バイクショップの整備士・福家稔(高野八誠)は、アメリカ横断ツーリングの夢をもつ25歳。同僚の仲村(弓削智久)と夢を語り合っていた。そんな彼を病魔が襲う。左肺に腺ガンという悪質腫瘍が発見された。入院した福家の手術は成功と思われたが、手術後の検査結果、リンパへの転移が発見される。福家は担当医の尾谷から「抗がん剤投与で完治できるものだ」と聞かされ、化学治療を受けることになるが、不安から気が弱くなり、なにかと面倒を見てくれる美しい看護婦・亜矢子(清水ゆみ)に惹かれていく。
いよいよ福家への抗がん剤の投与が開始された。副作用で嘔吐、皮疹、痒み、血尿が福家を襲う。そして皮疹からは膿のようなものが…。福家の身体は日に日に弱り、一向に良くなる気配はない。副作用での苦しみから逃れることができるのは亜矢子と会っているときだけだった。
見舞いに来た仲村は福家の変わりように驚き、新聞で見つけたある記事を福家に見せる。「新薬“デレッサ”わずかの間に25人に副作用、うち9人が死亡。副作用は発疹、痒み、血尿、出血性膀胱炎…」。福家は“ディレッサ”を投与されているのではないか?
病院から抗がん剤副作用の説明を受けていないことを思い出した福家は、病院に対し不信を抱き始める。尾谷にカルテを見させてもらうと、カルテには“ディレッサ”とは違う投与薬の名前があった。しかし、調べるとカルテにある投与薬では、自分に出ている副作用が出ることはありえない。尾谷は嘘をついて“ディレッサ”を投与しているのではないか? 福家はほかの病院でも診察を受けるセカンドオピニオンをつけることと、抗がん剤投与の中止を申し出る…。
担当医・尾谷は、病院は、人体実験をしているのか? そして亜矢子もそれを知っていたのか? 福家の行く末は…?
saru phase three
監督:葉山陽一郎
出演:高野八誠 清水ゆみ 弓削智久 奈良坂篤 ほか
2月17日(土)より池袋シネマ・ロサにてレイトショー
2006年/日本/カラー/DV/ヴィスタサイズ/ステレオ/97分
2003年12月に公開された『サル』。監督である葉山陽一郎が人体実験とも言うべき“治験”アルバイトの体験を基にドキュメンタリータッチで描き、葉山のセンセーショナルなデビュー作として話題を呼んだ。あれから3年…現実にあった抗がん剤事件をベースに、さらに踏み込んだ衝撃作を描き上げた。
新薬が医療現場で使用されるまでに、動物実験のあと、その効果を見極める為に、3段階の“治験”を行う。しかし、新薬の需要が待たれる抗がん剤の場合は最終段階のphase three(フェイズスリー)を飛ばして医療現場で使用されることが許されている(phase threeとは多数の患者に向け有効性、安全性を確認する段階をいう)。効果があるとほぼ確認している薬品を患者に投与するが、副作用で命を落とす…そんなことが起こりうるのだ。
医療現場での、モラルの欠如した病気腎移植、救急患者の治療拒否など、目を覆うような現実のひとつの象徴として“治験”を描き、起りうる恐怖に世界が震撼する――。
監督は前作の『サル』以降、『死霊波』『君はまだ、無名だった。』などを手掛けた葉山陽一郎。主演に1998年「ウルトラマンガイア」、2002年「仮面ライダー龍騎」と2大ヒーローを演じ、さらに映画『仮面ライダー THE FIRST』で仮面ライダー2号=一文字隼人・矢野克彦役に抜擢され、そのほか多くの映画作品で活躍中の高野八誠。ヒロインに2003年度NHK「中国語会話」レギュラーをつとめ、2005年『真夜中の弥次さん喜多さん』で注目を集めた清水ゆみ、共演に2002年「仮面ライダー龍騎」以降、『恋文日和』など映画・ドラマに出演の弓削智久、そのほか、奈良坂篤、唐橋充、諏訪太朗、三島ゆたか、並川倖大など個性的な俳優が脇を固める。
- 高野八誠
- 清水ゆみ
- 井上肇
- 諏訪太朗
- 三島ゆたか
- 有馬光貴
- 並川倖大
- 唐橋充
- 森岡龍
- 大村彩子
- 小野まりえ
- 藤真美穂
- 春日裕美
- 弓削智久
- 奈良坂篤
- 脚本・監督:葉山陽一郎
- 製作統括:尾川匠
- 製作:高野秀夫/米津孝徳/前田茂司
- 企画:狩野善則/松葉せつこ
- プロデューサー:平田幸仁/早川均
- 撮影:中尾正人
- 照明:白石宏明
- 録音:瀬谷満
- 美術:大庭勇人
- 助監督:明山智
- 音楽:野島健太郎
- 制作:楽映舎
- 製作:Softgarage/クリエイティブ・ファッツ/楽映舎
- 配給:クリエイティブ・ファッツ/楽映舎