
20歳の新米ディレクター・クリハラ(柄本佑)は、観光用プロモーションビデオ撮影のため、たったひとりで韓国の釜山へと派遣される。上司のイガラシ(光石研)から教えられた言葉は「アンニョンハセヨ、ケンチャナヨ、サランヘヨ」のみっつだけ。いざ韓国に到着しても、待っているはずのガイド・マツオカ(川村亜紀)とも出会えない。右も左もわからない土地で戸惑い、不安になりながら、クリハラは街をさまよい歩く。意味のわからないハングル文字の看板や、いい加減な日本語表記……。しかし、次第にクリハラは日本と変わらない街の活気を感じはじめる。
街を撮影するクリハラは、交差点でひとりの女性に目を留める。何気なく彼女にカメラを向けると、彼女は赤信号を無視してクリハラに向かって歩いてくる。車に吹っ飛ばされて倒れた彼女にクリハラが駆け寄ると、彼女は「勝手に撮らないで」と日本語で言い残して去っていく。呆然とするクリハラ。
釜山ではちょうど国際映画祭が開催されていた。街のいたるところでイベントがおこなわれ、熱気に満ちた会場。クリハラはそれを外から覗き見ることしかできない。ひとりで宿に戻り、撮影した素材を確認していると、交差点で出会った女性・ヨーコ(江口のりこ)の強い視線がクリハラの心に強く残るのだった……。