34歳の誕生日を目前に命を絶った由季宏(沢村純吉)。彼は死の直前に「理解しあうことと、愛しあうことって同じじゃない」という言葉を恋人の玲加(石井あす香)に残していった。由季宏の死から1ヶ月、彼の言葉が理解できずにいた玲加は、彼が残したパソコンの中に遺書を発見する。そこには、玲加の知らない由季宏の姿があった――。
友人の吉永(渡部遼介)とともに“リミッターカット”というバーを経営していた由季宏。そこには、無軌道な若者たちが集い、ドラッグが蔓延していた。
セックスとドラッグにはまり、主観的妄想に耽る由季宏。ある晩、DJのテンパリ(吉武優)が逮捕された。テンパリの彼女・ヒノコ(青山華子)が駅のコインロッカーへと隠した大量のドラッグを、由季宏がピックアップすることになる。早朝、ひとり駅へと向かい、ドラッグの入ったリュックを背負った由季宏は、久々のぞくぞくした緊張感と刺激を味わい、快感に満たされる。
そしてその日から、由季宏とヒノコの距離は縮まっていく。自分よりひと回りも下のヒノコの世界観に、由季宏はまるでドラッグにはまるように魅せられていくのだった――。
アディクトの優劣感
監督:藍河兼一
出演:沢村純吉 青山華子 吉武優 シュ・レイアン ほか
2007年12月22日(土)渋谷Q-AXシネマにてロードショー
2007年/日本・台湾合作/カラー/スタンダード/デフォメ/83分
アディクト=中毒者・依存者。セックスやドラッグ、酒や音楽。さまざまな “刺激”に魅かれていく若者たちの姿を描いた、新感覚の青春映画が誕生した。
原作は、バーやクラブを経営し、アンダーグラウンドな世界に長く身を置いていた池間了至の同名小説。アンダーグラウンドなカルチャーをリアルに描き、DJやクラバーの若者たちから熱狂的な支持を受けている。
この原作に注目し、映画化に挑んだのは小出正之。自身『ふるり』などを手掛けた映画監督であるが、本作ではプロデューサーとして、監督には処女作『PENPAL』が第3回インディーズムービーフェスティバルに入選した新鋭・藍河兼一を抜擢。藍河は地元・石川県の映像会社を退職、上京してこの映画のメガホンをとった。脚本は人気急上昇中の劇団「猫☆魂」主催の西永貴文が手掛けた。
独特の原作の世界を映像で表現するため、本作では世界初となる「デジタル・フォトアニメーション」=デフォメという手法が採られた。高画質のデジタルスチルカメラで連続撮影された静止画像にCG処理を施し、アニメーション風の映像を作り出すという新技術だ。従来のデジタルビデオカメラをはるかに上回る精密さと奥行感を持つ映像は圧倒的な密度をもって観客に迫る。
出演者は、主演に『Wiz/Out』で注目を集め、コアなファンが激増中の注目の俳優・沢村純吉。さらにソーシャルネットワーキング・サイト“mixi”で出演者を募集するという異例の試みをおこない、ヒロインのヒノコ役にまったく演技経験のなかった青山華子を起用。ほか、高校教師を辞めて俳優を目指した吉武優など、オーディションで選ばれた若手キャストの演技も見逃せない。
劇場では、人気DJがBGMを生演奏するなど、意欲的な試みがおこなわれる。映画『アディクトの優劣感』は、それ自体が大きな“刺激”となって観客をいまだかつてなかった体験へといざなっていく。
- 由季宏:沢村純吉
- ヒノコ:青山華子
- テンパリ:吉武優
- アサミ:シュ・レイアン
- 吉永:渡部遼介
- 玲加:石井あす香
- 監督:藍河兼一
- 原作:池間了至「アディクトの優劣感」(文芸社刊)
- 製作:菊池笛人/朴炳陽/須貝克俊
- プロデューサー:小出正之
- 脚本:西永貴文/藍河兼一
- 撮影:リン・メイサン
- 音楽:江藤雅樹
- テーマ曲:シュ・レイアン「Impulse Love」(BIGMADE MUSIC Inc.)
- 製作:『アディクトの優劣感』製作委員会(天空/アジア映画社/スタジオ・イプセ)
- 企画・制作プロダクション:スタジオ・イプセ/遊戯現場有限公司
- 配給:天空
- 宣伝:太秦
- 宣伝協力:早月堂