
国内外で多くの映画賞を受賞し、世界から注目を浴びている新人映画監督・石井裕也。彼が21歳のときに監督した大阪芸術大学卒業制作作品であり、注目を集めるきっかけとなった『剥き出しにっぽん』が、最新作『ばけもの模様』の公開にあわせて劇場公開される。
ビデオによる映画制作が増えている中、あえて予算のかかる16ミリフィルムでの制作を選択。スタッフをつとめた仲間とともに働いて捻出した400万円で『剥き出しにっぽん』は製作された。
そうして完成した作品は、日本の映像系学校機関の卒業制作作品コンペティションである第24回そつせい祭でグランプリを獲得、さらに第29回ぴあフィルムフェスティバルで審査員満場一致のグランプリと音楽賞を受賞。さらに第26回バンクーバー国際映画祭正式出品、第37回ロッテルダム国際映画祭、第32回香港国際映画祭と、立て続けに海外での上映を果たした。
主演は石井監督最新作『ばけもの模様』で共同脚本もつとめる脚本家であり、演劇ユニット「キリンバズウカ」のプロデュースもつとめる登米裕一。洋子役には、関西を中心に活動する二宮瑠美。
タイトルのとおり「剥き出し」の人間を描いたこの作品は、パワフルで繊細な、人間くさい群像喜劇に仕上がっている。

情緒不安定でマッチョ主義者で女々しくてお爺ちゃん子の青年・小松太郎(登米裕一)は、高校卒業後、なにを思ったか突然自給自足の生活を始めることを決意。不動産屋に通い、畑の中の一軒家を借りて引越しの準備を進める。高校の同級生で偶然に再会した洋子(二宮瑠美)を誘って一緒に行こうとするが、なぜかリストラされた太郎の父親もついてくることに。
ところが、借りた家は写真とはまるで違って廃屋同然。やむなくボロボロの家と不毛な畑の中で、3人の奇妙な共同生活が始まる。
そんな矢先、お爺ちゃんが死んだと連絡が入り、3人は家に戻ることに。そして葬式のあと、太郎は姿を消してしまう……。