中学生の美奈子(寺島咲)は父親の圭介(田中哲司)とのふたりでの生活を続けている。母の詩織(黒沢あすか)は、美奈子が幼いころに圭介とは別の男・隆司(津田寛治)との間に子供を作って家を出て行った。母親が不在の家の中で、美奈子と圭介は距離感を保ちつつ、つつましい生活をなんとか維持していく。不安定で、バランスが悪く、でもどこか繊細でガラス細工のように積み重ねられた生活。美奈子はそんな生活を強いる原因となった母親に対して、憎しみの感情を捨て切れないでいた。
ある日、幼馴染みの良太(照井健仁)から、近くの市営住宅で美奈子の母親を見かけたという話を聞いて、美奈子は動揺する。男と離婚してまたこの町に戻ってきたと知り、父親に激しい感情をぶつける美奈子。
母親が近くにいると知ってから、美奈子の日常の風景はどんどん変化していった。友人たち、学校、そして家。ここではない、どこか。そして意を決したように、母親が住んでいるという団地に向かう。そこで美奈子が見たのは、母親と、義理の妹にあたる幼い優(小野ひまわり)が仲むつまじく連れ添っている姿だった。
しかし、詩織と優の生活も寄る辺ないものだった。優との生活をなんとか築かなければならないという詩織の思いは空回りするばかりで優とのすれ違いを生んでいた。
ある日、美奈子はひとり町を歩く優の姿を見つける。吸い込まれるようにショッピングセンターのゲームコーナーへと向かう優。しばらく優を観察していた美奈子は優に話しかける。やがて夜になり、人気のなくなったショッピングセンターでゲームを続けるふたり。そして意を決したように、美奈子は優に海を観にいこうと誘うのだった――。
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