有須(佐藤浩市)は建築会社に勤めるサラリーマン、設計事務所に勤める妻のちさと(木村多江)とふたり、人並みよりは裕福に暮らしているが、仕事への情熱も今は消えうせ、心はどこか乾いた毎日を過ごしている。そんな有須が唯一楽しみにしているのは、人気ミステリー作家・黒田(串田和美)の描く幻想的な小説だった。しかし、その刺激的な内容のためか、有須は毎晩、悪夢にうなされていた。夢の中、延々と続く闇の中をさまよう有須。不安と恐怖の末にようやく闇を抜け、森の中に小さな灯りを見つけて駆け寄るが、そこにいる人々は有須の声に反応しない。男も、女も、妻のちさとさえも。懸命にちさとを呼び続ける有須の声が虚しく盛りに響き渡る。まるで自身の存在すら否定されてしまうかのような絶望的な孤独感――。
その夢がなにかを暗示しているかのように、現実世界でも有須の身に事件は起こる。ちさとが忽然と姿を消したのだ。懸命に妻を捜す有須だが、妻の行方にまったく心当たりがなく焦燥の日々が続く。そして有須の周りでは不可思議な事件が次々と起こる。
ときを同じくして黒田の新作「スターフィッシュホテル」が発表された。そのタイトルは、かつて有須が不倫相手の佳世子(KIKI)と密会していたホテルの名前だった。そして本を読んだ有須は驚愕する。今まさに自分の身に起こっていることが、小説には克明に描かれていたのだった…。これは現実なのか? それとも悪夢の続きなのか? この物語が導く意外な結末とは?
スターフィッシュホテル
監督:ジョン・ウィリアムズ
出演:佐藤浩市 木村多江 KIKI 串田和美 柄本明 ほか
2月3日(土)よりシネマート六本木 ほかにて全国順次公開
2006年/日本映画/カラー/ドルビーステレオ/アメリカンビスタ/98分
主人公の有須(ありす)は現代の日本のどこにでもいるごく普通のサラリーマンでありながら、ある日を境に怪奇な事件に巻き込まれていく。妻・ちさとの失踪。それはまさに現代に起こった“神隠し”であった。そして鍵を握る謎の登場人物たち。彼らの言葉は嘘か誠か。そもそも存在自体が夢なのか現実なのか――? 有須は迷宮の中へと迷い込む。
本作は西洋の寓話と日本の古典的怪談話、そして現代社会に生きる人々の姿が見事なまでに融合し、奇跡的な文学的映像の幻想美を実現している。ありきたりな日常の中に潜み、ある日突然訪れる奇怪な恐怖。世界のどこにでもある普遍的な現代の物語でありながら、日本独特の怪談話をモチーフに、幽玄的な世界へと観る者を魅了する。
主人公の有須を演じたのは、監督が脚本の段階から想定していた佐藤浩市。次々と起こる不条理な事件に巻き込まれていく男を、監督のイメージどおりに見事に演じている。有須の妻・ちさと役に木村多江、かつて有須が巡り会ったミステリアスな女性・佳世子役にKIKI、ミステリー作家・黒田に串田和美、トリックスター役に柄本明というメンバーが脇を固める。
監督は、日本在住のイギリス人監督であるジョン・ウィリアムズ。古典的な日本の怪談と西洋の童話「不思議の国のアリス」をモチーフに、その独自な視点で、従来の日本映画にはない幻想的で優美な映像世界へと観客を誘う。
主題歌には日本だけでなく海外での活動も盛んなケイコ・リー。監督のリクエストにより、本作をイメージして作詞作曲した主題歌「夢幻蒼」を歌っている。
- 佐藤浩市
- 木村多江
- KIKI
- 綾田俊樹
- 歌川椎子
- 大楽源太
- 北川さおり
- 縄田一
- 上田耕一
- 串田和美
- 柄本明
- 脚本・監督:ジョン・ウィリアムズ
- 撮影:ベニート・ストランジオ
- 美術:金田克美
- コンセプチュアル・デザイナー:斎藤岩男
- 照明:中西祐介
- 録音:山方浩
- 編集:矢船陽介
- 記録:新玉和子
- 音響効果:渡部健一
- ヘアメイク:豊川京子
- 特殊メイク:原口智生
- スチール:Taka Koike
- キャスティング:前島良行
- リーガルアドバイザー:内藤厚
- アシスタント・プロデューサー:塩崎祥平
- 助監督:南柱根
- ラインプロデューサー:杉浦敬
- 音楽:VORTEX(永井晶子/武石聡)
- 主題歌:ケイコ・リー「夢幻蒼」
- イメージアルバム:浅倉大介
- アソシエイト・プロデューサー:チンリン・リー/アンソニー・アイアクィント/ポール・ターナー/ロドリーグ・ベルモンテ
- コー・プロデューサー:山田俊輔/輪由美子
- エグゼクティブ・プロデューサー:ブライアン・ホルス
- プロデューサー:マーティン・ライクラフト/古川実咲子/戸山剛
- 制作:100meterfilms
- 製作賛助:角川出版映像事業振興基金信託
- 協力:国際交流基金
- 支援:文化
- 配給:ファントム・フィルム/有限会社百米映画社
- 宣伝:アンカー・プロモーション