北海道、勇払(ゆうふつ)駅。人気のない閑散としたホームに、グレーのスーツに汚れたスニーカー、スポーツバッグを提げた男(石橋凌)が降り立った。
街外れの公園で突然倒れこむように眠ってしまった男をスナックで働く女(桜井明美)が見つけた。女は、自分が働くスナック“あすなろ”に男を連れていき、介抱する。
癖のあるマスター(村上淳)が切り盛りしているスナック“あすなろ”の従業員は、女ひとりだけ。いつも同じ歌をカラオケで歌う常連客(香川照之)がいるが、その常連客のほかに客が来ることは少ない。
店が閉まったあと、女は自分の部屋へと連れて行く。一方、常連客の男は、呼び出したホテトル嬢(橘実里)相手に、胸の内を吐露する。そのホテトル嬢は、マスターの恋人だ。
女の部屋で一夜をともにした男と女。女は、男が起きる前にひとり隠れて電話をかける。だが、電話の向こうの「許すから帰ってこい」という声に、女が応えることはない。そして男は、失くしたバッグを探しにでかけるが、見つけられないまま女の家に戻ってくる。
男と女の共同生活は続いていく。女は男のための服や生活用品を用意し、男にずっと家にいるようにと告げる。その提案に頷くだけの男。しかし、女が仕事に出ている間、男は街に出ると、街のガソリンスタンドを一軒一軒訪ねて歩くのだった。
白夜の季節の訪れた街で、男と女、そしてその周囲の人々は、それぞれに“しあわせ”を見つけようとする――。
幸福 Shiawase
監督:小林政広
出演:石橋凌 桜井明美 村上淳 橘実里 柄本明 香川照之 ほか
2008年9月20日(土)より、シネマート六本木にてロードショー
2006年/カラー/35mm/ビスタ/モノラル/106分
イラク邦人人質事件をモチーフとした『バッシング』でカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、自ら主演をつとめた『愛の予感』で第60回ロカルノ国際映画祭で4冠を獲得するなど、世界から高い評価を得ている映画監督・小林政広。その最新劇場公開作となる『幸福 Shiawase』は、北海道のどこか幻想的な風景の中で、一筋縄ではいかない大人たちの“しあわせ”をあたたかく静かに見つめていく。
北海道のうら寂れた街にやって来た中年男と、彼を助けた中年女。一夜をともにしたふたりは、奇妙な共同生活をはじめる。家族のない男と女の、幸福さがしのドラマがはじまる――。
主人公の男には『キッズ・リターン』『BROTHER』などの、日本映画界に欠かせない名優・石橋凌が、小林政広作品には『殺し KOROSHI』以来2度目となる出演。男と共同生活を始めるスナックで働く女には、主に舞台などで活躍する桜井明美が、映画初出演ながら圧倒的な存在感を見せる。そのほか、スナックのマスターに『この世の外へ クラブ進駐軍』『病葉流れて』などの個性派の村上淳。その恋人のホテトル嬢に『集団殺人クラブ』の橘実里。街の警察官に『やじきた道中 てれすこ』『ラストゲーム 最後の早慶戦』などのベテラン・柄本明。そして小林監督作品『フリック』で主演をつとめた香川照之がふたたび小林作品に登場、日常から逸脱していくスナックの常連客で鬼気迫る演技を見せる。
また、マンハッタン・ジャズ・オーケストラを率いる天才アレンジャーであるデビッド・マシューズの音楽が効果的に使用され、主題歌は日本が代表するR&Bシンガー・上田正樹が担当している。
「しあわせ、それは拾うもの。」という言葉から始まる『幸福 Shiawase』。この作品は、不器用な大人たちの、どうしようもなくロマンティックなラブストーリーなのだ。
- 石橋凌
- 桜井明美
- 村上淳
- 橘実里
- 柄本明
- 香川照之
- 本多菊次朗
- 中村かんこ
- 佐々木雅栄
- 坂下優樹
- 佐々木久光
- 監督・脚本:小林政広
- プロデューサー:佐々木満城/小林政広
- 撮影監督:鏡早智
- 編集:金子尚樹
- 制作主任:川瀬準也
- 助監督:高橋孝之介
- 録音:秋元大輔
- 照明:増谷文良
- 衣裳コーディネーター&アドバイザー:宮田弘子
- サウンドデザイン:横山達夫
- 制作進行:橋場綾子/長井優
- 宣伝美術協力:成田美苗
- ラインプロデューサー:波多野ゆかり
- アシスタントプロデューサー:岡村直子
- 音楽:デビッド・マシューズ
- 主題歌:上田正樹「Blues For Happiness」
- 音楽プロデューサー:川島重行
- 製作:エルテ建物管理(株)
- 配給:SPO