1945年6月の神戸。空襲により、14歳の清太(吉武怜朗)と4歳の節子(畠山彩奈)は家を失う。負傷者が運ばれた国民学校に、兄妹の母親もいた。重傷の母を病院に連れていこうと、清太はリヤカーを調達してくるが、その努力もむなしく母親は息を引き取る。なにも知らない節子は、リヤカーに乗り楽しそうにはしゃぐのだった。
戦争中ではあったが、兄妹はそれまで幸せな日々を送っていた。美しい優しい母親(松田聖子)と、海軍大尉の父(高橋克明)。清太は父のような立派な軍人を目指して剣道の練習に励み、ときに母に甘える。幼い節子は、母からドロップを貰い、兄の“どじょうすくい”を見て笑い声を上げる……。そんな兄妹たちの暮らしを、空襲はがらりと変えてしまった。
清太は、母親が死んだことを妹には隠し、西宮に住む遠縁の家を訪ねる。半年前に夫を失ったおば(松坂慶子)は、最初はふたりを追い返そうとするが、荷物の中に大量の食料があることを知り、ふたりを家に住まわせることにする。
近所には、さまざまな人がいた。ひとくせもふたくせもありそうな町会長(原田芳雄)。若い未亡人(池脇千鶴)と同棲し、周囲から白い目で見られている厭世的な学生の高山(山中聡)。中学校の校長先生(江藤潤)は、清太をなにかと気にかけてくれ、清太は、同じ年頃の校長先生の娘(谷内里早)に胸をときめかせる。
しかし、おばは日に日に兄弟につらくあたるようになる。さらにある事件から、校長先生の一家は帰らぬ人となってしまう。
やがて兄妹はおばの家を出て、池のほとりの防空壕でふたりだけの生活を始めるのだが……。
火垂るの墓
監督:日向寺太郎
出演:吉武怜朗 畠山彩奈 松坂慶子 松田聖子 ほか
2008年7月5日(土)より岩波ホールほか全国ロードショー
2008年/カラー/35mm/ビスタサイズ/100分
戦争で両親も家も奪われた14歳の兄と4歳の妹。預けられた先での仕打ちに耐え切れず飛び出したふたりは、自分たちの力だけで生きていこうとする……。
40年以上にわたり読みつがれている野坂昭如の直木賞受賞作「火垂るの墓」。1988年にはアニメ映画化され大ヒットを記録した戦争文学の傑作が、ついに実写映画化された。
当初、『美しい夏キリシマ』『父と暮らせば』など、戦争を題材にした作品も多い名匠・黒木和雄監督により進められていた企画だったが、2006年に黒木監督が急逝。黒木監督が「年少の友人」と呼んだ日向寺太郎監督がその遺志を引き継いだ。
主人公の兄妹には、すでに高い評価を得ているふたりが選ばれた。兄・清太役には、NHKドラマ「すずらん」、舞台「ライオンキング」など豊富な経験を持つ吉武怜朗(よしたけ・れお)。妹・節子にはテレビ「Dr.コトー診療所2006」などの畠山彩奈(はたけやま・まりな)。抜群の存在感で、凛とした兄と愛くるしい妹を見事にスクリーンへと息づかせた。
兄妹をいじめる未亡人には、松坂慶子が普段のイメージとは異なる役を好演。兄妹の母には、松田聖子が7年ぶりの日本映画出演を果たした。さらに。黒木監督作品に欠かせない存在だった長門裕之と原田芳雄、黒木監督『祭りの準備』に主演した江藤潤、日本を代表する若手女優となった池脇千鶴、実力派の山中聡、本作が映画デビューとなる谷内里早、文学座の高橋克明といった豪華キャストが揃った。
『陽はまた昇る』などの西岡琢也が、原作に新たなアイディアを加えて脚本を執筆。美術監修に木村威夫、撮影に川上皓市、録音に久保田幸雄ら、黒木組の常連の一流スタッフが集結し、若い監督を支える。音楽は、世界的に活躍するギタリスト・渡辺香津美がピアニスト・谷川公子と組んだユニット“Castle in the air”が担当し、アコースティックの優しい音色で物語を飾る。
- 清太:吉岡怜朗
- 節子:畠山彩奈(子役)
- 未亡人(清太の親戚):松坂慶子
- 雪子(清太の母):松田聖子
- 本城雅夫:江藤潤
- 清太の父:高橋克明
- 高山道彦:山中聡
- 若い未亡人:池脇千鶴
- 本城君枝:千野弘美
- 本城昭子:谷内里早
- 本城和子:鈴木米香
- 未亡人の息子:萩原一樹
- 未亡人の娘:矢部裕貴子
- 町会長(西宮):原田芳雄
- 町会長(神戸):長門裕之
- 監督:日向寺太郎
- 原作:野坂昭如(新潮文庫刊「アメリカひじき・火垂るの墓」より)
- 脚本:西岡琢也
- 製作:石川博/川城和実/桐畑敏春/久松猛朗/横倉信夫/鈴木ワタル
- 企画:大橋孝史
- プロデューサー:伊藤成人/河野聡/南條昭夫/磯田修一
- プロデューサー補:上山公一/中島英俊
- 撮影:川上皓市
- 照明:水野研一
- 録音:久保田幸雄
- 美術監修:木村威夫
- 美術:中川理仁
- 編集:川上章正
- スクリプター:内田絢子
- ヘアメイク:小堺なな
- 助監督:酒井長生
- ラインプロデューサー:桜井陽一
- 制作担当:出口悦寛
- 音楽:Castle in the air
- 製作:『火垂るの墓』パートナーズ(テレビ東京/バンダイビジュアル/ポニーキャニオン/衛星劇場/佐久間製菓/トルネード・フィルム/ジョリー・ロジャー/パル企画)
- 宣伝:ジョリー・ロジャー
- 配給:パル企画