父の描いたスケッチに導かれて、若き日の父と、その恋人と出会った青年。ふたりとの出会いは、これまで知らなかった父の姿を教えてくれる――。
『イエスタデイズ』は、時間を越え、若き日の父親と出会うというファンタジックな設定で描く、心あたたまる感動作だ。
原作は人気作家・本多孝好の同名短編。ミステリー作家として人気の著者が初めて恋愛をテーマとしたベストセラー短編集「FINE DAYS」から、著者初の映画化作品が生まれた。
主人公の青年・聡史を演じるのは、ドラマ「木更津キャッツアイ」シリーズや映画『陰日向に咲く』など、映画、テレビで活躍する塚本高史。若く純粋であるがゆえに父親に反発してしまう青年のまっすぐさを、全身で表現している。その父親・昭彦役で『パコと魔法の絵本』「あんどーなつ」などの実力派・國村隼が、渋く、奥深さを感じさせる演技を見せる。
聡史が出会う若き日の昭彦と、その恋人・真山澪には、「東京湾景」『ホテル・ハイビスカス』などの和田聰宏と、「ハチミツとクローバー」などの原田夏希。若手実力派のふたりが、運命に揺られる若いふたりを好演している。そのほか、お笑いで人気のカンニング竹山、『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』の蟹江一平、２００８年度東レ水着キャンペーンガールの新星・中別府葵ら多彩なキャストが脇を固め、風吹ジュン、高橋恵子のベテラン陣がその存在感で作品に深みを与えている。また、ヒロシや酒井法子といった人気タレントが顔を見せているのも注目だ。
監督は、ミュージックビデオやＣＭなどで高い評価を受け、２００６年公開の中編『ハミングライフ』で劇場作品監督デビューを果たした窪田崇。初の長編劇場作品となる本作では、繊細な演出で登場人物の心情を優しくスクリーンに描き出す。
主題歌を歌うのはシンガーソングライター・榎本くるみ。初めて映画のために書き下ろした「イエスタデイズ〜大切な贈りもの〜」が、映画の余韻をさらに深くする。
柳田聡史（塚本高史）は、ある日、疎遠となっている父親の昭彦（國村隼）に呼び出され、父の入院する病院へとやって来た。余命わずかな父は、若いころに描いた１冊のスケッチブックを手渡すと、そこに描かれた肖像画の女性を探してほしいと聡史に頼む。その女性は父の32年前の恋人・真山澪だった。父親の態度に反発を覚えながらも、聡史はその依頼を承諾する。
少ない手がかりを頼りに、32年前に澪が暮らしていたアパートを訪れた聡史は、無人と思っていた部屋で若い男女と出会う。画家志望の陽気な青年と、恋人である美しい音大生。ふたりの名は“柳田昭彦（和田聰宏）”と“真山澪（原田夏希）”。そう、彼らは32年前の父親と澪だったのだ。驚きを隠しつつ、聡史は“ヤマザキ”と名乗り、ふたりと会話を交わす。ふたりの部屋をあとにした聡史は悩む。これは、幻覚なのか？
しかし、その後も父のスケッチに導かれるようにして、聡史は32年前の世界へと迷い込み、昭彦と澪に出会う。そして聡史は、ふたりと親しさを増していき、彼らと過ごす時間の中で、ふたりに訪れる運命や、冷徹な仕事人間だと思っていた父親のいままで知らなかった一面を知ることになるのだった。
ところが、32年前のある日の昭彦の言動に聡史は激しく憤り、昭彦を殴りつける。その憤りは現在の父親も向けられ、聡史は真山澪探しを打ち切ろうとする。その気持ちを変化させたのは、母親の節子（風吹ジュン）が語る、若き日の父の姿だった。
そして、手がかりを求めて訪れた音大で知り合った槙村茜音（中別府葵）を通じて、ついに現在の真山澪を知る人物と連絡がとれることになった――。
