看護学生の門倉明日美(大塚ちひろ)は、ある日、遠くを見るようにジャンプを繰り返している青年(伊藤祐貴)を見かける。高校時代に恋していた同級生の面影を青年に重ねた明日美は、突然の雨に濡れる青年・淳一を自分の黄色いステップワゴンの助手席へと招き、海へのドライブへと誘う。それは、明日美が想いを寄せる相手に伝えられなかった言葉だった。
海へと車を走らせるうちに、明日美は淳一の言動が普通の人とは違っていることに気づきはじめていた。そして、海へとたどり着いたふたりは、途中で知り合った吉田慎之助(秋野太作)とハル子(大森暁美)の夫妻と一緒に、車で城ヶ島を目指す。明日美と淳一を姉弟だと思い込んでいる吉田夫妻と会話を交わす中で、明日美は淳一の障害について知るとともに、看護師への道に挫折しかけている自分の胸のうちを明かしていく。
一方、淳一の母・瑞江(石井めぐみ)は、淳一が散歩に出たままどこかに行ってしまったことに気づき、不安を募らせる。
吉田夫妻と別れた明日美と淳一はドライブを続け、観光船に乗り込むが、あるきっかけから船上で淳一がパニックを起こしてしまう。周囲が騒然とする中、どうしたらいいかわからず呆然とする明日美。それを助けてくれたのは、同じ船に乗り合わせていた吉田夫妻だった。そのとき明日美は初めて、淳一が“自閉症”であることを知るのだった。
吉田夫妻と淳一を結ぶ不思議な縁。夫妻と、淳一と一緒に旅を続ける明日美は、これまで自分が知らなかったさまざまなことに触れることになる――。
ぼくはうみがみたくなりました
監督:福田是久
出演:大塚ちひろ 伊藤祐貴 大森暁美 秋野太作 ほか
2009年8月22日(土)より東京都写真美術館ホールにてロードショー
2009年/カラー/35mm/ビスタサイズ/DTSステレオ/103分
発達障害のひとつである自閉症。その呼び名がひとり歩きする一方で、実際の症状や周囲の接し方は、一般にはほとんど知られていないのが現状だ。『ぼくはうみがみたくなりました』は、看護学生とひとりの青年の偶然の出会いをとおして、“自閉症”という障害に焦点をあてた作品である。
原作となったのは、自閉症児の大輝(ひろき)くんの父である脚本家・山下久仁明が、自閉症への理解を広めるために執筆した同名小説。映画化の企画が立ち上がった直後に大輝くんは事故でこの世を去ったが、企画に賛同した1000人以上の人々の想いが結実し、3年のときを経て映画が完成した。
主人公の明日美には、映画『いま、会いにゆきます』での演技が注目を集めた大塚ちひろ。舞台では主演作もある大塚だが、意外にも映画は本作が初主演。偶然の出会いから新たな世界に触れる明日美を、明るく、そして繊細に演じる。
もうひとりの主人公・淳一には新人の伊藤祐貴。自主的に福祉施設を訪れ、自閉症について学んだ上でオーディションに臨み、500人以上の中から満場一致で選ばれた。真摯な演技への取り組みで、自閉症の青年という難役を見事にこなしている。
そのほか、淳一の母に石井めぐみ、明日美と淳一と出会う夫婦に秋野太作と大森暁美と、実力派が脇を固める。
監督は福田是久。俳優の演技を大切にした演出と、ミュージックビデオも多く手がける福田ならではの映像の魅力にも注目だ。
障害というテーマを、ときにユーモラスを交え、厳しさを優しさをもって描いた『ぼくはうみがみたくなりました』は、観客の心にあたたかさを届けるヒューマンドラマとなっている。
- 門倉明日美:大塚ちひろ
- 浅野淳一:伊藤祐貴
- 浅野瑞江:石井めぐみ
- 浅野健二:小林裕吉
- 香織:松嶋初音
- 釣り人:ピエール瀧(友情出演)
- 吉田ハル子:大森暁美
- 吉田慎之助:秋野太作
- 監督・編集:福田是久
- 企画・原作・脚本:山下久仁明
- プロデューサー:松本朋丈
- アソシエイトプロデューサー:岡田俊生
- ラインプロデューサー:中村英児
- 監督補:佐々木利男
- 撮影:青木正
- 照明:野口マスト
- VE:田代浩由紀
- 録音:古川裕志
- 装飾:柳沢ひろ子
- 衣裳:新崎みのり
- ヘアメイク:清水美穂/唐沢知子
- 整音:大野誠
- 音響効果:小島彩
- 選曲:杉山篤
- キャスティングプロデューサー:古川千恵子
- 脚本医療監修:内山登紀夫(福島大学大学院教授・よこはま発達クリニック院長)
- 助監督:國松秀雄
- 制作担当:佐伯寛之
- 音楽:椎名邦仁
- 主題歌:高橋直純「まひるのほし」
- 製作プロダクション:Cocoon
- 協力プロダクション:アリエス/ミラクルボックス
- 宣伝:ブラウニー
- 製作・配給:「ぼくはうみがみたくなりました」製作実行委員会