主婦の順子(大鳥れい)は、ひとり息子を失ったショックから、いまだに息子の死を受け入れられず、奇妙な行動に走ることがあった。毎日、会社でも家に戻ってからも仕事に追いまくられている夫の喜一(潮見諭)は、そんな順子の相手をすることに疲れはじめていた。
ある日、メロンパンの移動販売員でちょっと頭の弱い世之介(桂都んぼ)は、仕事の合間に出かけたパチンコ屋の駐車場で、順子を車ではねそうになってしまう。大きな怪我はなかった順子だが、その夜、事故のことを大袈裟に膨らまして夫に伝えていた。それに苛立ちを感じはじめる喜一。
そしてしばらくして、喜一は突然、職場の若いOL・弘美(井川あゆこ)とふたりで不倫旅行に出てしまう。一方、順子と世之介は再会。ひたすら謝る世之介を責める順子は、半ば強引に、世之介とともにメロンパン販売用のバン・メロン号に乗って、あてのない旅に出るのだった……。
ばけもの模様
監督:石井裕也
出演:大鳥れい 桂都んぼ 潮見諭 稲川実代子 井川あゆこ ほか
2008年6月7日(土)〜6月20日(金)、池袋シネマ・ロサにてレイトショー
2007年/HD/93分
大阪芸術大学の卒業制作作品『剥き出しにっぽん』が、第24回そつせい祭グランプリ、第29回ぴあシネマフェスティバルグランプリと音楽賞ほか、多数の映画賞を受賞した石井裕也。同作品は海外の映画祭にもノミネートされ、ロッテルダム映画祭では長編作品4本が特集上映されるなど、稀代の新人映画監督として世界から注目を集めている。
世界各国で絶賛を浴びた石井監督の最新作『ばけもの模様』が、いよいよ日本で劇場公開される。
「人はばけもの。世にないものはなし」という井原西鶴の言葉から発想されたこの作品に登場するのは、文字通り化け物じみた人間たちだ。裏切り、不倫、駆け落ち、殺人未遂……“化け物”たちはありとあらゆる愚かな行動を繰り返し続ける。だが、物語のラストに見えてくるのは、化けの皮を剥がされた彼らの、人間の哀しい本性である。その姿は、観る者の中に共感を呼び覚ますに違いない。
主演は、元・宝塚歌劇団花組トップスターの大鳥れい。ひとり息子の死をきっかけに奇行に走る主婦を演じて新境地を開いた。そして石井監督の長編作すべてに出演している異色の落語家・桂都んぼ、モデルとしても活躍する潮見諭、ベテランの稲川実代子、グラビアアイドルの井川あゆこら、個性的な曲者キャストが揃った。
『ばけもの模様』が追求するのは、人間の駄目さ、愚かさ、醜さだ。そして、それによってしか見えてこない、その先にある人間の魅力をこの作品は描いている。
- 大鳥れい
- 桂都んぼ
- 潮見諭
- 稲川実代子
- 牧野エミ
- じんぐうまさひろ
- 邦城龍明
- 井川あゆこ
- 監督・脚本・編集:石井裕也
- 製作:石井裕也/松井宏樹/沖原正純
- 共同脚本:登米裕一
- 撮影:松井宏樹
- 照明:小林万平
- 美術:沖原正純/内堀義之
- 助監督:中村祐介
- 音楽:今村悠輔
- 配給:チャペス・シネマ/株式会社ロサ映画社
- 協力:ぴあフィルムフェスティバル事務局