転々
監督:三木聡
出演:オダギリジョー 小泉今日子 吉高由里子 三浦友和 ほか
2007年11月10日(土)、渋谷シネアミューズCQN、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー
2007年/カラー/35mm/ヴィスタサイズ/DTSステレオ/101分

深夜枠のテレビドラマというカテゴリーを越えて、社会現象を巻き起こした「時効警察」シリーズ。その監督・三木聡と主演・オダギリジョーのコンビによる長編映画『転々』が早くも完成! 直木賞作家・藤田宜永の同名小説を原作に、三木聡が脚本を手掛けた本作の主人公は、借金を抱えた大学8年生の文哉。返済するあてがない文哉に、借金取りの福原はある提案をする。その提案とは、100万円の謝礼と引き換えに福原の東京散歩につきあうこと。出発地は吉祥寺、目的地は霞ヶ関。散歩の期限は、福原の気が済むまで。つまりは、未定。
主人公の文哉を演じるのは、もはや“若手を代表する”という枕詞は不要のポジションを築いているオダギリジョー。テキトーでだらしなく、振り回され型の主人公を飄々と演じている。文哉を散歩に連れ出す福原を演じるのは、クセ者監督の作品に意欲的な挑戦し続ける名優・三浦友和。強面の中に茶目っ気や愛情深さを感じさせる人物を演じ、またしても新境地を開拓している。また、小泉今日子、岸部一徳ら豪華キャストが脇を固めるほか、『紀子の食卓』で注目を浴びた大型新人・吉高由里子の摩訶不思議なキュートさも爆発。もちろん、三木作品の常連である岩松了、ふせえり、松重豊、笹野高史ら個性派キャストが三木ワールドを盛り上げる。さらに「時効警察」ファンには嬉しい“あの人”が顔を見せるのも見逃せない。
三木監督のこれまでの作品を大別するならば、よりポップな『イン・ザ・プール』『亀は意外と速く泳ぐ』と、かなりのブラックなネタが強烈な『ダメジン』『図鑑に載ってない虫』に二分できる。双方に共通するのは、満載の小ネタ&脱力系の世界観。もちろん本作でもその魅力は炸裂しているが、速いテンポで小ネタを見せまくるこれまでの作品に比べると、『転々』のテンポはあくまで散歩のブラブラ感。秋が深まりゆく東京の風景の中をふたりの男がとぼとぼ歩いてゆく姿を切り取った映像を追っていると、くすくす笑ったかと思えば、切なくジーンとしてしまう。『転々』は、三木聡がこれまで作品世界とは異なった新境地を開拓した、心ほどける“東京散歩”ムービーなのだ。

竹村文哉(オダギリジョー)は大学8年生。幼いころに両親に捨てられ、育ての父親は逮捕されてしまった、ひとりぼっちの男。そして、いつの間にかこしらえた借金が84万円也。返済の期限まであと3日!
返済期限の前日、文哉は借金取りの福原(三浦友和)から借金をチャラにする方法を提案される。その提案とは、吉祥寺から霞ヶ関まで歩く福原の“東京散歩”に付き合うこと。イヤーな感じを受けつつも、ほかに選択肢のない文哉は福原の提案に乗ることにした。
井の頭公園の橋の上から男ふたりの散歩は始まった。そして調布飛行場で、福原は文哉に散歩の理由を話すのだった…。
散歩が4日目を迎えたころ、ふたりは福原の知り合いである麻紀子(小泉今日子)の家を訪れる。そこで麻紀子の姪・ふふみ(吉高由里子)とともに擬似家族のような数日を過ごし、文哉の心に、今まで感じたことのないなにかがざわついた――。