激しく絡み合う女と男。やがて女は、男の首に紐をかけ、強く締め上げていく――。
写真家のイシダ(中山一也)は、ヌードモデルの撮影中に幻影に襲われる。「俺は誰だ……」。混乱する意識の中、うめくイシダ。
海岸で撮影をおこなっていたイシダは、商業高校の元校長を名乗る紳士・オオミヤ(内田裕也)に声をかけられる。イシダにはこれまでオオミヤと会った記憶はなかったが、オオミヤはずっとイシダとの出会いを待っていた、と告げる。
オオミヤの屋敷へと招かれたイシダは、そこでオオミヤの妻・サダ(杉本彩)を紹介される。燃えるような緋色の長襦袢に、漆黒の洗い髪。狂おしくも妖しいサダの美しさに、イシダは心奪われる。
オオミヤはイシダに、サダのヌードを撮影するように頼む。その依頼を受けて撮影を始めたイシダだったが、サダの魅力に惹かれ、撮影を忘れて彼女の肉体を求めはじめる。貪りあうように激しく絡み合うサダとイシダ。そしてふたりの愛の情念はやがて時空を超え、二・二六事件に騒然とする昭和初期の東京へと旅立つ――。
JOHNEN 定の愛
監督:望月六郎
出演:杉本彩 中山一也 内田裕也 ほか
2008年5月31日(土)より銀座シネパトス、新宿トーアほかにてロードショー
上映時間106分/R-18作品
昭和11年。中居の阿部定は、愛する男を殺害、その局部を切り取って逃走した。世に言う“阿部定事件”である。当時の世間を震撼させたこの事件は、後世の人々の興味をも惹きつけ、『愛のコリーダ』など、事件を題材とした映画がこれまで幾度も製作されてきた。そして今、杉本彩がこれまでになく激しく狂おしい“阿部定”をスクリーンに登場させる。
10代のころから阿部定に興味を持ち、かつて音楽活動をしていた時期には阿部定を題材に歌詞を書いたこともあるという杉本。話題を呼んだ『花と蛇』連作以上の激しいエロスを表現してみせる。
メガホンをとるのは『鬼火』『恋極道』『皆月』の望月六郎。本作では、杉本の表現するエロスを軸に、1960年代から70年代初期に見られたようなアヴァンギャルド映画を想起させるような、先鋭的な世界を作り上げる。それは、かつて望月監督が多大な影響を受けた、寺山修司の精神を受け継ぐ、新時代のアートシアターと呼ぶべきものだ。
阿部定の相手役となる石田吉蔵を演じるのは、ヴェネチア映画祭で注目を集めた『IZO』の中山一也。常に鬼気迫る演技を見せる無頼派俳優の中山が、杉本彩の放つエネルギーを真正面から受け止め、まさに全身全霊を込めた熱演を披露する。そして、ロック界の大御所であり、『コミック雑誌なんかいらない』などで映画界にも大きな足跡を刻む内田裕也も共演。さらに、高瀬春奈、江守徹、阿藤快など、個性派俳優が多数出演している。
自ら「阿部定の代弁者」たろうとして本作に臨んだ杉本彩。彼女をとおしてスクリーンに刻み付けられるのは、危険なほどに激しく、美しい、女の“情念”だ。
- サダ・阿部定:杉本彩
- イシダ・石田吉蔵:中山一也
- 哲学博士:阿藤快
- 医師:斉藤暁
- 検事:村松利史
- 吉田刑事:菅田俊
- オトク・吉蔵の女房:高瀬春奈
- 栗原中尉:山下徹大
- 憲兵:本宮泰風(友情出演)
- 笠原:風間トオル(友情出演)
- 裁判長:江守徹
- オオミヤ・大宮五郎元校長:内田裕也
- 監督:望月六郎
- 原作・脚本:武知鎮典
- 企画統括:石井徹
- 企画開発:武知鎮典
- プロデューサー:瀬戸恒雄/前田茂司
- 企画協力:西野禎秀
- キャスティングプロデューサー:伊東雅子
- 音楽プロデューサー:山崎綾
- 撮影:石井浩一
- 照明:櫻井雅章
- 録音:久連石由文
- 美術:高橋俊秋
- 編集:矢船陽介
- 音響効果:丹雄二
- 助監督:池本晋
- 制作担当:善田真也
- ポストプロダクションプロデューサー:金子尚樹
- 杉本彩特写フォト:菅野秀夫
- 製作協力:楽映舎
- 製作:東映ビデオ